Project/Area Number |
21K04516
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 24020:Marine engineering-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三村 治夫 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90190727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広野 康平 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80346288)
堀田 弘樹 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (80397603)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 付着期幼生 / 近赤外光 (940 nm) / 複眼による視覚 / 波長に依存する誘引・忌避行動 / フジツボ / 近赤外光 (940 nm) 照射 / 忌避行動 / 着生阻害 / 船底・プロペラ防汚 / 近赤外光 / 940 nm / 船底防汚 / 光誘導 / 着生制御 |
Outline of Research at the Start |
フジツボ群体は船の粘性抵抗値を40%も増加させる。生物毒性の強い物質が船底防汚に多量に使われた時期があったが、生態系保全のため国際条約で使用が禁止された。生物毒性のない防汚手法の開発によって、生態系や地球環境が保全できる。 筆者らは、青色LED光の強い放射光(500 W m-2)の有効性をフィールド実験により証明してきた。一方、青色光は光合成に利用され生態系への影響が懸念される。近赤外光が利用できると、画期的で有効な防汚手法となる。 青色光と近赤外光に対する付着期幼生の行動生理学の知見を集積し、付着してほしくない場所に付着しようとしている付着期幼生を光源方向へ誘導し防汚する革新的方法を進展させる。
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Outline of Annual Research Achievements |
フジツボは付着期幼生が変態した形態である。付着期幼生は着生場所を探すような動きをする。着生時にセメント物質を分泌し、変態後は生涯を同じ場所で過ごす。フジツボのライフサイクルにおいて、着生する場所を決める付着期幼生期が、変態後の個体の生存および生殖に重要な時期と言える。 フジツボ等、付着生物の成長による船底の生物防汚によって、航行時の摩擦抵抗が増加し、船速が低下する。生物汚損度合 (例えば、フジツボの個体数、個体の殻の高さ、群生している場所等)に依存するが、機関出力を増やすことで船速を回復できる。一方、運航の経済性を悪化させず、大気への二酸化炭素負荷量を抑制することが海運業界に求められている。船底の生物汚損を管理することが、持続可能な海運において不可欠である。 付着期幼生の複眼は光を視覚でき、白色光へ向かって走行する現象は広く知られている。「付着期幼生の走光性に波長依存性があるか」の問いに対し、2021年度~2022年度(採択課題2年目)に、暗室で、大気中に固定した光源(最大波長940 nm(近赤外光); 光源直下のエネルギー4,040.0+-167.0 W m-2)を、容器内に存在する海水体の水面下2 cm位置に浸漬した平板(10 cm四方)に鉛直下向きに照射した。平板中央に到達する近赤外光のエネルギーを、透過率(減衰率)から推定し、58.3 W m-2とした。照射面に着生した個体数を、同じ容器内に浸漬した光源を照射しない平板に着生した個体数と比較した結果、光源照射下では、平板に着生した個体数は2~3個体(n=3)、光源を照射しない平板では20~33個体(n=3)であった。付着期幼生が近赤外光照射面を着生場所として選択した頻度は8.5+-3.9%(n=3)に留まった。 暗室内の実験から、付着期幼生は、近赤外光(940 nm)に対し、忌避行動をとることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
付着期幼生が近赤外光を忌避する効果を実海域で検証する実験を実施したが、顕著な忌避効果が確認できなかった。計数用平板と、光源を固定したもう1枚の平板を互いの平面が平行になるように固定し、平板の表面と海面とを垂直にして浸漬した実験(近赤外光は岸壁側から海側へ照射)を2回、平板の表面と海面を平行にして浸漬した実験(近赤外光を海底方向へ照射)を1回行った。計数用平板の中央位置と相対する位置に、最大波長940 nmのLED4個(放射角: +-45度)から構成される基盤を固定し、LED4個を発光させた(直流10.2V,1A)。LED先端と計数用平板の間を4 cmとした。計数用平板の平面1,587.4 m2(ワッシャ4個12.6 cm2を除く)を計数対象とした。 計数用平板を海面に対し垂直に浸漬した結果、着生した個体数は光源存在下2,717個体、非存在下3,049個体(2023年6月27日~7月7日)、光源存在下16,781個体、非存在下14,353個体(同年7月8日~7月14日)であった。海面に対し水平に浸漬した結果、光源存在下15,888個体、非存在下19,067個体(2023年7月17日~7月20日)。計数用平板の中央に到達する近赤外光の放射強度は、空気中では278.6 W m-2(浸漬1回目)、286.1 W m-2(浸漬2回目)、255.0 W m-2(浸漬3回目)であった。光源直下では検出上限値(約4,000 W m-2)以上であった。海水中での光源から4 cm離れた位置の近赤外光の透過率を、透過率が距離に対し指数関数的に減少すると仮定し、950 nmの光が水中を22 mm進んだ時の透過率76.7%を参考に56.0%と見積もると、平板中央に到達する放射強度は概ね153 W m-2であろう。 近赤外放射光が白昼であっても付着期幼生に対し、忌避効果を発揮できる浸漬の工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
最大波長940 nmのLED4個を固定した基盤(ILH-IO04-94SL-SC211-WIR200(放射角: +-45度、Intelligent LED Solutions社製)を4つ、40 cm四方の同一平板の中央に近づけて左右対称位置に固定し、4基盤のLEDs計16個を発光(直流10.2V, 4A)させる。 計数用平板と光源を固定した平板を海面に水平となるように浸漬し、海面に近い方に計数用平板を固定し、着生面を海底に向けて浸漬する。こうすることで、海面に垂直になるように平板2枚を浸漬するより、計数用平板の表面へ入射する太陽光を大幅に減らすことができる。 2023年度実施時に使用した基盤(LED4個が基盤に固定されている)(直流10.2V, 1A)による付着期幼生の着生阻害実験結果が、近赤外光の付着期幼生に対する忌避効果を明確に定量できなかったことを踏まえ、2024年度は、基盤4個を使用し、近赤外光の照射によって、付着期幼生の計数用平板への着生が阻害されることを定量的に示す。
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