Project/Area Number |
21K04863
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 太一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00401282)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 流動特性評価 / マイクロゲル生成 / 血液粘度 / レオロジー測定 / 血液流動特性 |
Outline of Research at the Start |
独自開発手法である電磁スピニング法は、従来のレオメータに比べて同等かそれ以上の測定精度を有しており、その上で試料容器や回転子を完全密閉し使い捨て利用もできる革新的な計測手法である。今後は血液の流動特性データを基に血流の精密数値計算や健康管理チェックなどに役立てたいと考えているが、検証実験の段階で採血した血液を使用するとなると配慮すべき課題は多い。本研究では微小液滴生成・制御技術を駆使して、力学物性が既知であるマイクロゲル構造体を疑似血球として生成し、その分散液をコントロール試料として粘度のずり速度依存性を詳細に調べ、分散体(血球成分)の力学特性を解析するためのモデル関数構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,電磁回転式非接触トルク印加装置(以下,EMSシステムと称する)による血液の流動特性解析への足がかりとして,濃度・サイズ・力学物性を調整可能な擬似血球を大量かつ安定に自作すること,およびその人工血球の分散液が示すずり速度に依存した粘度変化の挙動から,分散体の特性を抽出するためのモデル関数を見つけることを目的としている。疑似血球生成に用いる試料は,「人工イクラ」の科学実験キットとしても有名な,アルギン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の組み合わせである。10~100ミクロン程度のサイズになると,表面・界面のダイナミクスが液滴の慣性による運動より支配的であり,一方の液滴をもう一方のバルク内に撃ち込んで侵入させることは原理的に不可能である。そこで,インクジェットを応用した飛翔液滴の制御技術によって,両者ともに液滴として空中に射出し衝突・融合させることで,ゲル膜を有するカプセル形状の構造体(以下,マイクロゲル粒子と称する)を自発的に高スループットで生成する手法を確立した。令和3年度までの研究によって,生成したマイクロゲル粒子が個々の粒子形状を保ったまま,凝集・沈降と再分散を繰り返すことができるような試料の溶液濃度および射出条件は分かっていた。令和4年度に実施した研究では,マイクロゲル粒子の出来/不出来を決めている液滴の物性値を作為的に変えることで,生成条件を判断する物理指標を策定するためのデータを蓄積した。また,自作したマイクロゲル粒子分散液の粘度とせん断速度の関係性をEMSシステムによって精密測定し,粒子サイズ・粒子濃度を変えた場合のデータ差異について比較と検討を行い,それぞれの違いの表れ方がせん断速度域によって変わりうるかどうかを詳細に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝突させる液滴のアルギン酸濃度やカルシウムイオン濃度をコントロールすることで,生成されたマイクロゲル粒子の力学物性を段階的に変えられると考えており,濃い試料から生成した粒子と薄い試料から生成した粒子,それぞれの分散液に対してずり速度に応じた粘度変化(流動特性)を測定し,変化の度合いが明らかに異なることを確かめた。また,アルギン酸濃度が薄いものほど流動特性の変化率が大きいことも確認し,薄い濃度の試料を用いた時に,より柔らかいマイクロゲル粒子が生成されている可能性を見出した。さらに,マイクロゲル粒子の分散濃度(体積分率)による流動特性の違いについても比較・検討を行った。近接粒子と衝突しなくても流動できそうな30vol%程度の分散液では流動特性の変化が極端に小さいこと,50vol%,60vol%,70vol%と体積分率が上がるほど,流動特性の変化がより大きくなることを確認した。特にせん断速度が10s-1を下回る領域において,顕著な違いが表れることを明らかにした。この違いは個々のマイクロゲル粒子の物性そのものより,粒子同士の相互作用が強くなってくることの影響であると考えており,実際の血液が体内を循環する平均せん断速度30~600 s-1に比べて,やや低い領域において違いが顕著になることは,非常に興味深い結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果を踏まえ,まずマイクロゲル粒子の生成条件に関しては,表面張力・粘度・サイズなどのバランスを考慮した無次元数による定式化ができないかを試みる。EMSシステムを用いた流動特性の定量評価に向けた測定・解析スキームの確立については,特に測定に必要な時間と粒子の沈降時間の兼ね合いを詳細に検証し,その結果からせん断速度の連続掃引による測定が適しているのか,高いせん断速度から低いせん断速度へと一気に変化させるステップ応答のような測定が適しているのか,見極めたい。その上で,流動特性を記述するようなモデル関数を決め,実験結果から抽出できる物性パラメータと粒子単体の力学物性あるいは粒子同士の相互作用の強さとの関係性を明らかにする。その一方で,市販の低粘度対応型レオメータを用いたパラレルプレートによる測定も実施し,ギャップ長と粒子サイズの相関によって流動特性に違いが生じるのか,を実験的に検証し,血球からみた血管内部の相対的な流路幅に対する挙動の差異について知見を得たい。
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