Project/Area Number |
21K04892
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩崎 洋 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 技師 (70834159)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 時間分解 / ホログラフィー / 誘電分光 |
Outline of Research at the Start |
ナノ領域の電磁場を可視化できる手法として知られる電子線ホログラフィーに,時間分解の機能を追加し,ポテンシャル分布の時間発展の観測にもとづいて物質試料の誘電応答をマッピング画像として得る 「画像化誘電分光法」 の原理確認を行なう。 時間分解の方法としては,周期的な繰返し現象を対象としてストロボスコピックな短時間露光によって一場面のホログラムを撮影する。 本研究では,静電偏向器による短時間シャッターなど,多くの透過電子顕微鏡に比較的容易に導入できる素朴な手法・コンポーネントを採用することにより,あたらしい誘電応答分布の解析法をひろく affordable な手法として提供する。
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Outline of Annual Research Achievements |
電子顕微鏡を用いておこなう電子線ホログラフィーは,試料を透過した電子波と参照用平面波とを重ねて得られる干渉像(ホログラム)に基いて,試料内の電磁ポテンシャルを観測する方法である。ホログラムを得るには干渉性の高い(そのために収束が弱く暗い)ビームを用いる必要があることから,より長い積算時間を必要とする時間分解観測は他の電子顕微鏡法にくらべて遅れていた。本研究では電磁場観察という電子線ホログラフィーの特長を時間分解観測においても発揮させることを目的とし,サブ・マイクロ秒レベルのストロボ撮影を可能にするシャッター機構を電子ビームの静電偏向という素朴かつ安価な手法で実現するとともに,物質の誘電応答を二次元マッピング画像として得る材料解析手法の開発を行なっている。 ◆電子線ホログラフィーの時間分解能向上◆ 2段の電子ビーム偏向器を透過電子顕微鏡に取付け,電子ビームの"ブランキング"(撥ね退け)ならびに"復帰"を短い遷移時間で実現する「差動ブランキング法」を実際に行うことのできる実験装置を完成した。この透過電子顕微鏡を用いて,短時間の露光を繰返し積算して電子線の干渉像(ホログラム)を撮影するストロボ電子線ホログラフィーの実験を行なった。その結果,時間窓幅が50ナノ秒の露光を繰返しても真空中の電位勾配を撮影できることを確認でき,サブ・マイクロ秒の時間分解能の電子線ホログラフィーが可能であることを実証できた。 ◆材料の誘電応答解析◆ 周期的に時間変動する外部電場に対する材料の誘電応答を,時間分解電子線ホログラフィーによって調べる実験を続けている。液体状のイオン伝導体(イオン液体)を対象にした場合には 10 KHz の交番電圧である外場にはイオンの移動は追随できないことを明らかにしたのに続き,さらに固体のイオン伝導材料への適用拡大を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究には「差動ブランキング法」を実現するための電子線偏向器およびその高速駆動回路系の開発・調整が必要である。このように装置開発を伴うプロジェクトでは,往々にして装置開発に期間を費やし,ようやく最終年度にデータが出始める場合がある。本研究では早い成果発表を目的に,①短パルス化と,②材料解析への応用の,並走スケジュールを立てて進めてきた。 ◆短パルス化◆ 当課題初年度から進んだ対ポンド円安のため,当初計画した本課題の補助金枠では高速波形発生器が購入できなくなった。所属機関の支援を得て発注したものの,世界的な半導体部品入手難も加わり,この波形発生器の導入が第2年度にまで遅れた。この遅延の影響を引きずり,電子ビームの偏向電極を実際に電子顕微鏡の光軸付近に支持し,かつこの近傍まで高周波ケーブルを導入する機構部品の設計・完成が第3年度(当年度)にまで遅れた。結果として,2系列のパルスによる偏向を組合わせる「差動ブランキング」の実験は計画より1年間遅れた当年度の着手となったが,50 ns の露光パルスでのホログラム撮影までを今年度内に実証することができた。 ◆材料解析への応用◆ 金属電極間に支持されたイオン液体中の電気分極を時間分解電子線ホログラフィーで成功裏に観察した実験の論文発表に続けて,固体材料に観測対象を拡大する実験検討を進めた。しかしながら,試料を透過電子顕微鏡で観察可能な薄片に形成する際の不具合(多くは課題従事者の当該技術における未熟さによる)のため,期待された動的分極の観察に到達できていない。いっぽう,検討を通じて試料不具合のメカニズムに対する洞察を深めることができた(後述)ので,その知見を活かした試料の完成・観察を期して本課題の1年間の期間延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
◆短パルス化◆ ストロボ露光電子線ホログラフィーのこれまでの検討結果からは,当 2023年度に達成した 50 ns の最短露光時間窓幅には,まだ幾分かの短縮の余地があると考えている。現用装置の能力を最大限に発揮させた 20 ns の窓幅による撮影が可能であることを実証するとともに,すみやかに成果発表を行なう。 ◆材料解析への応用◆ イオン伝導性酸化物固体の薄片試料において,バルク材料の特性とはかけ離れた誘電応答が観測され困惑する場合が多かったが,おそらくは集束イオンビーム装置による薄片化の際にイオン衝撃によって生じた試料中の酸素欠損が伝導性の高い表面変質層を作って材料本来のイオン移動による分極を覆い隠してしまったものと考えられた。この洞察に基づき試料薄片化加工の条件(集束イオンビームの加速電圧など)の検討を進めてきたので,その知見をフルに活用して,イオン伝導性固体試料(とりわけ内部に不均一を有する試料のそれぞれの領域)の電気分極が外場の変化に応答する挙動の時間分解観察に注力する。
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