エネルギー関連機能性多元系物質の結晶育成機構および電気輸送特性の解明
Project/Area Number |
21K04909
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 30010:Crystal engineering-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮川 宣明 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 教授 (20246680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 透明導電性半導体 / 加圧式光学フローティングゾーン法 / 大型単結晶 / 異方的電気伝導特性 / 光学バンドギャップ / 強電子相関系超伝導体 / 金属誘起化合物分解法 / 薄膜 / エネルギー関連多元化合物 / 結晶育成機構 / 電気輸送特性 / 透明導電性材料 / 超伝導材料 |
Outline of Research at the Start |
多元化合物では、金属元素-アニオン元素-構造の自由度を組み合わせることにより、結晶構造・電子構造が複雑になるため、多彩な性質・機能を有した物質ができることもあり、これが基礎科学の発展を支えている。しかし多元化合物ゆえに、その大型単結晶はもとより、物質合成そのものが困難となり、物性理解の妨げとなる場合も多く存在している。よって、その様な物質群に対する普遍的な結晶育成法が確立されることが望まれている。本研究では、IGZOに代表されるインコグルーエント溶融性状を有した物質の大型単結晶育成法を確立するのみならず高温超伝導化ための要因を明らかにするための物質合成法を確立し、その輸送特性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
エネルギー枯渇問題に貢献できる物質材料の結晶育成とその輸送特性に関する研究として、透明導電性酸化物(TCO)と強電子相関系超伝導体に焦点を当て研究を進めている。 TCOに関しては、昨年に引き続き空間群R-3mである(InGaO3)1(ZnO)n (IGZO1n:n=奇数)単結晶の良質化、空間群P6_3/mmcとなるIGZO12単結晶の良質化および酸素アニール処理によるキャリア数の制御条件を確立した。良質化には、ロッド回転数の増加と育成された単結晶を種結晶に用いる多段階成長が有効であることを明らかにした。空間群の違いが物性にどのような影響を与えるか調べるためにIGZO12に対して、ab面内およびc軸方向電気伝導度、ホール効果、光吸収測定を行った。その結果、(Ga,Zn)-O層内でのカチオンの構造乱雑性の少ないIGZO12で若干の電気伝導度の異方性が小さくなるという予備的なデータが得られた。 電気伝導度の異方性を制御する目的で、IGZO13のGaサイトをInで置換したIn2O3(ZnO)3(=IZO13)の単結晶育成に取り組み、その良質化条件を明らかにし、その電気特性を調べた。その結果、In置換により、as-grown結晶のキャリア数は10倍以上となることを明らかにした。また予備的データでは、GaサイトをInで置換することにより電気伝導度の異方性をコントロールできる傾向を示すことができた。 強電子相関系超伝導体に関しては、昨年度MOD法によりエピタキシャル成長させる条件を確立した(Nd,Sr)NiO3(113型)に対して、CaH2を用いた低温長時間還元により(Nd,Sr)NiO2(112型)の育成に成功した。しかし、Sr量を増やした厚膜では、表面近傍では界面圧力が緩和され、ルドルスデン・ホッパー相が表面近傍に現れ、超伝導化を阻害している可能性があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TCO研究においてはIGZO11,IGZO12,IGZO13およびIZO13の単結晶育成に成功し、これらの良質化条件を確立した。これについては、as-grown単結晶において問題となっていた組成・欠損の空間的不均一性はロッドの回転速度および良質な種結晶を利用した多段階成長により解決することができることを実証できた。さらに酸素アニールによるキャリア数コントロールの条件も確立した。これらのas-grown単結晶のab面電気伝導度、エネルギーギャップ値、キャリア数、移動度を決定できた。エネルギーギャップ値は、空間群の違いには影響はなく、単位胞内に含まれるZnO層数が増えると単調に減少して行くこと、またGaサイトをIn置換するとその値は小さくなることを確認した。また、空間群R-3mのIGZO11とIGZO13に対してはc軸電気伝導度も調べられ、単位胞内に含まれるZnO層数が増えると電気伝導度の異方性は大きくなることを明らかにした。またGaサイトへのIn置換により、異方性を抑えることができることを実証した。 強電子相関系超伝導体に関しては、常圧下における高温超伝導化の重要要因を発見することを目的として、銅酸化物超伝導体と類似電子構造を有するNi系酸化物に注目している。Ni系の超伝導に関しては、まだ限られたグループでしか実現できていなく、それ故に実験的研究成果報告が十分でない。この問題点を解決するために、もっと簡易な薄膜成長手法であるMOD法での薄膜育成に取り組んでいる。2021年には超伝導物質の前駆物質となる(Nd,Sr)NiO3(113型)の育成法を確立し、2022年にはCaH2を使用した酸素還元により微少Srドープした(Nd,Sr)NiO2(112型)の育成に成功した。しかし、Sr量の添加量を増やすことはまだできていない。よって、超伝導化については、今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
TCO研究においては、空間群P6_3/mmcとなるIGZO14の単結晶育成行い、その電気特性測定を行い、空間群R-3mであるIGZO1n:n=奇数の結果と比較することで、空間群の違いが電気特性に与える影響を調べる。さらにIGZO1n(n=1~4)の熱輸送特性も調べる。IZO13に対しては、c軸電気伝導度測定とともに熱輸送測定を行い、この物質を使ったデバイス応用に向けた基礎物性を明らかにする。 Ni系酸化物超伝導薄膜研究においては、Sr量を増やしていくと界面圧力が膜表面近傍では緩和してルドルスデン・ホッパー相が成長してきてしまうことに起因して超伝導化ができないと思われるため、本年度はNi系酸化物薄膜の上にキャップ層をエピタキシャル成長させることで、超伝導化を実現できないかを調べていく。さらに、この薄膜研究と並行して、電気二重層型トランジスタを利用して、キャリ注入を行い、Ni系超伝導の電気特性を明らかにする。また昨年度は希土類元素にNdとPrを使用し、MOD法による薄膜育成を行ったが、Srの添加が難しくなった場合、価数揺動を利用するために+2,+3価を取り得るランタノイド元素を使った膜膜育成にも取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)