Project/Area Number |
21K04947
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 31010:Nuclear engineering-related
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
松岡 雷士 広島工業大学, 工学部, 准教授 (50455276)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 原子・分子物理 / 反応・分離工学 / 半導体レーザー / 核変換 / 飽和吸収分光 |
Outline of Research at the Start |
放射性セシウムを完全に同位体分離することが出来れば、核変換による完全な無害化が可能となる。しかしながら放射性セシウムと安定セシウムは性質が酷似しており、レーザーを利用した微少量の同位体分離でさえも困難とされてきた。本研究では常温熱平衡の状態にあるセシウム原子集団全体に並進速度を与えることが可能な光誘導ドリフトと呼ばれる現象を利用し、真に機能するセシウム同位体分離スキームの開発を行う。既にセシウム原子の光誘導ドリフトは独自開発の装置で確認出来ており、ここでは主にレーザー・周辺機器の改善によって処理速度の向上を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
放射性セシウムの核変換の前処理として必須となる完全な同位体分離技術を確立することを目指す。研究代表者のこれまでの研究において、「光誘導ドリフト」を利用した分離スキームがセシウムの同位体分離の実現につながる可能性が実験的に実証されている。本研究では放射能分離試験実施に向けたスキームの信頼性向上を目的とし、実験システム開発・物理的機構の解明・新規計測法の開発・補助装置群の開発などを実施している。 令和5年度はセシウム原子D1線(894 nm)を励起するためのレーザーシステムの開発の継続、光路長の長いターゲットのためのレーザー分析法の開発、および、同位体比遠隔計測のための飽和吸収スペクトルの解析などを行った。 894 nm のレーザーの波長標準として用いるため、垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)をDichroic Atomic Vapor Laser lock(DAVLL)を用いて安定化する手法の詳細な検証を行った。様々な実験条件の検証を行い、波長標準としての性能を最適化した。 光誘導ドリフト実験の解析精度向上のため、光路長の長いターゲットを用いる際の吸収スペクトルの変化についての検証を進めている。飽和吸収分光において信号解析法を誤った際に出現する偽のピークについて理論的な検証を行った。また、ターゲット内部での飽和の有無の空間分布を明らかにするため、発光分布をラインカメラで取得するシステムの開発を行った。ターゲット中でのレーザーの減衰の様子が明らかになり、レーザー内の強度分布が重要な要素となることが明らかになった。 同位体分析のための変調伝搬分光の基盤とするため、光路長の長いターゲットにおける飽和吸収分光信号の解析を行った。プローブ光強度の増加によって特定の遷移に由来する信号強度のみが増幅することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目に流通の問題で波長 894 nmの半導体レーザー素子の入手に遅れが生じ、さらに、二年目にメインとなる半導体レーザーシステムの構築の試行錯誤が長引いた影響が現在も続いている。レーザーシステムの開発についてはVCSELを用いたサブシステムの開発などでノウハウを蓄積しており、実用的な運用方法の獲得が出来つつある。このため、遅れは徐々に取り戻している。 一方、半導体レーザーシステムの開発を進める中で、光誘導ドリフトを実験的に機構解明していくための計測法について本質的な不具合が明らかになり、計測法改善のための基礎的な検討にリソースを割くことになった。レーザー計測においてターゲットの光路長が長くなった場合にはレーザーの減衰の効果を考慮にいれなくてはならないが、吸収の飽和がどの時点まで起きているかによって減衰の仕方に変化が生じる。この部分は同位体分離・同位体計測の双方において計測を正確に行うために考慮すべき重要な要因となっているが、解析手法として確立されているとは言い難く、学術的にも追究する価値のある課題となっている。 当初計画に遅れは見られるものの、新しい研究要素の発見などもあり、価値のある要素技術の開発には成功している。今後は要素技術を再集約し、当初計画の実施へとつなげていく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、(1)894 nm のレーザーを用いたセシウム原子の光誘導ドリフトの観測、(2)同位体比計測のための変調伝搬分光の信号形成機構の解明、(3)レーザー吸収分光における光路長と飽和の効果の定量化の三つのテーマを軸として研究を進めていく。 (1)については、開発したレーザーシステムを使用して光誘導ドリフト実験を実施する準備を進めていく。真空容器を整備し、ドリフト発光の観測実験を行う。 (2)については、これまでに得られた飽和吸収分光の知見を統合し、同位体比計測に都合のいい変調伝搬分光信号形成手法の開発を試みる。 (3)については、発光と吸収の観測結果の整合をとるためのシミュレーションモデルを開発し、計測方法の高度化を目指す。 また、これまでに開発したサブシステムや計測法から得られたノウハウについての論文を執筆していく。
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