Enzymatic reaction molecular dynamics simulations for covalent inhibitors of SARS-CoV-2 main protease
Project/Area Number |
21K04993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Waseda University (2022) Kyoto University (2021) |
Principal Investigator |
小野 純一 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 次席研究員 (30777991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 新型コロナウイルス / COVID-19 / SARS-CoV-2 / メインプロテアーゼ / 共有結合阻害剤 / 酵素反応分子動力学法 / 自由エネルギー解析 |
Outline of Research at the Start |
新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスSARS-CoV-2の酵素メインプロテアーゼ(Mpro)と共有結合阻害剤を対象とし,ウイルス増殖に関わる触媒活性を共有結合形成によって阻害する化学反応過程の微視的機構を理論的に解明することを目的とする.本研究では,Mpro,阻害剤および水溶媒を量子的に取り扱う量子分子動力学(MD)法と,化学反応および構造変化の自由エネルギー解析を効率的に行う拡張サンプリング法とを組み合わせた酵素反応MDシミュレーションを実現する.その結果,阻害剤の結合親和性,反応性および可逆性等を評価し,ウイルス増殖の原因であるMproを標的とした治療薬の開発に繋がる知見獲得を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2の増殖に関与する酵素メインプロテアーゼ(Mpro)を対象とし,その酵素活性を共有結合形成によって阻害する共有結合阻害剤の開発に繋がる知見獲得を目指し,大規模量子分子動力学(MD)計算および自由エネルギー解析を軸とした理論解析を実施している.令和4年度には,従来のin silico創薬で用いられるドッキングと大規模量子MD計算とを組み合わせることで,結合親和性と反応性を計算機上で評価するハイブリッド型in silico創薬を行った.具体的には,Mproと天然基質モデルに対する大規模量子MD計算によって得られた構造群を受容体として,医薬品ライブラリ(300万化合物)を対象とした仮想スクリーニングおよびアンサンブルドッキングを実施した.その結果,現時点で承認済の経口抗ウイルス薬2種(ファイザーのnirmatrelvirおよび塩野義製薬のensitrelvir)よりも高い結合親和性を有する候補化合物27種を特定した.機械学習による薬理活性(ADME)の予測を行った結果,最も結合親和性が高かった化合物(Comp. 1)は,承認済の経口抗ウイルス薬2種と同程度の薬理活性を有することが示唆された.MproとComp. 1の複合体に対して大規模量子MD計算を実行したところ,①Mproの活性部位内でのCys145からHis41へのプロトン移動,②水分子を介したHis41からComp. 1へのプロトン移動,③MproとComp. 1との間での共有結合形成が確認された.自由エネルギー解析を行った結果,③の共有結合形成過程が律速であり,その自由エネルギー障壁は約13 kcal/molであった.以上より,本研究によって見出されたComp. 1はMproの共有結合阻害剤として見込みが高いと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す進捗状況より「(2)おおむね順調に進捗している」と判断した. 当初の計画通り,令和3年度にMpro二量体と天然基質モデルに対する大規模量子MD計算を実行し,酵素反応機構の自由エネルギー解析を行っていた.令和4年度には,本量子MD計算によって得られた複数の瞬間構造を受容体として,ナミキ商事の化合物ライブラリ(300万化合物)に対して仮想スクリーニングおよびアンサンブルドッキングを実施した.ここで,His41とCys145からなるMpro活性部位のプロトン化状態として中性状態とイオンペア状態の両方を考慮し,それぞれの状態における受容体に対して知識ベースの手法であるdocking-score QSAR法によって結合親和性を評価した.Mproを標的とした承認済経口治療薬であるnirmatrelvir(ファイザー)およびensitrelvir(塩野義製薬)に対しても同様に結合親和性を評価し,中性状態とイオンペア状態の両方において承認済経口治療薬2種より高い結合親和性を示す候補化合物27種を特定した.ここで,候補化合物はいずれも非ペプチド模倣体であり,ヘテロ環などの共通構造を保有していた.特に,最も高い結合親和性を示したComp. 1に着目し,Mpro単量体との複合体に対して大規模量子MD計算を実行した.ここで,分割統治型密度汎関数強束縛(DC-DFTB)法によって系全体(36309原子)を量子的に取り扱い,拡張サンプリング法の一種であるメタダイナミクス(MetaD)法によってレアイベントである化学反応を効率的に取り扱った.計算にはスーパーコンピュータ「富岳」を用いた.DC-DFTB-MetaD計算の結果,nirmatrelvirと同様に,水分子を介したプロトンリレーを伴って共有結合形成過程が進行することを新たに見出した.現在,本成果の論文投稿に向けて準備を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19は国内において令和5年5月に5類感染症に移行したものの,収束には至っていない.本研究課題の標的タンパク質Mproは,ウイルス由来のポリタンパク質だけでなく,ヒトのタンパク質(NEMOやTDP43など)も切断することが明らかになっており,Mpro阻害剤はウイルス増殖抑制だけでなく後遺症治療の観点からも重要である.Mproを標的として,阻害過程に共有結合形成を含む共有結合阻害剤nirmatrelvirがファイザーによって開発されたが,nirmatrelvirに対する薬剤耐性変異体の出現可能性が指摘されており,新たなMpro阻害剤の開発が依然として求められている.共有結合阻害剤の開発には,ドッキングや古典MD計算による結合親和性の評価に加え,量子MD計算による結合反応性の評価が必要である.令和5年度には,従来のin silico創薬で用いられるドッキング・古典MD計算に,大規模量子MD法であるDC-DFTB-MetaDを組み合わせることで,結合親和性と反応性を計算機上で評価するハイブリッド型in silico創薬を継続して行う. 令和4年度に同定した候補化合物27種のうち,薬理活性の予測値が高い数種類を選択し,Mpro,候補化合物および水溶媒を含む全系を対象としたDC-DFTB-MetaD計算を実行する.その結果,Mproの酵素活性を共有結合形成により阻害する反応過程の自由エネルギー解析を行う.複数の候補化合物に対して上記の解析を行い,それぞれの阻害反応過程の分子機構を解明するとともに,各阻害剤の結合反応性および可逆性を自由エネルギーの観点から評価する. Nirmatrelvirに対する薬剤耐性変異体L50F/E166Vを対象としたハイブリッド型in silico創薬を野生型と同様に実行し,薬剤耐性変異株に対しても有効な新規共有結合阻害剤の候補化合物の探索を行う.
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)