安定フェノキシルラジカルからなるアモルファス固体の軟質磁性に関する研究
Project/Area Number |
21K05019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 直人 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90281104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 惇郎 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (70553353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | アモルファス固体 / フェノキシルラジカル / 2量化平衡 / 磁化率測定 / 軟質磁性 |
Outline of Research at the Start |
フェノキシルラジカルとその2量体からなるアモルファス固体の軟質磁性について調べる。まず、様々な分子構造をもった安定フェノキシルラジカルを合成してアモルファス固化挙動を調べ、分子構造とアモルファス固化挙動の関係を調べる。アモルファス固化挙動は、固体調製法(濃縮法や固相摩砕法など)に対する依存性もあわせて調べる。得られたアモルファス固体は、EPR測定やSQUID測定を行い、軟質磁性や関連する磁気的性質に関する知見を得る。これと並行して、アモルファス固体を含むアモルファス-結晶複合体を調製し、固体構造の違いが磁気的挙動に与える影響を調べる。
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Outline of Annual Research Achievements |
スピン密度の増大を目指し、トリアリールフェノキシルラジカル-2量体系を用いて二つの手法を検討した。(1)では、アリール基上に安定ラジカル部位であるTEMPOL(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)部位を置換した新規分子の合成に概ね成功している。一方(2)では、従来のアモルファス固体とラジカル分子からなる結晶を固相摩砕することで、TEMPOLが最大5%含まれた分子性錯体(混合アモルファス)の調製に成功した。得られた混合アモルファスの磁化率測定を行ったところ、弱いながらもスピン間に磁気的相互作用がある可能性が示唆された。TEMPOLの比率が低い理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっているためであろうから、今後は両者の分子構造をより近づけることで、ラジカル分子の含有率がより高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を目指す。 これと平行して、種々の条件下でのトリアリールフェノキシル-2量体系のアモルファス形成共同を検討した。固化条件が変わるとアモルファス固体中のフェノキシル/2量体比(組成比)は変化したが、その下限は2:98であった。ただし、それらの粉末X線回折パターンや熱分解温度に概ね同じだった。さらに、アモルファス固体を前駆体フェノールの結晶と混合撹拌したところ、フェノキシル/2量体の組成比は2:98で変わらないまま、フェノールがアモルファス中に取り込まれた混合アモルファスが得られた。以上の実験結果は、フェノキシルと2量体が物質量比2:98で含まれるクラスターがアモルファス固体の基本構造になっていること、またフェノールやTEMPOLといったゲスト分子はクラスターに構造に影響を与えず、それらの間に取り込まれることを強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン密度の増大を目指し、トリアリールフェノキシルラジカル-2量体系を用いて二つの手法を検討した。(1)では、アリール基上に安定ラジカル部位であるTEMPOL(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)部位を置換した新規分子の合成に概ね成功している。一方(2)では、従来のアモルファス固体とラジカル分子からなる結晶を固相摩砕することで、TEMPOLが最大5%含まれた分子性錯体(混合アモルファス)の調製に成功した。得られた混合アモルファスの磁化率測定を行ったところ、弱いながらもスピン間に磁気的相互作用がある可能性が示唆された。TEMPOLの比率が低い理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっているためであろうから、今後は両者の分子構造をより近づけることで、ラジカル分子の含有率がより高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を目指す。 これと平行して、種々の条件下でのトリアリールフェノキシル-2量体系のアモルファス形成共同を検討した。固化条件が変わるとアモルファス固体中のフェノキシル/2量体比(組成比)は変化したが、その下限は2:98であった。ただし、それらの粉末X線回折パターンや熱分解温度に概ね同じだった。さらに、アモルファス固体を前駆体フェノールの結晶と混合撹拌したところ、フェノキシル/2量体の組成比は2:98で変わらないまま、フェノールがアモルファス中に取り込まれた混合アモルファスが得られた。以上の実験結果は、フェノキシルと2量体が物質量比2:98で含まれるクラスターがアモルファス固体の基本構造になっていること、またフェノールやTEMPOLといったゲスト分子はクラスターに構造に影響を与えず、それらの間に取り込まれることを強く示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
軟質磁性発現のためには、固体中でスピン同士がある程度近接し、それらの間に強い磁気的相互作用が働いている必要がある。そのための条件として、固体が一定数以上のラジカル部位を含んでいる必要がある。このような固体の実現を目指し、前項(1)(2)の実験を行い、(2)の手法においてTEMPOL分子がある程度の比率で含まれたアモルファス固体の調製に成功した。ただしTEMPOL分子の比率は、いまだ十分ではないと考えている。TEMPOL分子の比率が低かった理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっていることによると考えている。実際、フェノキシルラジカルの前駆体であるフェノールをゲスト成分として場合は、2量体分子の3倍以上のフェノール分子が取り込まれるとする知見を得ている。このことに基づき、今後は分子構造がフェノキシルラジカルにより近い安定ラジカルをゲスト成分として、ラジカル分子の含有率が高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を検討する予定である。 また、トリアリールフェノキシル-2量体系の基礎的知見としては、前項で述べた組成比2:98のクラスターが鍵を握っていると考えているが、その実験的検証はまだ不十分である。今期は走査型顕微鏡などの装置を用いて、当該クラスターの直接検出を行うことを計画している。
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Report
(2 results)
Research Products
(21 results)