再生可能な有機ヒドリドを創出しうる錯体触媒の開発と高機能化
Project/Area Number |
21K05097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小泉 武昭 静岡理工科大学, 総合技術研究所, 研究員 (60322674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 再生可能ヒドリド / ルテニウム / ロジウム / ヒドリド還元 / 結晶構造 / 電解還元反応 / 多電子還元反応 / 遷移金属錯体 / 二酸化炭素 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、自然エネルギーと化学エネルギーの相互変換システムを構築するための重要なプロセスである、「電気」と「水」から再生可能なヒドリドを生成する過程を実現するため、そのような機能をもつ金属錯体の創製および「有機ヒドリド」としての機能を強める反応系を構築するとともに、有機物の高効率な還元、二酸化炭素からのメタノール生成を実現するための技術を開発する。本研究では、電気化学的に再生可能なヒドリドを生成できる部位を配位子に組み込んだ金属錯体を創製し、有機物を電気化学反応により効率的に還元でき、さらには二酸化炭素の多電子還元ができる高機能触媒系の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有機物の還元における基幹反応の一つであるヒドリド還元において必須であり、且つ二酸化炭素の多電子還元の実現において最も重要な鍵化学種であると考えられるヒドリド (H-) を再生可能な条件で生成できるシステムの構築を目指すものである。再生可能なヒドリド種を、電力と水により生成しうる金属錯体を設計・合成し、有機物の高効率な還元、すなわち自然エネルギーの有機物への貯蔵、および二酸化炭素の多電子還元によるメタノール生成を実現するための技術開発を目的とする。 令和5年度は、前年度に新たに開発した1,8-ナフチリジン(napy)を配位子にもつ二核錯体[Rh2(tpy)2(μ-napy)(NCMe)2](PF6)4 ([1])の構造・反応性を明らかにすること、および本研究を推進する上での鍵化合物の一つであるpbnを前年度までに開発した改良合成法により効率的に合成するとともに、本研究の目的に合致すると考えられる支持配位子の選定および合成を行い、bpnと組み合わせた錯体の創製・電気化学的性質の解明、および反応性の検討を行うことを目指した。 還元を受けやすい配位子であるnapyをもつ二核Rh錯体[1]は、Rh-Rh軸上に配位子としてMeCNCをもつことから、この部位が反応サイトとして機能する可能性があるため、錯体の電気化学的性質および反応性について検討を行った。その結果、この部位がハロゲン化物イオン等を捕集できる機能をもつことが明らかになった。 本研究の目的に合致すると考えられる支持配位子として、2個のnapyを2-位で結合した2,2'-ビナフチリジル(bnapy)を選定した。既法に基づき合成を検討したが、収率・精製等に難があり、改良が必要であると考えられる。得られたbnapyを用いてpbnを併せもつRu錯体の合成を試み、生成物[2]が得られたが、構造決定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和5年度は、前年度の研究で新たに開発したRh二核錯体[1]の構造・反応性を明らかにすること、重要な配位子であるpbnおよびbnapyを効率的に合成し、これらを組み込んだ錯体を構築して電気化学的性質・反応性を明らかにすることを目指した。 錯体[1]については、結晶構造、分光学的性質、電気化学的性質を明らかにするとともに、Rh-Rh軸上の配位座の配位能力に関して成果を得た。この結果は、今後電気化学的に再生可能なヒドリドの創成に向けた重要な知見であると言える。 bnapyの合成は、文献に従って行ったものの、満足のいく結果が得られなかったため、改良すべくさらなる検討を行っている。少量得られたbnapyを用いてRuおよびpbnとの反応を行い、[Ru(pbn)(bnapy)2]2+の合成を試みた。NMRにより生成が期待できる結果が得られているが、構造決定には至っていない。今後外部機関にX線結晶構造解析を依頼し、構造を決定した上で研究を進める必要がある。 令和5年度は、筆者の所属する部局(静岡理工科大学・先端機器分析センター、人員:2名)で人事異動があり、1名が他の部局に移ったため、機器の保守・管理・操作指導・学生実験対応などの業務量が増加したことに加え、センターの運営、新任職員の教育等の業務が重なったことなどの理由により、充分な研究の時間を確保できなかった。したがって、進捗状況は遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の検討より、napy配位子を有するRh二核錯体の構造・反応性を明らかにできた。加えて、pbn配位子を有する新規Ru錯体の設計・合成の方針を決定できた。本年度の研究進行の遅延の原因となった人事異動による業務増加等の問題は、新任職員との業務分担を図れる見込みがついたため、影響は最小限に留められると考えている。以上を鑑みて、令和6年度は以下の通り研究を推進する予定である。 1.令和5年度までに合成したpbnを配位子にもつ各錯体について、各種測定(NMR、ESI-MS、単結晶X線解析)を用いて同定を行い、その構造を確定する。ESI-MSは名古屋市工業研究所、単結晶X線は東京工業大学オープンファシリティセンター、産業技術研究所にそれぞれ測定を依頼する。 2.合成した錯体の電気化学的性質をサイクリックボルタモグラムにより明らかにする。酸化還元電位が目的とする反応に対して適切かどうかを確認する。得られた結果を錯体合成へとフィードバックし、酸化還元電位のチューニングを行うことで、触媒としての機能を向上させる。 3.上記の電気化学的性質の検討結果から、目的の酸化還元電位を有すると考えられる錯体に対して、酸、二酸化炭素、カルボニル化合物やオレフィンなどの各種有機基質を作用させ、電気化学測定を行うことで、錯体と各種基質との相互作用の有無を明らかにする。 4.pbn配位子を有する錯体について、酸性溶液中で電解還元反応を行い、NADH型構造への変換が可能かどうか検討する。NADH型への変換が確認できた錯体については、各種基質を添加して電解反応を行い、生成物について明らかにする。同時にルイス酸が存在する条件下での電解反応を試みることで、反応性の相違を比較検討し、再生可能ヒドリドの可能性を明らかにする。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)