Project/Area Number |
21K05206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35030:Organic functional materials-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 助教 (10710212)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | キノイド / 近赤外吸収 / 狭バンドギャップ / 高分子半導体 |
Outline of Research at the Start |
現在、波長1100 nmを超える小さなエネルギーの近赤外光を検出する電子素子には、高価な無機半導体材料が用いられており、これらに代わる安価な新材料の創製が望まれている。研究代表者はこれまでに、キノイドと呼ばれる分子骨格を基盤として、近赤外光を吸収可能な低分子有機半導体材料を開発してきた。本研究では、研究代表者が独自開発してきたキノイド分子骨格を基盤として、より高い電荷輸送特性と長波長吸収が期待される高分子半導体材料の開発およびその物性・機能評価に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、本研究計画において鍵分子骨格となる電子受容性π拡張キノイド骨格への可溶性置換基の導入とそれらを組み込んだモデルオリゴマーの合成、およびオリゴマーの構造と物性の評価に取り組んだ。申請者がこれまでに報告してきたπ拡張キノイド骨格のうち、狭バンドギャップ化に特に有望であると考えられるナフトジカルコゲノフェンジオン骨格について、中央ナフタレンのペリ位に可溶性置換基として直鎖および分岐アルキル基を導入し、これらの骨格を組み込んだD-A-D型オリゴマーを合成した。キノイド部位にアルキル基を導入したオリゴマーは、ドナー部位に同アルキル基を持つ誘導体と比べ顕著に高い溶解性を示した。また、両オリゴマーは溶液状態では同様の電子構造を示した一方で、キノイド部位にアルキル基を導入したオリゴマーは固体状態において、主たる吸収帯が大きく長波長シフトした。単結晶X線構造解析の結果、オリゴマーはどれもアルキル/π分離積層構造を形成しており、色素短軸方向に伸びたアルキル基が互いにぶつからないように、色素骨格が長軸方向へスリップすることで、J会合的な集積構造を誘起したと考えられる。また、導入したアルキル基が、連結したドナー部位とは干渉せず、共役構造の共平面性を維持していることも明らかにした。これは、剛直な拡張キノイド骨格をポリマーに組み込むうえで、ナフトキノイド骨格のペリ位への可溶性置換基の導入が、溶解性の向上だけでなく、主鎖の共平面性の維持や、光学バンドギャップの減少にも効果的であること示唆する結果である。さらに、ドナー部位を導入後に低収率の反応にてキノイド骨格を構築していた従来の合成ルートに対して、ハロゲン置換したキノイド化合物を新たに合成し、これが右田-小杉-Stilleカップリングによって、ドナーとの連結が直接可能な有用な共通合成中間体であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の分子設計において、ポリマーの溶解性と主鎖の剛直性の両立は最重要課題の一つである。昨年度は、鍵骨格となるキノイド構造の側鎖修飾を重点的に検討することで、課題解決のアプローチを探った。結果として、ナフトキノイド骨格のペリ位に可溶性置換基を導入することで、モデルオリゴマーの溶解性を顕著に向上させることを見出し、また、導入した可溶性置換基が主鎖の共平面性を損なわないことを明らかにした。これらは上記課題の解決の糸口と考えられる。また、モデルオリゴマーの凝集による吸収の長波長化について、単結晶構造解析により、置換基が分子配列や光物性に与える影響を明らかにし、バンドギャップを縮小するための重要な知見を得た。さらに、キノイド骨格を含む化合物の合成について、多段階低収率であった従来の合成ルートを見直し、有用な共通合成中間体の合成を達成し、今後の材料合成の効率化が期待できる。以上のことから研究は概ね順調に進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、可溶性置換基を導入したナフトジカルコゲノフェンジオン骨格を有するモノマーの合成、ドナー部位との共重合によるD-A型ポリマーの合成、およびその構造と物性の評価に取り組む。まず、合成したポリマーの光学的および電気化学的バンドギャップを実験的に見積もり、理論的に予測された値と比較することで、本分子設計が高分子半導体の極狭バンドギャップ化にどの程度有効であるかを検証する。また、可溶性置換基の構造がポリマーの溶解性や固体構造および物性に与える影響を調査するために、主鎖構造を固定した系において種々の可溶性置換基を導入したポリマーを合成し、溶解性試験や薄膜X線回折によって、適度な可溶性と高い結晶性を与える可溶性置換基の探索を行う。溶液プロセス可能なポリマーについては、順次、電界効果トランジスタの作製によるキャリア移動度の評価を行い、側鎖の化学構造と薄膜の微細構造との相関について調査し、高移動度化に向けた側鎖の分子設計指針を探る。最終年度においては、主鎖の剛直性をさらに向上させ、かつフロンティア軌道のエネルギー準位を低下させるドナー部位の構造探索を行う。得られるポリマーの物性に応じて、これらを活性層として用いた有機電子デバイスを作製し、光・電子機能および大気安定性の評価等を通し、真に電子材料として機能する材料の探索を進める予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)