Project/Area Number |
21K05272
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 37010:Bio-related chemistry
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
坂口 怜子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80723197)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | イオンチャネル / シグナル伝達 / 転移RNA / タンパク質品質管理 / 神経変性疾患 / 創薬 |
Outline of Research at the Start |
生物が恒常性を保つためには、タンパク質の翻訳とその品質管理が重要であり、tRNAの転写後修飾はその中核を担っている。特に37位グアノシンのメチル化は、原核生物では生存に必須である。このメチル化は生物間で保存されているが、修飾を担う酵素は原核生物と真核生物で異なっており、両者の違いを探索することは、タンパク質の収斂進化の知見として学術的に興味深いだけでなく、原核生物のみを標的とした副作用のない新規抗生物質設計の指針ともなり得る。 本研究では、各メチル転移酵素の金属要求性や、その上流の金属イオン濃度制御機構の探索と、真核生物と原核生物の酵素の違いを解明する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
細胞を構成する酵素・細胞骨格・抗体などを形作るタンパク質の合成機構は、全ての生物において共通であり、生命維持の根幹を成すシステムである。必要なときに必要なタンパク質を必要な量だけ発現させる仕組みにおいて、そのアミノ酸配列を正確に翻訳することは、タンパク質の品質管理上で一番重要である。そのため、遺伝暗号に従ってリボソーム上にアミノ酸を正しい順番で運ぶトランスファーRNA(tRNA)には、その正確さを担保するための仕組みが備わっている。tRNAが機能を発揮するためには、転写後に必要な修飾を受けた上で、各コドンに対応するアミノ酸でアミノアシル化されてリボソームに取り込まれる必要がある。修飾を担う酵素が選択性や反応速度などの点で正しく機能しなくなると、誤ったアミノ酸の取り込みや読み枠のズレなどによりタンパク質の品質が低下し、生体応答に異常をきたす。特に、メッセンジャーRNAとリボソーム上で塩基対を形成して特異的なアミノ酸認識に関わる、tRNAのアンチコドン領域(34~36位)とその周辺の配列の適切な修飾は、アミノ酸を正しい配列で結合させていく上で重要である。 tRNAの修飾のうちの一つである36位グアノシンのメチル化は、ワトソンークリック型の塩基対形成を阻害することで、タンパク質翻訳における読み枠のズレを防止する役割を担う。このメチル化を担う酵素は原核生物(TrmD)と真核生物(Trm5)で異なっており、原核生物のTrmDの欠損は致死性である。そして、原核生物の酵素のみ、その活性にCa2+、Mg2+、Mn2+などの2価金属イオン要求性がある。 そこで本研究では、この酵素活性に必須の金属イオンの細胞内濃度を制御している機構の解明を目指して、イオンチャネルの変異体の活性評価や、阻害剤の効果の検証を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、細胞内の金属イオンの濃度を制御する機構を明らかにすることを目的としている。具体的には、酵素の活性中心における金属イオン要求性や、その上流でイオン濃度を制御している分子実態の探索、その制御が機能しない場合の応答の変化と疾病との関連性の解明を目指している。本年度も前年度に引き続き、細胞内の金属イオン濃度を制御するイオンチャネルの分子実体として、外界の環境変化を感知してCa2+などを細胞内に流入させる非特異的陽イオン透過チャネルであるTransient Receptor Potential (TRP) チャネルファミリーの変異体の機能評価ならびに阻害剤の評価を行なった。 TRPファミリーは温度、 pH、レドックス環境、機械刺激など、それぞれが固有の刺激で活性化することが知られている。本年度は、腎障害患者から同定されてきたTRPCチャネル変異体の機能評価を行った。モデル生物として腎臓由来細胞を用いて、作製した変異体を遺伝子導入により発現させ、定常状態や受容体刺激時の細胞内Ca2+濃度の変化を測定した。評価した変異体のうち、数種類は細胞内へのCa2+流入量が減少し、数種類はCa2+流入能力が上昇していることを見出した。総合して、患者由来の遺伝子変異では、その臨床的な重篤さの度合いに応じて細胞内Ca2+流入能力が向上していることが明らかになった。そこで、チャネル機能の異常向上が疾患と関連することから、発症の抑制と進行を遅らせることを目指して、TRPCチャネルの阻害剤の評価を行った。 さらに、チャネル機能が異常に向上した変異を持つモデルマウスの作製に着手したが、本年度より別の競争的資金が採択され、本研究に対するエフォート率が下がったため、研究の進捗がやや遅れている。当初の計画では本年度中に変異マウスの評価まで行う予定であったが、来年度に行う見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までの成果で、HEK293細胞や膵細胞、腎細胞をモデル生物として用いて、膵炎や腎障害の患者から同定されたTRPチャネルの様々な変異体を遺伝子導入により発現させ、細胞内Ca2+濃度の変化を測定したところ、複数の変異体でCa2+流入能力が変化(向上、低下の双方)しており、患者由来の遺伝子変異では、その臨床的な重篤さの度合いに応じて細胞内Ca2+流入能力が向上していることが明らかになった。今後の方針として、各変異体の、Ca2+以外の金属イオン(Mg, Zn, Fe, Coなど)に対する透過性(選択性の変化)を評価したり、イオンチャネルに対する阻害剤の効果(作用機構への影響)を評価したりする。 また、TRPCチャネル機能の異常向上が疾患と関連することから、チャネル機能が異常に向上した変異を持つモデルマウスをCrispr-Cas9法で作製し、第1世代が生まれてきたところである。今後、この変異マウスたちの遺伝型を同定した後、組織を採取し、細胞骨格の形成やタンパク質産生における品質の変化があるか評価する。表現型の有意な差が観察された場合、TRPCチャネルの阻害剤をマウスたちに投与し、表現型の改善が見られるか評価を行う。
|