Project/Area Number |
21K05325
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38010:Plant nutrition and soil science-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
下嶋 美恵 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (90401562)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | リン酸欠乏 / 膜脂質転換 / リン脂質分解 / リン酸 / 窒素 / 炭素 / 脂質 / ストレス耐性 / 栄養欠乏 |
Outline of Research at the Start |
植物はリン欠乏時、生体膜中のリン脂質の大半を分解し、糖脂質で代替することで、膜中のリンをより重要な生体内の代謝系に利用する。これまでに申請者らは、このようなリン欠乏時の膜脂質転換に寄与するリン脂質分解酵素(PAH)は、リンだけでなく窒素欠乏時の植物生育にも重要な役割を担っていること、また最近、生育環境中のリンだけでなく、窒素、炭素との量比が膜脂質転換の駆動に深く関与している可能性を見出した。そこで本研究では、特にリン脂質分解に着目しながら、リン、窒素、炭素の3種類の栄養の量比が膜脂質転換を駆動・制御する分子メカニズムを明らかにし、膜脂質転換を活用した栄養ストレス耐性植物開発の基盤構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
リン欠乏に晒された種子植物では、生体膜の主要構成膜脂質であるリン脂質の分解が活性化される。その一方で、生体膜中の失われたリン脂質の代替として、糖脂質を用いる。植物にとって生体膜はリン酸のリザーバーとしても機能しており、この機構はリン欠乏時の膜脂質転換と呼ばれており、植物がリン欠乏下で生育するために必須の機構であることがこれまでに知られている。また申請者らはこれまでに、リン欠乏時にはリン脂質分解や糖脂質合成と連動してトリアシルグリセロール(油脂)の蓄積も起こることを見出したが、近年、この油脂蓄積もストレス耐性に寄与している可能性が示唆されている。申請者らは昨年度までに、シロイヌナズナのリン欠乏時の膜脂質転換においてはリン脂質分解酵素ホスファチジン酸ホスホヒドロラーゼ(PAH)の寄与が非常に大きく、その一方で従来考えられていた非特異的ホスホリパーゼC5(NPC5)の寄与は小さいことを明らかにした。また、種子植物と同様なリン欠乏時のリン脂質分解を行う陸上植物のうち、種子植物とは初期に分岐したゼニゴケを用いてPAHおよびNPCのホモログの機能解析を進めた。ゲノム編集により各遺伝子の機能欠損したゼニゴケ変異体を作出し、リン欠乏下の生育や膜脂質組成の解析を進めた結果、どちらもリン欠乏時のリン脂質分解を担う主要酵素ではないことが明らかになった。そこでゼニゴケのリン欠乏時の遺伝子発現についてデーターベースを元に詳細な解析を行ったところ、リン欠乏時に発現量が顕著に増大するリン脂質分解酵素遺伝子を発見した。また、リン酸欠乏との関連が深いことが知られている酸ストレス下でのゼニゴケ生育には、オリゴ糖脂質合成酵素により生成されるオリゴ糖脂質および/または油脂による脂質転換が重要な役割を担っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの本研究期間において、リン欠乏時の膜脂質転換に寄与する可能性が高い、新奇リン脂質分解酵素をゼニゴケで発見できたことは大変評価できると考えている。このリン脂質分解酵素はシロイヌナズナにもホモログが存在することから、その解析も合わせて進めることで種子植物も含めた膜脂質転換時のリン脂質分解経路の全容が解明できる可能性がある。また、ゼニゴケのオリゴ糖脂質合成酵素は種子植物にも保存されている。今後はゼニゴケおよびシロイヌナズナを用いた酸およびリン酸欠乏ストレス下の解析を進めることで、陸上植物における脂質転換を介したリン酸欠乏ストレス耐性機構の新しい知見につなげることができると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降は次の項目について研究を推進し、来年度以降の研究につなげられる成果を得たいと考えている。 1.ゼニゴケのリン欠乏時の膜脂質転換を担うリン脂質分解酵素の候補遺伝子の解析を進める 2.シロイヌナズナにおける上記リン脂質分解酵素ホモログの解析に着手する 3.ゼニゴケにおけるオリゴ糖脂質合成酵素が、酸ストレスだけでなくリンや窒素欠乏ストレス時の生育や膜脂質転換に影響を与えるかどうか明らかにする
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