クロロフィル分解酵素によるフィトール生成とフィトール特異的な保健機能の解析
Project/Area Number |
21K05444
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38050:Food sciences-related
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
奈良井 朝子 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 准教授 (00339475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 寛子 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (80709733)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | phytol / chlorophyll / pheophytin / enzyme / smoothie / フィトール / クロロフィル / スムージー / クロロフィラーゼ / フェオフィチナーゼ |
Outline of Research at the Start |
生鮮野菜・果物を摩砕するスムージー加工では食材由来の酵素が関わる様々な反応が起こりうる。そのうち、クロロフィル分解酵素の反応により生成するフィトールは生活習慣病予防効果を示すことが報告されているが、加工中の本酵素反応を解析した例はない。本研究では、本酵素の特性を活かしてフィトール生成量を増やす食材の組み合わせやスムージー加工条件の検討をおこない、保健機能を最大限に引き出す加工・調理方法を追究する。
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Outline of Annual Research Achievements |
新鮮な野菜・果物を生のまま摩砕したスムージー摂取による健康効果が注目されている。スムージー加工では食材由来の酵素が関わる様々な反応が起こりうるため、これまであまり注目されることがなかったクロロフィル分解酵素の反応と、その生成物であるフィトールに着目する。 クロロフィル分解酵素については食品加工・調理の分野でその反応がもたらす影響を詳細に調べた例がない。一方で、フィトールは抗肥満、抗糖尿病につながる生理活性を示すことが報告されている。そこで本研究では、1) 野菜・果物、その加工品に含まれるフィトール量の測定、2) フィトールとその代謝産物で乳製品や魚肉に豊富なフィタン酸の生理活性の比較、3) クロロフィル分解酵素活性が高い食材のスクリーニング、4) その酵素学的性質を利用しフィトール生成量を増やす食材の組み合わせやスムージー加工条件の検討をおこない、野菜・果物がもつ保健機能を最大限引き出す加工・調理方法を追究することを計画した。 2022年度は、1) ホウレンソウのスムージー調製および処理条件がフィトール生成量に及ぼす影響を調べた。2) スポーツ栄養学的視点からフィトールとフィタン酸の効果を検討するため、昨年度にひき続き、筋肉中の運動後グリコーゲン超回復に及ぼす影響について分子生物学的な作用機序の解析をおこなった。3) ホウレンソウとグリーンキウイ、レモンから硫安塩析法で抽出した粗酵素にクロロフィルaまたはフェオフィチンaを反応させ、遊離するフィトール量をHPLC分析することでクロロフィル分解酵素の活性を測定し、昨年度のpHにひき続き、温度に対する依存性・安定性を調べた。4) その酵素学的性質を利用しフィトール生成量を増やす食材の組み合わせやスムージー加工条件の検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) ホウレンソウの粗酵素に含まれるクロロフィル分解酵素の至適pH, 至適温度を分析した結果を参考に、当該条件が整うことでスムージー中のフィトールが増加することを確認した。 2) フィトールやフィタン酸の摂取が、マウス組織中の運動後グリコーゲン超回復能に及ぼす効果をそれぞれ明確にした。具体的には、フィトールは腓腹筋のグリコーゲン超回復を誘導する傾向があったが、フィタン酸はどの組織においても誘導されず、血中遊離脂肪酸量を上昇させる作用が認められた。関連シグナル伝達因子のタンパク質発現解析により、フィトールは運動直後に摂取した場合でも、安静時と同様に骨格筋中のインスリン非依存的経路の活性化による糖取り込みの促進を介したメカニズムが示唆された。フィタン酸については脂肪酸代謝に関連するシグナル伝達因子の解析を進めている。 3) ホウレンソウ、グリーンキウイとレモンから抽出した粗酵素に含まれるクロロフィル分解酵素について、それぞれの至適pH条件下において温度依存性と熱安定性の結果を揃えた。ホウレンソウでは40, 45℃で活性が高く、55℃以上では30分で活性が半分以下へ低下した。グリーンキウイでは40℃から50℃の範囲で活性が高く、60℃30分で活性が半分以下へ低下した。レモンはクロロフィルaとフェオフィチンaのそれぞれの基質に対し、35℃、45℃で活性が高く、45℃、40℃以上で30分処理すると活性が半分以下へ低下した。 4) 粗酵素レベルでクロロフィル分解活性が検出されたグリーンキウイとレモンは、生鮮試料の搾汁液とクロロフィル供給源であるホウレンソウ磨砕物との混合により酵素的なフィトール生成が起こるのか調べた。グリーンキウイでは粗酵素で検出した酵素の特性と異なるフィトール生成活性が認められた。また一方で、レモンでは界面活性剤が共存する条件でのみフィトールが生成することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 野菜・果物の種類を増やしてフィトール含量を測定するとともに、市販ジュースなどの加工品についてもフィトール量の測定を進め、加工工程におけるクロロフィル分解酵素の寄与について考察する。 2) フィトールやフィタン酸の摂取が、マウス組織中の運動後グリコーゲン超回復能に及ぼす効果については、関連シグナル伝達を介したメカニズムの解明を進めていく。また、両被験物質の生理活性の比較についてはin vitro試験系の導入を検討する。例えば、リン脂質から調製したリポソームを細胞膜を構成するリン脂質二重層のモデルとして用い、経口摂取した被験物質が消化管内で細胞表面へ結合後、生体内に吸収されるまでのプロセスに差があるのか調べる。 3) クロロフィル分解酵素活性が高い食材については、pH依存性のほかに温度依存性と熱安定性に関する酵素学的性質、また阻害成分や活性化成分を調べ、次の4)に向けて有用な知見を得る。特にグリーンキウイでは粗酵素と生鮮果実搾汁液との間でクロロフィル分解酵素活性の特性が異なったため、原因を追究する。 4) フィトール生成量を増やす食材の組み合わせやスムージー加工条件の検討においては、3)で得られたクロロフィル分解酵素の酵素学的性質に関する知見を活かす。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)