脂肪酸のTLR10発現誘導機構の解明と生体塗布での抗炎症作用の検証
Project/Area Number |
21K05889
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42010:Animal production science-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
河原 岳志 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30345764)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | TLR10 / 脂肪酸 / 皮膚角化細胞 / ケラチノサイト / Toll様受容体10 / 油脂 / 自然免疫応答 |
Outline of Research at the Start |
油脂はスキンケア製品として用いられ、塗布することで物理的なバリア形成や保湿効果などの物理的役割が知られている。しかし、それらの働きにおいて生物学的な役割が存在するかは明らかになっていない。申請者はこれまでの研究で、皮膚角化細胞を用いてダチョウ油脂の抗炎症効果の作用本体を探索し、トリグリセリドを構成する脂肪酸が抗炎症性受容体であるToll様受容体(TLR)10の発現を誘導することを明らかにした。本研究ではこの現象に着目し、脂肪酸をTLR10誘導作用をもつ機能性因子と位置付け、TLR10の発現誘導作用の作用機序の解明やヒトLR10発現マウスを用いた生体での作用の検証を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、遊離型の脂肪酸がヒト皮膚角化細胞においてToll様受容体10(TLR10)の発現を誘導する作用を見いだしてきた。TLR10は自然免疫応答を担うパターン認識受容体にあって、コンセンサスの得られたリガンドは知られておらず、その応答も抗炎症作用に関わるものが多い。本研究では脂肪酸がTLR10を誘導する作用機序の解明のため、誘導に関わるシグナル伝達分子を明らかにする目的で以下の研究を行った。 本年度の研究では、皮膚角化細胞においてTLR10を誘導し得るシグナル伝達経路の候補分子として、NF-κB、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARs)に焦点を当てた。 ヒト皮膚角化細胞株HaCaTに対するレポーターアッセイならびにアゴニスト・アンタゴニストを用いた検討の結果、脂肪酸によるTLR10誘導時にNF-κBの活性化やその結果生じる炎症性サイトカインの発現誘導は観察されなかった。一方で、PPARsやGPRsの各種アゴニストによるTLR10の誘導は確認され、これらの分子を介したシグナル伝達がTLR10の誘導に関与している可能性が示された。しかしながら、各PPAR単独のアンタゴニスト処理によって、脂肪酸によるTLR10誘導を阻害する作用はみいだせなかった。以上の結果から、脂肪酸によるTLR10誘導には、TLR等を介したNF-κBの活性化は関与しておらず、少なくともPPARsやGPRsなどの脂質受容体を介した複合的なシグナル伝達が関わっている可能性が示された。これまでの研究で脂肪酸によるTLR10誘導作用にアシル基の構造の違いが影響することが示されてきたが、この作用の違いも各脂肪酸と各PPARとの相互作用バランスの違いによって生じている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を行うにあたり、脂肪酸のTLR10誘導に関わる有力な転写因子としてNF-κBとPPARを想定した。 NF-κBはヒトで知られているTLR10を除く全てのTLRのシグナル伝達に関わっている転写因子として知られており、脂肪酸がTLRと何らかの相互作用をして活性化シグナルが細胞に伝わった結果、正のフィードバック機構によりTLR10の誘導にも影響が及ぶという理解が可能である。ただこの想定にはTLRと遊離型の脂肪酸との相互作用が前提となる。一部の脂肪酸がTLRシグナル経路を活性化する現象が知られているが、生体を構成する脂肪酸に対して炎症性シグナル伝達経路を活性化するのかという疑問は残る。 もう一つの有力候補として想定したPPARは、代表的な長鎖脂肪酸の受容体であり、細胞に対して脂肪酸を作用させた際に、相互作用が期待できる。ただPPARの働きとしては脂質代謝に関わる分子の発現誘導やそれにかかわる細胞の分化制御などであり、免疫系との相互作用としては不明な点が多い。 以上のことから、どちらの想定においても未知の前提と含んだ検討であった。本年度の研究成果から、NF-κBの活性化による誘導の可能性はほぼ否定された一方で、PPARの関与を示す結果が得られたことから、課題は残るものの作用機序を解明するという目的の一端は達成できたと考えた。また次年度に実施予定の実験動物を用いる塗布試験に関しても、学内の手続きや検討の準備は順当に進んでいるため、研究は概ね順調にしていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
TLR10はマウスでは偽遺伝子となっているため発現しないということもあり、他のTLRと比較して研究が進んでおらず、その免疫応答における役割についても炎症・抗炎症の観点から関係があるとする報告が成されている状況である。本研究ではヒトTLR10ノックインマウス(C57BL/6-Tg(TLR10)5-1Tapp/J)を用いた塗布試験の実施に向けて準備を進めている。その際に炎症状態の違いがTLR10に関係したものであることを明確にするため、比較対象として親系統であるC57BL/6マウスに対する同等の処理を行った試験区を設け、比較検証を行う予定である。 当初からの研究計画の大筋に変更はなく、TLR10ノックインマウスは購入後に繁殖によって必要数を確保する計画である。対象となるC57BL/6は、ノックインマウスが実験実施に必要な数を確保できる見込みがたった段階で上記群の性別週齢に合わせて購入予定である。 マウスに対する処置として、塗布する遊離型脂肪酸はエタノールに溶解させ、これをマウス背中部の毛を刈った部位に連続した3日間で計3回塗布する。4日目に同部位に市販TLR2リガンドであるPam2CSK4を1回皮下注射して炎症を誘導し、生じる炎症状態について観察を行とともに、対象部位の炎症の指標となる遺伝子発現解析を行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)