牛伝染性リンパ腫ウイルスの感染評価系の構築とエンベロープ多様性の解析
Project/Area Number |
21K05943
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小林 朋子 東京農業大学, 農学部, 准教授 (30647277)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 牛伝染性リンパ腫ウイルス / 牛伝染性リンパ腫 / Bovine leukemia virus / エンベロープ / 感染機構 |
Outline of Research at the Start |
ウイルスエンベロープと細胞受容体との結合は、感染の最初のステップであり、この過程を阻害することはウイルス感染症を防ぐうえで最も有効な戦略となりうる。Bovine leukemia virus (BLV)に関して、この最初のステップを高感度にアッセイする実験系がいまだ確立されていないことは、BLVの感染機構を解明する上で大きな障壁となっている。 本研究では、BLV感染を定量的に評価できる実験系を構築する。この実験系を利用することにより、細胞への結合から侵入という感染の最初のステップの分子機構解明に寄与するだけではなく、そのステップを阻害するような薬剤のスクリーニングや、将来的に感染予防ワクチンの評価などに応用できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
牛伝染性リンパ腫ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)のエンベロープ配列は、BLVゲノム中で最も多様性に富むことから、遺伝子型の分類に使われており、これまでに11種類の遺伝子型が報告されている。この中で、最も世界に蔓延している遺伝子型は1型であり、最も家畜牛に効率よく感染するようなエンベロープ配列をもつ可能性がある。しかしながら、エンベロープ配列の違いが本当に感染性に影響しているかどうかについては、不明のままである。ウイルスタンパク質の機能は、プラスミドにクローニングしたウイルスゲノム配列に機能喪失変異や、機能付加変異を導入し、変異ウイルス粒子を作製し、その影響を定量することにより評価することができる。BLVゲノムを発現するプラスミドはいくつか報告されているが、ウイルス感染の初期段階を簡便かつ定量的に解析できる実験系はほとんど確立されていない。 本研究では、感染性を定量可能なBLV感染性分子クローンの作製を目指し、蛍光タンパク質をレポーターとするBLV感染性分子クローンを作製し、培養細胞(293細胞)に形質導入した。そして、感染を定量化するために、フローサイトメーターにより蛍光タンパク質の発現を定量した。また、効率的なレポーターウイルス産生を実現するために、BLV粒子を恒常的に放出する羊腎由来株化細胞(FLK-BLV細胞)において発現しているMyc遺伝子およびRASA2遺伝子について、レンチウイルスベクターを用いて恒常発現細胞株の作製を行った。そして、BLV感染性分子クローンを形質導入し、感染性粒子の定量を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染性を定量可能なBLV感染性分子クローンの作製実験において、BLV発現プラスミドのGAG遺伝子の5'側あるいは3'側にレポータータンパク質であるGFPをコードする遺伝子配列を挿入しGFP発現を感染指標とするBLV発現プラスミドを用いたレポーターウイルスを作製した。このプラスミドを培養細胞(293細胞)に形質導入し、培養上清中のレポーターウイルス粒子を定量するために、上清を添加した293細胞について、フローサイトメーターにより蛍光タンパク質(GFP)発現細胞の検出を行った。その結果、GAG遺伝子の5'側および3'側のどちらにGFPをコードする遺伝子配列を挿入しても、GFP発現細胞は検出されなかった。上清中のウイルスRNAを検出した結果、GFPの導入によりウイルス粒子産生が阻害され、感染性ウイルス粒子が産生されないことを見出した。そこで、従来法をさらに発展させ、GFPよりも分子量の小さなテトラシステインタグを導入した感染性分子クローンの設計を行い、プラスミドの構築を行った。 効率的なBLV粒子産生実験については、作製したMyc遺伝子およびRASA2遺伝子恒常発現細胞を用いて、BLV感染性分子クローンからのウイルス粒子産生量を定量した。その結果、Myc遺伝子およびRASA2遺伝子恒常発現細胞では一過性発現の場合と比較しこれらの遺伝子の発現量が低く、感染性粒子の放出促進はほとんどみられないことが分かった。一方、FLK-BLV細胞におけるウイルス遺伝子発現を解析した結果、BLVのコードするアンチセンス転写産物であるAS1が活発に転写されていることが新たに分かり、この細胞株において見出された3‘欠損がAS1の発現量に影響を与え、効率的なウイルス粒子産生がみられる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
感染性を定量可能なBLV感染性分子クローンの作製実験において、テトラシステインタグを導入した感染性分子クローンを293細胞に形質転換し、上清中に放出されたウイルス粒子の感染性を、フローサイトメーターにより定量する。また、テトラシステインタグを付加した様々な遺伝子型のエンベロープを発現するBLV感染性分子クローンを作製し、各遺伝子型ごとの感染性を定量的に評価する実験系についても確立を行う。 効率的なBLV粒子産生実験においては、ウイルス産生細胞におけるAS1発現がウイルス粒子の産生放出に影響を与える能性について検証を行う予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)