Project/Area Number |
21K05968
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42030:Animal life science-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林田 京子 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 助教 (40615514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 亮 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (50633955)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | タイレリア / ピロプラズマ / マダニ / 共感染 / RNAseq / 小型ピロプラズマ / コンピテンシー |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は牛に大きな被害をもたらしているタイレリアオリエンタリス原虫を媒介するマダニの体内での免疫応答を解析し、媒介に関わる分子機構を明らかにすることである。牛血液置換マウスと実験室継代マダニを感染実験モデルとして使用し、マダニ中腸における遺伝子発現解析を行う。また、野外マダニの原虫叢を解析し、タイレリアとの相互作用を検証する。これらを通して、原虫感染成立に関わるマダニ分子機構を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
牛の小型ピロプラズマ症は本邦家畜牛に広く蔓延し大きな経済的被害をもたらしている。マダニへの原虫感染成立機序の理解はその防除につながり重要である。しかしながら病原性原虫であるタイレリアオリエンタリスがいかにしてマダニの免疫バリアを突破しているのかについての動態の詳細は全く明らかではない。そこで本研究では、免疫不全マウスタイレリア感染モデルを用いて、マダニの原虫感染時の遺伝子発現パターンを解析することを主な目的にした。さらに、複数の原虫が同時にマダニに感染することがタイレリア感染に何らかの干渉現象を及ぼしているという仮定のもと、野外マダニ個体内における原虫の共感染実態を明らかすることを目的にした。1年目で野外感染牛よりタイレリア原虫を分離し、マウスーマダニ感染実験系を確立し、実験の準備が整った。本年度は実験室継代フタトゲチマダニ幼ダニをタイレリア感染免疫不全マウスに吸血させ、感染マダニ唾液腺、感染マダニ中腸, 非感染マダニ唾液腺, 非感染マダニ中腸の4群の検体を準備した。これら一匹ごとの検体から微量RNAを抽出し、原虫感染の有無をリアルタイムPCRを用いて検出したのち、微量RNA増幅システムを用いて次世代シーケンスライブラリーを作成した。RNAseqは外注で行い、現在解析中である。一方、引き続きタイレリア汚染牧野の野外マダニの採取も行いDNAを抽出後、汎ピロプラズマプライマーを用いて増幅後、次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンスを行った。結果、多数のピロプラズマおよびその近縁種が同一マダニに混合感染している実態が明らかになった。1年度目に検出した、人への感染の可能性があるColpodella属原虫が再度検出され、新興感染症の原因となりうるマダニ媒介性原虫の北海道における存在がさらに裏付けられる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はタイレリアの感染・非感染のマダニ個体を準備し発現変動遺伝子を同定することを主目的として準備を進め、目的とする感染マダニ個体の一個体臓器由来の微量RNAからライブラリーの構築に成功、RNAseqデータを得ることに成功したことから、第一目標は達成されたと判断した。一方で、タイレリアと共感染する原虫を野外牧野マダニを用いて明らかにすることで、相関分析を行い、感染への干渉を引き起こす可能性のある原虫の類推と分離も目的としていた。しかし、牧野における牛が100%タイレリアに感染しているにも関わらず、検査した260個体中タイレリアオリエンタリスの感染マダニが0個体であったことから干渉現象の解析が困難であったことは予想外の結果であった。一方で、Babesiaやその他近縁種の検出ができたこと、特に中国で患者の発生している新興マダニ媒介性感染症であるColpodella属が検出、その配列も患者由来のそれとほぼ一致したことは想定外の重要な発見であり、最終年度も引き続き本原虫について探索を行う予定にしている。総じて、研究は順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2テーマに分けて研究を進める 1. マダニとタイレリア原虫の総トランスクリプトーム解析 これまでに牛血液置換免疫不全マウスと実験室マダニを用いて、感染・非感染マダニの中腸・唾液腺検体のRNA調整と次世代シーケンス解析、配列の取得までを完了している。実験に用いた無性生殖系のフタトゲチマダニの全ゲノム配列が、公開された両性生殖系のフタトゲチマダニの配列と相当異なるという知見が得られつつあり、得られた配列と公開配列で問題なく解析が行えるかどうかの検討を行う必要が生じている。しかしながら共同研究者らが現在、実験に用いたマダニコロニーと全く同一のシーケンス解析を進めており、多くの配列データが得られつつある。これらデータを有効活用し、原虫とマダニの宿主ー感染体双方の遺伝子発現の解析を進めていきクロストークの考察を行いたい。優位に発現が誘導される免疫関連遺伝子が同定された場合には、RNA干渉法を用いたマダニ遺伝子ノックダウンにより、タイレリア感染に及ぼす影響について解析を行う予定である。
2. 北海道野外マダニにおけるタイレリアの共感染実態の解明、および新興感染症である可能性のあるコルポデラの調査 引き続き高度なタイレリア汚染牧野としてモデルにしている農場のマダニ検体の採取と、タイレリア・バベシアを含むピロプラズム叢の網羅的シーケンスによる解析を継続して行う。また、2年度連続して検出されたコルポデラ原虫については、より高い感度で検出するプライマーを開発し、マダニとその牧野内の牛血液からの検出を試みる。
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