トリプトファンプレニル基転移酵素のペプチド基質認識と反応機構の構造学的解明
Project/Area Number |
21K06051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43020:Structural biochemistry-related
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浜田 恵輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00344052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙石 徹 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (60576312)
緒方 一博 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (90260330)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | プレニル基転移酵素 / 酵素反応機構 / 酵素基質特異性 / X線結晶構造解析 / ペプチド創薬 / 基質特異性 |
Outline of Research at the Start |
ペプチドは医薬品リード化合物として高い利用価値を秘めているが、一般に膜透過性や生体内での安定性が低いという欠点を持つ。一方、天然由来のペプチドには、プレニル化などの翻訳後修飾により、高い膜透過性を持つものが存在する。特に、トリプトファンのインドール環のプレニル化は、ペプチドの膜透過性に加えてプロテアーゼ耐性などの向上に寄与することが想定される。本研究では、ペプチドを基質とするトリプトファンプレニル基転移酵素の結晶構造解析を行い、生化学実験と分子動力学解析をあわせて、その基質特異性と反応機構を解明する。研究成果は、膜透過性などの体内動態に優れた次世代の特殊ペプチド取得技術の開発に有用である。
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Outline of Annual Research Achievements |
ペプチド創薬においてペプチドの膜透過性やプロテアーゼ耐性をいかに付与するかが課題となっている。プレニル基転移酵素によるペプチドのプレニル化はその解決法の一つに挙げられる。しかし、酵素の基質認識機構や反応機構の理解が十分進んでいないため、リード化合物検索に用いるプレニル化ペプチドライブラリーの構築に対する妨げになっている。 微生物由来の酵素KgpFや酵素X(未発表のため仮名とする)はペプチド中のトリプトファンを基質とし、膜透過性向上が期待されるプレニル化ピロロインドリンを生成する。興味深いことに、これらの酵素は互いに異なる基質選択性をもち、立体化学的に異なる生成物を作り分ける。本研究では、分子構造解析により両酵素の基質特異性、反応機構を解明する。これらの知見は効率的なライブラリーのデザインを可能にし、また酵素の合理的改変を通じて多様性に富んだ次世代ライブラリーを構築するための基盤を与える。 本研究では、トリプトファンプレニル基転移酵素であるKgpF (および酵素X)による基質認識の構造基盤を明らかにすることを目的として、酵素-プレニル基供与体アナログ(ジメチルアリルチオ二リン酸、DMASPP)-基質ペプチド複合体のX線結晶構造解析を推進した。 これまでに酵素Xにおいては、5残基からなる活性上最適な基質ペプチドを用いて、酵素X-DMASPP-基質ペプチド複合体の結晶化に成功し、X線結晶構造解析を1.5Å分解能で行った。その結果、基質ペプチドのトリプトファンインドール環のNH基は酵素活性部位内の触媒に必須なグルタミン酸残基と水素結合を形成し認識されていた。また、このインドール環は、類縁酵素間で保存性が低い複数の残基とのファンデルワールス接触により特異的に認識されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、基質ペプチドのトリプトファンを特異的にプレニル化する酵素KgpF、および新規酵素Xに着目して、その基質認識機構、触媒機構を明らかにすることを目的とする。 現在までに、KgpF、および酵素Xを用いて、酵素-DMASPP-基質ペプチド複合体のX線結晶構造解析を推進した。酵素Xにおいては、5残基からなる活性上最適な基質ペプチドを用いて、酵素X-DMASPP-基質ペプチド複合体の結晶化に成功し、X線結晶構造解析を1.5Å分解能で行った。その結果、酵素Xによる基質認識機構を明確にすることができた。 一方、KgpFにおいては、基質として許容されるペプチド配列の条件は絞り込まれており、基質ペプチドのトリプトファンの一つ前のアミノ酸が最も修飾効率に影響することを生化学的解析により明らかにしている。この結果を基に、KgpFとの共結晶化用に複数種類のペプチドを合成した(後藤)。現在、結晶化条件の探索を進めているが、未だ目的の三者複合体の結晶は得られていない。我々は準備段階として、基質ペプチドを欠いたKgpF-DMASPP二者複合体の分子構造を1.9Å分解能で決定しているので、目的の結晶が得られれば、分子置換法により迅速に構造決定できると予想される。 さらに、我々はトリプトファンプレニル基転移酵素の研究に並行して、新規酵素であるヒスチジンプレニル基転移酵素LimFを同定するとともに、プレニル基供与体アナログ(ゲラニルチオ二リン酸、GSPP)と基質ペプチドとの複合体のX線結晶構造解析に成功し、酵素の基質特異性および基質認識機構を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)酵素-プレニル基供与体アナログ-基質ペプチド複合体の構造解析 上記のKgpFに特化した合成ペプチドを用いて、KgpF-DMASPP-ペプチド複合体の共結晶化条件の探索を進める。共結晶が析出しなかった場合、高濃度のペプチドを含む母液に結晶をソーキングさせて構造解析を試みる。また、KgpFのC末端にこのペプチドを融合させた変異体を作製し、分子内会合によってKgpFの活性部位にペプチドが結合することを期待して結晶化を試す。 2)各種変異体の機能解析 KgpFと酵素Xの分子構造から触媒基や基質ペプチドの認識に関わるアミノ酸の変異体を作製する。これら各種変異体の活性測定をLC/MSを用いて行い、各アミノ酸の活性への影響を調べる。また、酵素反応速度論の解析(Km, Kcatの算出)は反応に伴うピロリン酸の経時変化を追跡することで可能である。酵素反応速度論の解析を市販の測定キット(Enzcheckなど)を用いて行う。さらに、酵素と基質ペプチド間の親和性測定は表面プラズモン共鳴法やマイクロスケール熱泳動法を用いて行う。これらの機能解析から基質特異性や反応機構を明らかにする。 3)分子動力学シミュレーション KgpFと酵素Xでは基質ペプチド中のトリプトファンの一つ前のアミノ酸が修飾効率に大きく影響するが、それに加えて、トリプトファンの一つ後ろにはプロリンを好まない。トリプトファン前後に存在するアミノ酸が酵素-基質複合体の安定性に与える影響を分子動力学的シミュレーションにより検討する。ペプチド配列を改変させたモデル構造を用いて、短時間(100-1000ナノ秒)での構造的ゆらぎや結合自由エネルギーを計算する。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)