Elucidation of protein molecular basis in the information transmission mechanism of magnetoreception
Project/Area Number |
21K06093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43030:Functional biochemistry-related
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
新井 栄揮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (00391269)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | タンパク質 / 磁覚 / 熱安定性 / リアルタイムPCR / 立体構造 / X線小角散乱 / 蛋白質 / 相互作用 |
Outline of Research at the Start |
多くの生物は磁気を認識する感覚(磁覚)を有する。網膜細胞に存在する蛋白質クリプトクロム(CRY)が磁気を検出しうることが知られるが、磁気情報をCRYから神経系に伝達する物質(CRY-R)は同定されておらず、磁気情報を知覚化する機構は解明されていない。本研究では分光学的・熱力学的手法等を駆使してCRY-Rを同定し、その構造・物性・CRYとの相互作用様式などを明らかにし、磁気情報伝達機構の解明に挑む。得られる知見は、磁場による生物影響の量子論~分子論的解明や、磁場を介して細胞内外での分子挙動・機能を制御できるCRY/CRY-R融合蛋白質開発など、量子生命科学分野の開拓や新奇的技術開発などに資する。
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Outline of Annual Research Achievements |
磁場の方位や強さを知覚する感覚である「磁覚」は、鳥類を始めとする多くの動物の行動(渡り・帰巣・採餌・繁殖等) に利用されている。近年の研究では、網膜細胞上の蛋白質クリプトクロム(CRY)が青色光受容時に量子磁気センサーとして機能しうることが明らかにされつつある。しかし、CRYと相互作用して磁場情報を神経系に伝達するCRY受容体、もしくは、CRYの磁場感受機能を補助するCRY受容体は特定されていない。本研究では、複数のCRY受容体候補蛋白質を調製し、磁場感受機能発揮時のCRYを認識するCRY受容体の特定を目指す。 2022年度は、2021年度に作製に成功したヨーロッパコマドリ由来erCRY4とerCRY4受容体候補の一種である電位依存性カリウムチャンネルサブファミリーV細胞内ドメイン2(erKCNV2-2)の相互作用を精査した。リアルタイムPCRの技術を応用し、青色光照射下における①erCRY4単独、②erKCNV2-2単独、③erCRY4/erKCNV2-2混合液の熱安定性を評価した結果、③の熱転移温度は①よりも2℃程度、②よりも5℃程度、それぞれ上昇していた。この熱安定性の向上から、erCRY4とerKCNV2-2が青色光照射時に相互作用することが示唆された。一方、カワラバト由来clCRY4と相互作用することが明らかにされている鉄硫黄クラスター輸送蛋白質clISCA1は、erCRY4と混合しても熱転移温度の変化は0.3℃程度であった。この結果から、CRY4とISCA1は生物種を超えた交差反応を生じない可能性や、生物種によってCRY4受容体の種類が異なる可能性も明らかになった。更に、erCRY4とerKCNV2-2が相互作用することでerCRY4が多量体化する可能性を示すX線小角散乱(SAXS)の実験結果が得られており、現在詳細を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の所属機関の改組により、研究拠点の移転作業や、遺伝子組換え生物等の移動・保管・実験再開等に関わる手続き等のために、実験を実施できない期間が半年間ほど生じた。そのため、CRY受容体候補蛋白質の調製作業が遅延し、一部の蛋白質調製プロトコルの確立が停滞した。また、使用を予定していた実験機器(円偏光二色性測定装置、電子スピン共鳴測定装置等)に不具合が多発しており、修理・復旧に時間を要している。 その一方で、申請者らは、前述のclISCA1が磁場印加により柱状多量体化・自己組織化する極めて珍しい現象を発見している。2022年度は、この知見に基づいたハトの磁覚の機構の仮説を提唱し、論文発表・プレスリリース・講演会開催・国際会議発表など多数の成果発表を行うことができた(Protein Sci. 2022, 31, e4313など)。更に、その成果は複数のメディアに掲載された(日経サイエンス、日刊工業新聞など)。これらの状況を総合的に鑑みて、申請者が関わる磁覚研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に実施が困難であった電位依存性カリウムチャンネルサブファミリーV細胞内ドメイン1 (KCNV2-1)、G蛋白質α2サブユニット (GNAT2)、G蛋白質γ10サブユニット (GBG10)、レチナール結合蛋白質 (RBP1)、グルタミン酸受容体相互作用蛋白質 (GRIP2)などのerCRY4受容体候補蛋白質の発現・調製系の構築を行う。これらのerCRY4受容体候補蛋白質とerCRY4との相互作用をリアルタイムPCR・等温滴定熱量測定(ITC)・SAXS等の手法により明らかにして、CRY4受容体の最有力候補の特定を目指す。 また、2021年度に実施した研究により、青色光照射時にerCRY4の立体構造が変化することが明らかになったことから、2023年度はこの構造変化の特徴を中性子小角散乱(SANS)等により精査する。SANSはSAXSよりも多量の試料(ml程度)を必要とするが、SAXSで利用するX線(15.5~1.59 keV程度)と比較して極めて低エネルギー(eV換算で5~6桁程度低い)の中性子線を利用するため、erCRY4の磁場センサー機能への人為的影響(ビーム照射に伴う電子励起・ラジカル生成・放射線損傷等)をほぼ完全に排除してerCRY4の溶液構造を正確に調べることができると期待される。これらの検討により、CRYに関する磁覚研究の将来的な展開のための指針を得る。
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Report
(2 results)
Research Products
(14 results)