成長と増殖を司るTORC1のタンパク質分解システムを介した活性制御機構の解明
Project/Area Number |
21K06170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44010:Cell biology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荒木 保弘 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教 (60345254)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | TORC1 / Pib2経路 / 酵母 / アミノ酸 / システイン / 細胞成長 / 細胞増殖 / リン酸化修飾 / ユビキチン / プロテアソーム / リン酸化酵素 / ユビキチンプロテアソーム系 / 成長と増殖 |
Outline of Research at the Start |
リン酸化酵素TORC1は栄養源に応じた増殖と成長を司る。栄養源依存的なTORC1 の活性化に既知のGtr/Ego経路とは独立かつ並列に機能する新規TORC1活性化経路にPib2が介在することを見出した。しかしPib2経路の活性制御についての知見は皆無である。本研究ではPib2経路の活性はユビキチン化とプロテアソーム を介した分解により負に制御されることの証明、飢餓によるPib2分解誘導の分子機構を解明する。更に酵母の制御機構の知見を用いて、Pib2の哺乳類オーソローグの同定を試みる。これらにより、“20種の アミノ酸がどのようにTORC1を活性化するのか”という最大の問題に挑む。
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Outline of Annual Research Achievements |
細胞は栄養源を感知して、細胞の増殖と成長を厳密に制御している。この情報はTORC1に集約され、このリン酸化酵素活性のオンオフに転換される。TORC1は多岐にわたる栄養源の中でもアミノ酸に対してよく反応する。細胞が20種ものアミノ酸をどのように認識し、TORC1を活性化するかは最大の未解決問題である。酵母を用いた遺伝学的解析から申請者は新規TORC1活性化経路としてPib2経路を見出し、既知のGtr/Ego経路及び新規Pib2経路の二経路のみがTORC1活性化経路として機能することを報告してきた。本研究課題ではこれまでに20種のアミノ酸それぞれがGtr経路とPib2経路のどちらを介してTORC1を活性化するのかを検証し、二つの経路は応答するアミノ酸に違いがあることが明らかにしている。この成果をもとに今年度は新規Pib2経路の分子機序の解明を目的に以下の三点を明らかにした。第一にPib2経路のみを経由するアミノ酸であるシステインを添加するとTORC1-Pib2間の相互作用がin vivoとin vitroの両者で亢進しTORC1を活性化すること、第二にシステインに呼応するTORC1-Pib2間相互作用の亢進には既知のTORC1結合領域に加えて新規な高保存領域が必要であること、第三にPib2がアイソトープで標識したシステインへ直接結合することを見出した。これらはPib2がシステインを直接感知し、TORC1へその存在を伝えるシステインセンサーであることを強く示唆する。アミノ酸センサーは哺乳細胞において少数のアミノ酸について先駆的研究がなされているが、これらは種間で保存されておらず、酵母においてアミノ酸センサーの知見は皆無である。本研究により、TORC1活性化の分子機構、特に多様なアミノ酸センシング機構の理解が種を超えて大きく進むものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞の成長と増殖を司るTORC1はアミノ酸により自身の持つリン酸化酵素活性を活性化する。TORC1の活性化経路としてGtr/Ego経路及びPib2経路の二経路が見出されている。更にTORC1活性化経路はGtr/Ego経路とPib2経路の二経路しか存在しないことから、全てのアミノ酸はこの二経路を経由していると考えられる。Pib2経路の活性制御の解明は“アミノ酸がどのようにTORC1を活性化するのか”という最も重要な課題に通じると考える。申請者は、SCF-Das1ユビキチンライゲースがPib2経路を正に制御する因子を分解し、Pib2経路をネガティブに制御しているという新たな仮説に基づき、Pib2経路に強く依存するシステインを用い、SCF-Das1の標的因子の探索を行った。その過程で精製標品を用いた試験管内TORC1-Pib2間相互作用の再構成実験においてシステインの添加が増強することを見出し、さらにTORC1構成因子またはPib2がシステインと直接結合する可能性を検証した。その結果、Pib2がシステインへ直接結合することが判明した。以上からPib2がシステインを直接感知し、TORC1へその存在を伝えるシステインセンサーであるという新たな仮説に至った。アミノ酸センサーは哺乳細胞において少数のアミノ酸について先駆的研究がなされているが、これらは種間で保存されておらず、酵母においてアミノ酸センサーの知見は皆無である。本研究により、TORC1活性化の分子機構、特に多様なアミノ酸センシング機構の理解が種を超えて大きく進むものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
SCF-Das1ユビキチンライゲースを中心に据え、その標的因子からアミノ酸センサーを同定することを当初の目的としていた。しかしPib2がアミノ酸センサーであることを強く示唆する今年度の成果をもとに以下の点を明らかにする。① Pib2はどのようにシステインを認識するのか。② Pib2はシステイン以外のアミノ酸も認識できるのか。① Pib2がアイソトープで標識したシステインへ直接結合することに加え、システインに呼応するTORC1-Pib2間相互作用の亢進には既知のTORC1結合領域と機能未知な高保存領域が必要であることを見出している。Pib2のシステイン結合様式の詳細を明らかにすることを目的に、各残基をアラニンに変換した変異体を用い、システイン結合能への影響を検証する。これにより、システインの認識に必要な残基を同定し、さらにこの変異体を有する酵母変異株がシステインに呼応しないことを確認する。② 20種のアミノ酸がGtr経路に強く依存する9種、Pib2経路に強く依存する6種(Pib2経路特異的アミノ酸)、両方の経路が関与する5種の3つに分類されることを明らかにしている。Pib2がシステイン以外の5種のPib2経路特異的アミノ酸を直接認識できるのかを検証する。試験管内結合実験に使用していたアイソトープ標識のアミノ酸が非常に高価であることから、安価でより検出感度の高い等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いる。装置自身は高価であるので購入せずに大阪大学理学部にて稼働している共同利用ITCを使用する。これまで哺乳細胞において単離されたアミノ酸センサーは全て一つのアミノ酸しか認識できず、アミノ酸とセンサーは一対一対応しているというドグマが流布している。Pib2が複数のアミノ酸を認識すれば、このドグマを一変する知見となりうる。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)