Project/Area Number |
21K06182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
弥益 恭 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60230439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 佐知子 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80736786)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 脳発生 / 中脳後脳境界 / 峡部 / gbxホメオボックス遺伝子 / 発生遺伝学 / 転写制御機構 / 変異体作製 / 発生運命追跡 / 脳形成 / 峡部オーガナイザー / ゼブラフィッシュ / gbx遺伝子 / 転写制御 |
Outline of Research at the Start |
脊椎動物胚での中脳と小脳の形成においてはその境界領域(峡部)が制御因子の分泌センターとして働く。本研究では、峡部の発生に重要とされるgbx遺伝子(gbx1とgbx2)の役割と発現制御について、小型魚ゼブラフィッシュを用いた発生遺伝学により総合的理解をめざす。まず、各gbxについて、ゲノム編集技術により様々な遺伝子破壊を行い、gbxの機能検討を行う。また、各gbx発現細胞を蛍光標識し、これらの細胞の動態を解析するとともに、標識細胞を精製して発現遺伝子全体像を網羅的に解析し、さらにgbx細胞群の動態と発生運命を明らかにする。また、gbx1およびgbx2の転写制御について明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
・脊椎動物の発生において、中脳後脳境界(MHB)は中脳および小脳のパターン形成を制御する重要なシグナル分泌センターである。本研究では、MHB形成に関わるgbx遺伝子の機能と発現制御機構について、ゼブラフィッシュを用いて発生遺伝学研究を進めている。 ・令和5年度は、以前にCRISPR/Cas9法により作製したgbx1全遺伝子欠失変異(gbx1dFD)の胚において、峡部の形態とMHBマーカーの発現を検討した。予想通りにgbx1の発現は完全に消失していたが、ほかに明確な異常は見られておらず、現在さらに脳形成について表現型解析を進めている。 ・gbx1から上流遺伝子(asb10)までの全上流領域(5.5 kb)を欠失させた変異体胚(gbx1dUS)では体節形成期後脳でのgbx1の発現が全域で消失すること、後脳での神経分化が異常となることをすでに観察している。そこで、体節形成期の後脳におけるgbx1の役割を知ることを目的として、gbx1dUS胚と野生型胚各々から全RNAを抽出し、これらを用いてgbx1dUS胚での発現変動をRNA-Seqで網羅的に検討し、多様な遺伝子について発現異常を見出した。現在これらの遺伝子発現異常について、WISHおよびqRT-PCRにより確認を進めている。 ・種間の大規模ゲノム配列比較の結果、gbx1の下流2カ所に哺乳類以外の脊椎動物で保存された配列を見出し(DCS1/DCS2)、これらが原腸胚後方神経板で転写活性化能を持つことを、胚を用いたEGFPレポーター解析で確認した。これら各々の胚発生での役割を検討するため、CRISPR/Cas9法により欠失を行い、系統化を進めている。また、DCS1がgbx1下流のみならず、羊膜類gbx2の下流にも存在することを見いだしており、現在ニワトリ胚でのgbx1の発現解析に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・これまで、gbx1全遺伝子欠失変異体についての表現型解析をMHBの決定と峡部形成に関連して進めてきており、その意味では順調である。ただしこれまでMHB・峡部では明らかな発生異常が見られておらず、異なる発生時期、異なる多様なマーカー遺伝子を用いた検討が必要である。gbx1はゼブラフィッシュとマウスで体節形成期の後脳各菱脳節で発現しており、この時期でのgbx1の役割について、神経発生などに注目したさらなる表現型の検討が必要であろう。 ・体節形成期での後脳形成におけるgbx1の役割を知るため、野生型胚および全上流欠失変異体胚(gbx1dUS)でトランスクリプトーム解析を実施した。今後、得られた網羅的発現解析の結果を利用することで、これまで未知だった体節形成期でのgbx1の機能について、全容の解明に貢献できると期待される。 ・gbx1の上流5.5 kb領域が体節形成期における後脳での発現に必要であることは判明しており、その内部での調節エレメントの特定を予定していたが、技術的問題によりやや遅れ気味といえる。今後、上流DNAをPCRで効率的に増幅し、得られた増幅DNAを用いて必要なレポーターコンストラクト(EGFP/Luciferaseレポーター)を作製し、胚レベル、培養細胞系でのレポーター解析を行う予定であり、その準備を進めた。 ・gbx1の原腸形成期後方神経板での発現はMHBの決定に関わる点で重要であり、この発現制御に下流保存配列(DCS1/DCS2)に関わることがすでに胚におけるレポーター解析で示唆されたが、これらの保存配列がgbx1の内在発現に必要かについては不明である。今年度、これらの保存配列の胚ゲノムにおける欠失には成功しており、これら欠失変異体の系統化を完成させることで、各保存配列が実際にMHB決定に関わるかの確認が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
・gbx1全遺伝子欠失変異体については、引きつづき峡部発生への影響について、異なる発生時期、異なる多様なマーカー遺伝子を用いて表現型の検討を進める。また、gbx1変異体にgbx2変異を導入することでもgbx遺伝子の役割を検討する。さらに、2つのgbx遺伝子の中でgbx1のみで体節形成期後脳で発現することに注目し、この時期でのgbx1の役割について、神経発生遺伝子(プロニューラル遺伝子、神経分化遺伝子など)の発現などの表現型解析を進める。 ・体節形成期での後脳形成におけるgbx1の役割を知るため、この時期の上流欠失変異体胚(gbx1dUS)での発現変動をトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析で既に検討しており、今後、得られた解析結果を参考に体節形成期でのgbx1の機能に関わると予想される遺伝子群を特定し、各遺伝子について、qRT-PCRやWISHで変異体胚での実際の発現を確認する。また、これらの遺伝子の後脳発生での役割について、強制発現やノックダウンなどで検証を行う。 ・gbx1の上流5.5 kb領域による体節形成期後脳での発現制御に関し、その内部での調節エレメントの特定を進める。すでに上流DNAのクローニングを進めており、これらのDNAを用いて必要なレポーターコンストラクトを作製した上、胚レベル、培養細胞系でレポーター解析を行うことを計画している。 ・gbx1の原腸形成期後方神経板での発現に関わることが示唆された下流保存配列(DCS1/DCS2)の役割の検討を進める。具体的には、これらの保存配列の欠失変異体の系統化を完成させ、得られた変異体胚でのgbxの発現を検討することでMHB決定に関わるかを確認し、レポーター解析により後方神経板特異的転写制御領域の特定を行う。これにより、ゼブラフィッシュ胚でのMHB決定機構の検討をさらに進める。
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