神経活動マーカー分子の免疫染色によるカマキリ運動調節の神経回路の解明
Project/Area Number |
21K06269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山脇 兆史 九州大学, 理学研究院, 講師 (80325498)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 運動制御 / 目標指向型運動 / 昆虫 / 胸部神経節 / カマキリ |
Outline of Research at the Start |
カマキリの捕獲行動のように目標にあわせて動きを調節する運動は、繰り返し運動を再現することが容易でないため、その神経回路の解明はほとんど進んでいない。そこで本研究では、カマキリの前肢運動を電気刺激で引き起こし、神経活動によって濃度が上昇する分子を免疫染色することにより、運動調節に関与するニューロン群の同定を試みる。また、前肢運動中の筋活動や外骨格の変形を観察することで、筋収縮や弾性力が運動調節において果たす役割を調べる。本研究課題の遂行により、運動制御における昆虫独自の巧妙な仕組みの発見が期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
昆虫では外骨格や筋肉の弾性が運動に大きな影響をあたえるため、脊椎動物とは異なる独自の運動制御の仕組みを持つ可能性がある。昆虫の運動制御の研究は飛翔や歩行などの反復運動において盛んに行われており、その神経回路が明らかになりつつある。一方、カマキリの捕獲行動のような、目標にあわせて動きを調節する運動は、繰り返し運動を再現することが容易でないため神経回路の解明はほとんど進んでいない。そこで本研究では、カマキリ神経系への電気刺激により異なる大きさの前肢運動を誘発し、運動中に興奮したニューロン群を神経活動マーカー分子への抗体を使って免疫染色することで、前肢運動の調節に関与する神経回路の同定を目指した。 前年度の研究により、前肢運動を誘発するには前胸神経節に接続する縦連合への電気刺激が有効であることがわかった。しかし、複数の関節運動が同時に起こるため解析が複雑になるという欠点があった。そこで、前胸神経節から前肢筋肉系に向かって伸びる神経への電気刺激を試したところ、単関節の前肢運動を引き起こすことができた。さらに、刺激部位を調整することで関節運動の方向(屈曲もしくは伸展)を操作することができた。 また前年度の研究において、神経活動マーカー分子であるpERKに対する抗体を用いた免疫染色によって、電気刺激で興奮したと想定される運動ニューロンの細胞体が観察できた。しかし、このpERKシグナルが実際に神経活動を反映するか否かは未確認であったため、薬理学的手法により神経興奮を促進または抑制したカマキリの前胸神経節においてpERKの免疫蛍光染色を行った。その結果、染色された細胞体の数が神経活動を抑制したものでは少なく、促進したものでは多くなった。このことから、前胸神経節においてpERKの局在は神経興奮を示すことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の電気刺激実験では、無処置で拘束したカマキリを使用していたため自発的な活動の影響を受けるという欠点もあった。そこで頭部と中胸以降を取り除いた前胸だけの試料を作成したうえで、拘束台や刺激部位などを工夫することで、単関節の前肢運動を引き起こし撮影する方法を確立できた。さらに、刺激部位を微調整することで関節運動の方向(屈曲もしくは伸展)を操作できたため、今後はより安定的に目標とする前肢運動を引き起こすことが可能となる。 薬理学的実験は今回初めて行ったので、神経興奮や抑制を効果的に引き起こす物質の選定や効果的な投与方法を模索した。抑制作用を持つ物質としてムシモールを、興奮作用をもつ物質としてピクロトキシンやカルバミルコリンを用いた。カマキリ前胸腹側を開いて神経節を露出した状態にし、これらの薬物の水溶液を滴下した後、カマキリの行動を観察した。その結果、ムシモールの投与後には不動状態になり、ピクロトキシンやカルバミルコリンの投与では脚の痙攣が観察されたことから、これらの薬物の効果が確認された。そこで、これらの薬理学的処理をしたカマキリ前胸神経節にpERK抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、染色された細胞体数がピクロトキシンやカルバミルコリンの投与群では多く、ムシモール投与群では少なかったことから、pERKシグナルが神経興奮の指標となることが確認できた。 以上の状況から、目標は概ね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法をほぼ確立できたため、観察データを増やしてより定量的な解析を行うことが目標となる。今後の研究でも、電気刺激により前肢運動を引き起こし、前胸神経節において活動したニューロンをpERK抗体による免疫染色で同定する実験を引き続き行う。まず、単関節運動を引き起こした試料と複数の関節運動を引き起こした試料の比較により、特定の関節運動に関わるニューロンの同定を行う。そして、電気刺激のパラメータを調節して単関節運動の大きさや方向(屈曲もしくは伸展)を変化させ、それらの運動パラメータとニューロンの集団活動の関連を解析する。それにより、異なる運動を生み出す際に運動ニューロンが動員される方式を明らかにし、前肢運動の調節機構の解明を目指す。 また、活動した運動ニューロンを識別するために、逆行性染色による運動ニューロンの同定を並行して進める。我々の研究室では以前にも逆行性染色による運動ニューロンの同定を行っているが、前胸神経節内部での位置の目印となるニューロパイル構造の配置がその当時は調べられていなかったため、異なる試料間の比較が難しい状態であった。そのため今回は運動ニューロンの逆行性染色とニューロパイルの染色を同時に行なって、ニューロパイル構造との相対配置を手がかりに運動ニューロンを同定する作業を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)