Project/Area Number |
21K06300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田城 文人 北海道大学, 総合博物館, 助教 (70737478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 生物多様性 / 分類学 / 広域分布 / 深海性魚類 / 形態学 / 分子系統学 / 生物地理 / ウナギ目 |
Outline of Research at the Start |
深海性魚類の種多様性や進化機構には多くの謎が残されている.ウナギ目ホラアナゴ科魚類は深海底に生息し,多くの種が『広域分布種(コスモポリタン)』と考えられてきた.一方,いくつかの種で広域分布性が疑問視され,本科全体の種多様性の過小評価も示唆されている.本研究では,日本周辺海域に分布するホラアナゴ科魚類を対象にして「分類学的再検討」と「分布特性の解明」に取り組み,得られた知見に基づき「本科種多様性の評価」を多角的な視野をもって実施する.これにより,ホラアナゴ科のみならず,深海底生性魚類の種多様性・進化に関する一つの定説の導きが期待される.
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Outline of Annual Research Achievements |
1.水深3,000 m付近に生息することで新規標本の入手目処がついていなかったソコアナゴ属ソコアナゴHistiobranchus bathybiusについて,研究協力者からの提供により日本産2個体の生鮮サンプルを入手することができた.これにより日本産既知全種のホラアナゴ科の遺伝(2種は隣接する台湾産個体のみ)・形態解析の実施に至り,1未記載種・1日本未記録種を含む計8属14種のホラアナゴ科魚類を認めた.これら14種は形態特徴に基づき容易に識別可能であり,本課題の達成目標の一つである『日本産本科魚類の確実な種の認識』が現時点で達成されたと判断される. 2.遺伝解析に基づきイラコアナゴSynaphobranchus kaupiiを全世界レベルで調査した結果,少なくとも日本産個体群はS. kaupiiのタイプ産地(北大西洋)の個体群とは異なる種であることが強く示唆された.そこで,日本産個体群に該当する学名の決定を目的として,候補となる名義種のタイプ標本の観察に着手した. 3.本科で最も種多様性が高いアサバホラアナゴ属について,一部の種のタイプ標本を観察したところ,原記載に重大な誤りがある種が複数見出された.それらは日本および周辺海域に分布する種ではないものの,帰属に誤りのある種も含まれる.属レベルの分類への影響に加え,属間での種多様性比較に影響を及ぼす可能性もあるため,それらの分類学的精査に着手した. 4.本課題主対象となるホラアナゴ科への補強を目的として,アナゴ科ギンアナゴ属を調査した結果,ギンアナゴGnathophis heterognathosで遺伝的変異を伴わない形態の地理的変異を認めた.この事象の要因として,変態・着底後に生活する海域の海洋環境に影響を受けて形態変異が生じることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度末に勤務施設の建て替えが決定し,2023年度はその計画と移転準備に多大な労力を注ぎ込むことになった.これにより,予定していた研究計画に大幅な遅れが生じた.さらに,新型コロナウイルスの影響が上半期も継続したことに加え,ウクライナ-ロシア間紛争の影響(タイプ標本等の観察のためにロシアの博物館訪問を計画)もあり,2023年度の海外渡航は全て延期せざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はウクライナ-ロシア間紛争の継続に加え,新たに急激な円高の影響が見込まれている.これにより当初計画していた海外渡航計画は大幅な見直しが求められる.海外渡航は主にタイプ標本観察を目的として計画していたため,一部の種は学名の決定に至らない可能性がある.一方,本課題の計画時も新型コロナウイルスの影響が先読みできない状況であったため,学名の決定は必須項目とはせず,暫定名も含めた柔軟な対応を取ることとしていた.今後は優先順位を設定して渡航先を決定する.なお,現時点では日本産イラコアナゴSynaphobranchus kaupiiの学名変更が示唆されており,本種はわが国で水産対象として漁獲・利用されている.以上から,イラコアナゴの学名決定は最重要事項に置いて取り組む. 2023年度までの成果によって日本産ホラアナゴ科の確実な種の認識が可能となった.今後は各種の分布特性の解明に向けた取り組みを本格的に推進する.
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