植食性昆虫の傷つけ摂食行動における適応的意義と進化史の解明
Project/Area Number |
21K06344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Tohoku University (2022-2023) Forest Research and Management Organization (2021) |
Principal Investigator |
小林 知里 東北大学, 農学研究科, 学術研究員 (70539519)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 植物加工行動 / 植食性昆虫 / 擬態 / マスカレード / シジミチョウ科 / 植物加工 / 適応的意義 / 進化過程 / 脈切り・溝切り |
Outline of Research at the Start |
植物を餌とする昆虫は、多様化・適応進化の過程で単に植物をそのまま摂食するだけではなく、摂食前に脈を切る・傷つけるなどの加工を行うようになり、広く様々な分類群で傷つけ摂食行動が確認されている。にも関わらず、その行動の理解は一部の乳液を持つ植物種への対抗策としてのみに止まっている。 そこで本研究では、野外観察・飼育実験・操作実験・分子実験などを組み合わせて、なぜ傷つけ摂食行動を行うのかについて、主に「擬態場所創出仮説」と「栄養価向上もしくは植物の被食防衛回避仮説」の検証を中心に、その多様な意義と植物を食べる昆虫の進化史を明らかにすることを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
まずはコミスジ幼虫の擬態行動の実態について、これまでのデータで不足していた夜間の行動記録を行った。インターバルカメラを設置し、夜間にコミスジ幼虫が摂食・静止・造巣のどの行動をどの程度行なっているかについて、3齢幼虫計3個体を対象にして5分に1回の割合で夜間の連続撮影を行った。その結果、コミスジ幼虫は日中同様に、夜間においても自ら切って吊るした枯れ葉近くの葉脈上で静止・吊るした枯れ葉への移動と摂食を繰り返しており、夜間の方が特に移動などの捕食者に目立つ行動が増加することは見られないことがわかった。すなわち、枯葉擬態すると考えられるコミスジ幼虫においては、捕食者に狙われやすい日中と狙われにくい夜間に関し、両者に活動内容の違いは見られず、昼夜を問わず同様の行動パターンを持つことが示唆された。 また、コミスジ幼虫の擬態効果を高める要因として、幼虫の歩行パターンにも注目しデータを取得した。本種幼虫は独特の小刻みに震えるような歩行を行うことを発見し、動画に撮影することで独特の歩行を生み出す脚の動かし方の解析を行うためのメソッドを模索した。 さらに、オオミドリシジミ幼虫については、野外観察により、幼虫の野外での擬態効果にプラスの効果をもたらす可能性のあるものとして、他種の植食性昆虫による食害痕が新たなアイディアとして得られた。本種幼虫の寄主植物であるコナラは、日本の低地山林の優先樹種として非常に多種の植食性昆虫の寄主植物となっており、潜葉痕・摂食痕等、食害を受けて茶色く変色した箇所が多数見つかる。すなわち、本種が枯れ葉そっくりの茶褐色を有することは、自ら植物を傷つけて枯れ葉を作り出すことで擬態を成立させる以前に、すでに他種の食害を受けた寄主植物の食害部位に擬態し紛れることでマスカレード擬態が成立している可能性が新しい着想として得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動の適応的意義を扱う研究においては、野外での行動実態のより詳細な把握が非常に重要となってくる。その点において、対象とする種の日中と夜間の両方の行動実態を把握できたことは、大変貴重なデータであり、今後の研究を進める上で根幹となるものである。さらには、野外での観察を行う中で新たな発見も得ることができ、マスカレード擬態の実態と進化に関する研究について、より広く視野でかつ深い考察が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず植物を切って枯らせてから摂食することでどのようなメリット・デメリットが生じるかについて、広食性の植食性昆虫であるハスモンヨトウ幼虫を用い、餌としての質の変化の検出を試みる。具体的には、コミスジの切断行動を模した系として、生きたクズの葉・切ってすぐのクズの葉・切って乾燥したクズの葉のそれぞれを餌として与えた場合に、生育にどのような影響が出るかについて成長試験を行なって評価する。また、同様の試験を、オオミドリシジミを模した系として、コナラを用いて行う。 幼虫の体色と生息場所の関係については、野外で生葉および枯れ葉上で幼虫を設置した写真を撮影し、コントラストを比較する。また、可能であればハイパースペクトルカメラでの野外撮影も行い、反射・吸収スペクトルとしてどの程度枯れ葉に近いのかについて、定量的なデータも取得する。 さらには、行動の動画撮影・解析や、寄主植物上の食害痕の量と擬態効果の関係についての野外調査も行う。 フィールドシーズンが終了したタイミングで、動画解析並びに文献調査による植物加工行動と寄主植物の偏りについての解析も進める。
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Report
(3 results)
Research Products
(5 results)