Project/Area Number |
21K06427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 46030:Function of nervous system-related
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
坪井 大輔 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (80584672)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 電位依存性カリウムチャネル / 細胞内シグナル伝達 / タンパク質リン酸化 / 脳回路活動 / 報酬行動 / うつ病 / カリウムチャネル / リン酸化 / KCNQ2 / 情動行動 / 情動 / シグナル伝達 / イオンチャネル |
Outline of Research at the Start |
研究代表者らは線条体/側坐核を構成する中型有棘神経細胞においてドパミン1型受容体の活性化がPKA/MAPKシグナル伝達を介して報酬行動を制御していることを見出していた(Nagai et al, 2016)。しかしながら、報酬行動時、MAPKが如何にして神経膜の興奮性を制御するかについて分子レベルでは未だ理解できていない。本研究では線条体/側坐核におけるMAPKのKCNQ2リン酸化機構とその生理的意義を見出すことで、ドパミンが如何にして中型有棘神経細胞の膜興奮性を制御するかについて分子レベルで解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
情動行動の制御を担う線条体/側坐核は主に中型有棘神経細胞(Medium Spiny Neuron, MSN)で構成されています。ドーパミンはMSNを賦活化させ、報酬行動を促すことが知られていますが、これまでに研究代表者らは報酬行動におけるPKA/Rap1/MAPKシグナル伝達経路の関与を見出した一方で、当該シグナル伝達経路がどのようにしてMSNの賦活化を制御しているかについては十分に理解されていませんでした。本研究では、ドーパミンシグナル伝達のリン酸化プロテオミクス解析を通じて、MSNの興奮性を制御する電位依存性カリウムチャネルKCNQ2に着目し、その分子基盤を明らかにすることを目的とした。マウスの側坐核スライスを用いた薬理学的解析により、D1R作動薬SKF81297がKCNQチャネル依存性の電流を抑制し、D1R-MSNの発火率を増加させることを見出した。さらに、SKF81297刺激による電流抑制にはERK活性が必要であり、ERKがKCNQ2のSer414とSer476を直接リン酸化することを明らかにした。そして、これらのリン酸化部位欠損KCNQ2変異体ではERKによるKCNQ依存性電流の抑制効果が消失した。マウス行動学的解析では、D1R-MSN特異的なKcnq2のコンディショナルノックアウトが神経細胞の興奮性とコカイン誘発性の報酬行動を増強させることが見出した。これらの増強効果は、リン酸化部位欠損KCNQ2ではなく野生型KCNQ2の共発現により消失した。これらの解析から、ドーパミンで惹起されたERKの活性化がKCNQ2のリン酸化修飾を介してチャネル活性を負に制御し、神経細胞の興奮性を増大させることを明らかにした。この研究成果は、KCNQ2チャネルが精神疾患の分子病態において重要な役割を果たすことを示唆しており、新たな治療ターゲットの可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、情動行動の制御に関与する線条体/側坐核の中型有棘神経細胞(MSN)におけるドーパミンシグナル伝達の分子基盤を解明することであった。この研究課題に対し研究代表者は、ドーパミンシグナル伝達のリン酸化プロテオミクス解析を通じて、MSNの興奮性を制御する電位依存性カリウムチャネルKCNQ2を同定しました。さらにマウスの側坐核スライスを用いた薬理学的解析により、ドーパミンシグナル伝達がKCNQ2のリン酸化修飾を通じて機能制御されていることを明らかにした。これらの研究成果により、KCNQ2がMSNの興奮性において重要な役割を果たすことが明らかになった。また、マウス行動学的解析では、リン酸化部位欠損KCNQ2変異体を用いたKCNQ2コンディショナルノックアウトマウスのレスキュー解析から、報酬行動とKCNQ2リン酸化によるシグナル伝達の関与を遺伝学的に証明した。以上のように、本研究は設定した課題を達成したとともに、報酬回路に異常を呈する精神疾患の新規治療ターゲットとしてKCNQ2チャネルの重要性を明確に示した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは意欲や報酬シグナルとして作用する神経伝達物質ドーパミンの下流でリン酸化される蛋白質を100種類以上同定した (Nagai et al, Neuron, 89(3), 2016)。そして、報酬学習においてドーパミン1型受容体の活性化で惹起されたMAPKシグナル伝達が、KCNQ2電位依存性チャネルをリン酸化し、神経細胞の興奮性を促進することを見出した (Tsuboi et al, Cell Rep, 40(10), 2022)。ヒトの臨床解析で、電位依存性カリウムチャネルKCNQが統合失調症やうつ病、強迫性障害などの精神疾患の病因・病態に関与しているとの報告がある。これらの所見から、KCNQチャネルが広範な精神疾患の病態に深く関わっていることが示唆される。とりわけ、統合失調症やうつ病の克服は社会的に重要な未解決の医療ニーズである。今後は様々な精神疾患モデルマウスを用いてKCNQ2チャネルの活性を分子細胞生物学的、および電気生理学的に評価することで、当該疾患の分子病態におけるKCNQの役割について明らかにしていくことが重要である。
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