体温調節中枢の局所神経回路と司令塔メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K06767
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48020:Physiology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 佳子 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (60548543)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 恒常性 / 体温調節 / プロスタグランジン / 発熱 / 代謝 / 脳 / 神経回路 |
Outline of Research at the Start |
視床下部の視索前野は末梢由来の神経情報や液性情報などの入力を受けて統合し、出力する恒常性維持の司令塔であると考えられるが、視索前野の局所神経回路メカニズムは不明である。研究代表者は、感染性発熱の引き金となるプロスタグランジンEP3受容体を発現する視索前野のニューロンが温度感受性を持ち、平常の体温の恒常性を維持すると仮説を立てた。遺伝子組換えラットを用いて、このニューロン群の投射や活動を解析するとともに活動を制御して体温調節への影響を検討することでEP3発現ニューロンを軸とした視索前野の局所神経回路を明らかにし、体温調節を含めた生体恒常性維持のメカニズムの本質を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳の視床下部にある視索前野は、血液脳関門の脆弱な脳室周囲器官の近傍に存在するため、神経情報に加えて液性因子を受け取って統合し、体温調節中枢として体温を一定に保つ。しかしながら、体温調節中枢の司令塔の神経細胞群は未同定であった。そこで、研究代表者は発熱メディエーターであるプロスタグランジンE2のEP3受容体を発現する視索前野ニューロン(EP3ニューロン)が発熱のみならず平時の体温調節にも重要な役割を果たすのではないかと仮説を立てた。まず、EP3ニューロンが持つ神経伝達物質を明らかにするために、細胞体のin situ hybridizationを行ったところ、EP3ニューロンの中には温覚で活性化され、GABAあるいはグルタミン酸作動性神経マーカーのmRNAを発現するグループが存在することがわかった。次に、研究代表者が作製したEP3ニューロン選択的に外来遺伝子を発現させることを可能にする遺伝子組み換えラットとウイルスを組み合わせて、EP3ニューロンの軸索を可視化し、投射先を全て調べた。その結果、交感神経を活性化する視床下部背内側部などに投射することが明らかとなった。そこで、EP3ニューロンの軸索終末が含有する神経伝達物質を調べたところ、視床下部背内側部に投射した軸索終末には、グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーであるVGLUT2よりもGABA作動性ニューロンのマーカーであるVGATを含有するものが圧倒的に多かった。また、2週間暑熱曝露したラットではVGAT含有軸索終末が増加していた。EP3ニューロンの軸索終末からGABAが放出されることはスライスパッチクランプ実験によっても確認された。さらに、化学遺伝学技術を用いてEP3ニューロン群を刺激すると体温低下が、抑制すると体温上昇が起こった。このことから、EP3ニューロンは体温を上下に調節する中枢の司令塔であることが証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果から、視索前野のEP3発現ニューロンは発熱のみならず、平時の体温調節にも関わることが示唆されていた。そこで研究代表者が作製した、EP3ニューロン選択的に外来遺伝子を発現させることを可能にする遺伝子組み換えラットとウイルスを組み合わせて、視索前野のEP3発現ニューロンの投射先を全て調べた。その結果、交感神経を活性化する領域である視床下部背内側部などに直接投射があることがわかった。そこで、EP3ニューロンがどのような神経伝達物質を使用して下流の領域をコントロールしているのかを調べるためにウイルスを注入した遺伝子組み換えラットを暑熱、室温、寒冷下で飼育後固定し、免疫組織染色した脳切片を共焦点レーザー顕微鏡で撮影した。視床下部背内側部にある視索前野EP3発現ニューロン由来の80,000個以上の神経終末を一つずつ神経伝達物質を同定しながら目で見て数えた。その結果、グルタミン酸作動性ニューロンのマーカーであるVGLUT2を発現するものよりもGABA作動性ニューロンのマーカーであるVGATを発現するものが圧倒的に多かった。また、2週間暑熱環境下で動物を飼育すると、VGATを含有する神経終末が増加した。このことは、暑熱耐性獲得のメカニズムの一つである可能性が示唆された。また、化学遺伝学の手法を用いて、視索前野のEP3ニューロン特異的に活性化すると体温が低下し、抑制すると体温が上昇した。パッチクランプ法による神経活動記録を行った結果、神経終末からGABAが放出されることもわかった。これらのことから、視索前野のEP3発現ニューロンはGABA作動性に下流の視床下部背内側部の交感神経駆動ニューロンを常時抑制しており、その抑制の強さを変えることで、平常の体温を調節する司令塔であることが示された。この結果は査読付き国際誌に論文発表できたため、当初の計画よりも進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究で、視索前野のEP3発現ニューロンが様々な領域に軸索を投射することがわかったので、視床下部背内側部以外の領域へ投射する軸索の終末に関しても、含有する神経伝達物質について解析を進めている。 また、作製した遺伝子組み換え動物の視索前野のEP3発現ニューロン特異的に膜移行型GFPを発現させて、EP3発現ニューロンの軸索を可視化した上で脳組織をGABAやグルタミン酸作動性神経細胞のマーカーと共染色し、共焦点レーザー顕微鏡で撮影後三次元構築する。そして、EP3発現ニューロンの視索前野内での局所神経ネットワークを立体的にイメージング解析し、どの様な特性のEP3ニューロンと局所接続をしているかを解析する。さらに、視索前野EP3発現ニューロンの温度感受性についても電気生理学実験により解析を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)