光作動性シナプス可塑性制御ツールを用いた海馬LTDの生理機能の探索
Project/Area Number |
21K06788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48020:Physiology-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 政之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20442535)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 海馬 / LTD / シナプス可塑性 / 光遺伝学 / 長期抑制(LTD) / スライスパッチ / 行動試験 |
Outline of Research at the Start |
記憶や学習などの脳機能の基盤とされる長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)といったシナプス可塑性は、これまでの精力的な研究により分子や細胞レベルでの基本的なメカニズムが確立されてきたが、シナプス可塑性と個体レベルでの記憶や学習との直接の因果関係については不明な点も多い。本研究では、最近、申請者の所属する慶應義塾大学・柚崎研究室で開発された、光刺激によりLTDを阻害するツール”PhotonSABER”を利用し、空間記憶・学習に関わる海馬を研究対象とし、この部位で観察されるLTDと直接的な因果関係を示す個体レベルでの生理機能の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、申請者の所属する慶應義塾大学・柚崎研究室で開発された光作動性LTD阻害すツール(PhotonSABER,Kakegawaら,Neuron 99: 985, 2018)を利用し、空間記憶・学習に関与している海馬で観察される長期抑圧(long-term depression:LTD)と直接的な因果関係を示す行動レベルでの機能の解明を目的とした。 昨年度、既に樹立済みの前脳の興奮性神経細胞特異的にPhotonSABERを発現するノックイン(KI)マウス(CaMKII-Cre;PhotonSABER-LSL)を用いて実際にPhotonSABERが光依存的に海馬CA1錐体細胞のLTDを抑制できるかどうかを機能評価を行ったが、PhotonSABERの活性化に必要な強度(およそ1000 lux以上)の光刺激を行うと、小脳とは異なり海馬では光毒性が生じてしまうことが判明した。PhotonSABERを用いて海馬CA3-CA1シナプスのLTDを抑制する条件を確立する事が出来なかった。 今年度はこれらの結果を受けて、PhotonSABERをKIマウスより更に高発現させ、より低強度の光刺激でLTDが阻害できるようにする条件の確立を目指し、AAVベクターでPhotonSABERを発現させる方法を検討した。最終的な行動実験での使用も考慮し、静脈投与により全脳的に外来性遺伝子の発現が可能なAAV-PHP.eBにPhtonSABERを組み込んだAAVベクターを作製し、免疫染色レベルではKIマウスより数倍以上PhotonSABERを高発現させることが出来る実験系を樹立する事が出来た。しかしながら、このAAVベクターを用いた高発現条件下でも、PhotonSABERにより光刺激によって海馬CA3-CA1シナプスのLTDを抑制する事が出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度、小脳プルキンエ細胞とは異なり、海馬CA1錐体細胞では光刺激によるevoked EPSCの抑制(光毒性によるものと想像される)が著しく、PhotonSABERの活性化に必要な光強度(1000 lux以上)の光刺激が海馬では難しいため、研究の進捗が大きく停滞した。今年度は樹立済みのCaMKII-Cre;PhotonSABER-LSLマウスより高発現の状態での実験を可能にするため、AAV-PHP.ebベクターを用いてPhotonSABERを海馬CA1に高発現させる実験系を構築した。しかしながら、この条件でもPhotonSABERによって海馬CA1のLTDを抑制する条件を確立する事が出来なかった。その為、スライス標本での実験後に続く個体レベルでの実験に関しては手つかずのままであり、計画の進捗に関しては遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で目的としている海馬LTDと直接的な因果関係を示す個体レベルでの生理機能の解明のためには、行動実験に先立って海馬急性スライス標本でのPhotonSABERによるLTDの阻害実験は必要不可欠であり、その確立のため現時点では苦闘している。今後はより強い光刺激(およそ1000 lux以上)でも光毒性を抑制できる実験条件の確立、およびより高ポンプ活性を有するPhotonSABERの改良が不可欠であるように考えている。前者については既設の水銀ランプを用いた通常の落射蛍光装置から、高出力型の単色LEDを用いた光刺激装置を導入し、光毒性が改善可能か検討可能か検討中である。後者については近年の構造生物学的な研究の急激な進展に伴い光作動性のプロトンポンプの構造機能連関の知見も蓄積していることから、PhotonSABERに新たに点変異を導入しポンプ活性の強化が図れないか実験を計画中である。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)