RNA編集不全によって引き起こされる遺伝性脳症の病態形成機構の解明
Project/Area Number |
21K07080
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49070:Immunology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中濱 泰祐 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10636187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | RNA編集 / ADAR1 / AGS / 脳症 / MDA5 / エカルディ・グティエール症候群 |
Outline of Research at the Start |
エカルディ・グティエール症候群(AGS)は、インターフェロン(IFN)の異常産生を伴う先天性脳症である。現状では脳症を再現するモデルは確立されておらず、その病態形成機構は不明である。そこで、本疾患で同定されているRNA編集酵素ADAR1遺伝子変異をノックインした(AGS KI)マウスを作成したところ、脳をはじめとする様々な臓器でIFN誘導遺伝子群(ISG)の発現上昇が認められ、新規のAGSモデルとなる可能性が示唆された。そこで本研究では、AGS KIマウスを用いて、AGS脳症の病態形成機構を解明し、将来的なAGSの治療に向けた分子基盤情報の確立を目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
エカルディ・グティエール症候群(AGS)はインターフェロン(IFN)の発現異常に起因する脳症を主症状とする遺伝性免疫疾患である。原因遺伝子にはRNA編集酵素ADAR1や自然免疫センサーMDA5などが報告されている。最近、内在する2本鎖RNAをADAR1が編集することで構造を緩め、MDA5による非自己としての認識を回避する機構が存在することがわかってきた。すなわち、この機構の破綻がAGS発症のメカニズムと考えられるが、現状ではAGS主症状である脳症を再現できるモデル動物は存在しない。そこで本研究では、新たに樹立したADAR1遺伝子AGS型点変異ノックイン(AGS KI)マウスを用いて、AGS脳症の病態形成機構の解明を目的とした。初年度の解析から、本マウスが、RNA編集の低下、MDA5活性化に起因するインターフェロン誘導遺伝子群(ISG)の発現上昇、グリオーシスを伴う白質病変を呈すことを見出した。さらにADAR1の2つのisoform(p150とp110)のうち、p150の編集低下がAGS KIマウスにおける病態形成の原因であることを突き止めた。そこで2年目は、ADAR1 p150あるいはp110選択的欠損(KO)マウスを用いてMDA5を活性化する基質の探索を行った。各isoform KOマウスにおけるRNA編集部位を網羅的に解析することで、ADAR1 p150特異的編集部位を特定し、そのうえでAGS KIマウスにおいて編集効率が著しく低下する部位を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哺乳類においてはADAR1(p150とp110)、ADAR2がアデノシンをイノシンへと置換するタイプのRNA編集を触媒する。マウスでは数万箇所の編集部位が存在すると見積もられているが、初年度の解析によってADAR1 p150によるRNA編集のみにMDA5活性化抑制効果があることを見出した。そこで2年目は、ADAR1 p150 KOマウス、p110 KOマウス、ADAR2 KOマウスの脳におけるRNA編集部位を網羅的に解析し、ADAR1 p150のみが編集できる部位を特定した。さらに、特定した部位の中からAGS KIマウスにおいてRNA編集効率が著しく低下する部位を決定した。現在、絞り込んだ編集基質が実際にMDA5を活性化するか調べるための培養細胞実験系を構築中であり、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに全てのRNA編集酵素を欠損する培養細胞を樹立し、MDA5を導入することでISGが著しく上昇することを見出している。今後は特定した編集部位を含む2本鎖RNA形成領域をクローニングし、本細胞株へと導入する計画であるが、内在未編集型2本鎖RNAによるMDA5活性化の影響を最小限に抑えるため、MDA5の発現誘導系に変更する予定である。有望なMDA5活性化基質を特定できれば、編集型ではMDA5を活性化しないこともあわせて検証する。一方、AGS KIマウスを用いた解析により、本マウスがRNA編集の活性の低下やMDA5の活性化、さらにAGS様脳症を再現するモデルであることを示すことができた。今後はADAR1コンディショナルKOマウスなどを用いた解析を実施し、AGS病態の解明を細胞レベルまで掘り下げていくことを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)