Project/Area Number |
21K07288
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 51030:Pathophysiologic neuroscience-related
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 元治郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (60466034)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | TDP-43 / 筋萎縮性側索硬化症 / 前頭側頭葉変性症 / プリオン |
Outline of Research at the Start |
ALSやFTLDなどの神経疾患では、異常TDP-43凝集体のプリオン様伝播により、脳内の広範な範囲で凝集体形成と神経変性が起こると考えられるが、そのメカニズムは殆どわかっていない。そこで、本研究では、精製したTDP-43タンパク質から様々な構造のTDP-43多量体を形成し、神経細胞やマウスに導入することにより、異常TDP-43凝集体の形成や神経変性が誘導されるかを検討する。異常TDP-43タンパク質凝集体による神経細胞モデル・マウスモデルを確立することにより、TDP-43のプリオン様伝播のメカニズムを明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質におけるTDP-43の凝集体形成は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)の患者脳内で広くみられる病変であり、病気の進行と密接に関与すると考えられる。神経変性疾患の病因とされるαシヌクレインやタウと同様に、異常細胞から放出された異常TDP-43凝集体が近傍の正常細胞に取り込まれ、正常細胞内のTDP-43の凝集体形成が誘導されるプリオン様伝播により、脳内の広範な範囲でTDP-43の凝集体形成と神経変性が起こると考えられている。しかし、TDP-43凝集体のプリオン様伝播のメカニズムや細胞への毒性など多くの疑問点は解明されていない。そこで、精製したTDP-43タンパク質から異なる構造のTDP-43多量体を形成し、培養細胞やマウスへ導入することにより、異常TDP-43凝集体の形成や神経変性が誘導されるモデル細胞やモデル動物などの樹立とその解析が本研究の概要である。 TDP-43タンパク質は大腸菌からの精製が困難だが、TDP-43タンパク質の様々な方法での精製に成功した。また、精製方法や凝集体形成方法の違いによって異なる構造のTDP-43凝集体の形成にも成功した。形成した凝集体がシードとなるか否かを確かめるために、TDP-43を過剰発現している培養細胞に導入すると、TDP-43の凝集体の形成が誘導された。このとき、シードとなるTDP-43凝集体の構造に依存して形成されるTDP-43凝集体の特徴が異なることを明らかにした。また、マウス胎児由来神経細胞に導入することでも、TDP-43の凝集体の形成が誘導された。ヒト患者脳で観察されるTDP-43凝集体の病理には様々なタイプがあることが知られているが、精製したTDP-43凝集体がシードとなり、ヒト患者脳で観察される構造多型と類似した凝集体の形成を誘導することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TDP-43タンパク質を大腸菌より精製し、TDP-43凝集体の作製に成功した。凝集体の形成方法を検討することにより、同一のTDP-43モノマータンパク質から異なる構造の凝集体の形成に成功した。それらの凝集体は試験管内でTDP-43モノマータンパク質に対するシード能を有しており、構造の違いによりシード能が異なることを明らかにした。TDP-43を過剰発現した培養細胞を用いた実験により、異なる構造をもつTDP-43凝集体は、細胞で発現しているTDP-43タンパク質のシードとなり、凝集体形成を誘導することを明らかにした。また、シードとして導入した凝集体の構造に依存して、異なる特徴をもったTDP-43凝集体が形成されることを明らかにした。さらに、マウス胎児から分離培養した神経細胞に、これらのTDP-43凝集体を添加すると、ある構造の凝集体によって凝集体形成が誘導されることも明らかにした。成体マウス脳へTDP-43凝集体を導入すると、わずかではあるがリン酸化TDP-43の凝集体形成を誘導することを明らかにした。ここまでの結果は当初の計画通りであることから、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
TDP-43凝集体が細胞に取り込まれ、TDP-43凝集体が蓄積し、細胞死を誘導するメカニズムを培養細胞モデルを利用して検証する。蛍光標識したTDP-43凝集体を用いたタイムラプス観察を行い、異なる構造のTDP-43凝集体がどのようにして細胞へと取り込まれていくかを観察する。また、ユビキチン-プロテアソームシステムやp62-オートファジーなどの凝集体除去システムの破綻が誘導されていないかを検証する。内在性TDP-43特異的な抗体やリン酸化TDP-43特異的抗体を利用した免疫沈降、界面活性剤不溶性画分の精製、などによりTDP-43シードによって形成された異常TDP-43凝集体を濃縮し、結合しているタンパク質群を質量分析により網羅的に同定する。TDP-43タンパク質導入後の様々なタイムポイントでTDP-43と結合している分子群を解析することで、TDP-43多量体の取り込み、内在性TDP-43とのシーディング、内在性TDP-43のリン酸化、細胞死の誘導などの各段階で特異的に関与している因子を同定し、TDP-43タンパク質の凝集体の形成過程とTDP-43凝集体による細胞毒性の機序を明らかにすることを試みる。
|