家族性パーキンソン病PARK17由来iPS細胞を用いた根幹病態の解明と治療薬開発
Project/Area Number |
21K07302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 51030:Pathophysiologic neuroscience-related
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | パーキンソン病 / VPS35 / レトロマー / 新規オートファジー / Rab9 / iPS細胞 / リソゾーム |
Outline of Research at the Start |
我々はPARK17患者由来iPS細胞を樹立し、ドパミンニューロンなど神経系細胞に分化誘導して細胞内輸送障害の解析を行った。疾患iPS細胞由来ニューロンの解析により、VPS35変異がレトロマー機能の障害およびドパミンニューロンの細胞死を引き起こすことが示された。恒常性維持機構である細胞内輸送の障害が、二次的にリソゾーム、ミトコンドリア、オートファジーの機能不全を引き起こしうるので、レトロマーの機能に注目してパーキンソン病の根幹病態を明らかにしたいと考えている。本研究では、家族性パーキンソン病の患者由来iPS細胞を利用して疾患の病態を解明し、遺伝子治療薬、核酸医薬による治療介入の可能性を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
家族性パーキンソン病PARK17はレトロマーの構成因子VPS35のD620N変異によって発症する。レトロマーの生理機能から考察して、細胞にとって最も基本的な恒常性維持機構である細胞内輸送の障害が、二次的にリソゾーム、ミトコンドリア、オートファジーの機能不全を引き起こしうるのではないかという仮説をたてパーキンソン病の根幹病態の解析を行なった。野生型VPS35と比較して変異型VPS35が、細胞が飢餓状態時にRab9を含む小胞との相互作用が優位に低下することを明らかにするとともに、変異型VPS35存在下ではRab9とリソソームの共局在が減少し、ATG5の発現を抑制するとRab9のリソソームへの取り込みが変異型VPS35群で顕著に減少することを示した。VPS35が何らかのメカニズムでRab9を介した新規オートファジー制御に関与している可能性が強く示唆された。そこで2022年度は、PARK17の患者iPS細胞から分化誘導したニューロンにおいてATG5をノックダウンしconventionalオートファジーを特異的に抑制したところ疾患群特異的にオートファジーが低下し、エストロゲンを添加すると回復することがわかった。疾患群においてRab9とATG5の両方をノックダウンすると、エストロゲン添加によるオートファジーの回復が阻害されることがわかった。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが強く示唆された。今後、エストロゲンによるオートファジー活性化が、疾患群のドパミンニューロンにおけるアルファシヌクレインの蓄積を減少させ,神経細胞死を抑制できるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度に新規オートファジー評価法を確立したことによりiPS細胞由来ニューロンを用いた病態研究が可能になった。2022年度は、これまでHeLa細胞を用いて示してきた変異型VPS35の細胞内小胞輸送およびオートファジーへの影響について、ヒトiPS細胞から誘導したニューロンを用いて検証した。PARK17患者由来iPS細胞および健常コントロールiPS細胞からニューロンを分化誘導し、Cyto-ID添加によりオートファジーを検出して調べたところ、疾患群・健常コントロール群間で差がなかった。そこでsiRNAによりATG5をノックダウンしconventionalオートファジーを特異的に抑制すると疾患群で有意にオートファジーが低下し、エストロゲンを添加すると回復することがわかった。しかし、エストロゲンは健常コントロール群のオートファジーには影響しなかった。これらの結果から、変異型VPS35は新規オートファジーを抑制することが強く示唆された。さらに、疾患群においてRab9とATG5の両方をノックダウンすると、エストロゲン添加によるオートファジーの回復が阻害されることがわかった。また健常コントロール群においても、Rab9とATG5の両方をノックダウンすると疾患群と同様にエストロゲン不応性にオートファジーが抑制されることが示された。これらの結果から、VPS35遺伝子変異により新規オートファジーが抑制され、エストロゲンはRab9依存的に新規オートファジーを促進することが強く示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
患者・健常者由来iPS細胞からドパミンニューロンを分化誘導し、エストロゲンによるオートファジー活性化が、疾患群におけるアルファシヌクレインの蓄積を減少させ,神経細胞死を抑制できるか検討する。これまでの研究でPARK17患者iPS細胞由来TH陽性ドパミンニューロンにおいてエンドソームの輸送障害、アルファシヌクレインの細胞内蓄積、神経細胞死が起こることが明らかになっている(Bono K. et al. 2020)。そこで、簡便な小分子による分化誘導法にかえ,より効率的にドパミンニューロンを誘導できるAscl1, Nurr1, Lmx1bの3遺伝子導入法を利用しPDモデル細胞を作出して解析する。また、オートファジー・リソソーム系の障害によりミトコンドリア品質異常が惹起される可能性があるため、患者ドパミンニューロンにおけるミトコンドリア膜電位を計測しミトコンドリア機能障害を検証する。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)