Project/Area Number |
21K07541
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52030:Psychiatry-related
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Research Institution | Southen Tohoku Research Institute for Neuroscience (2023) Niigata University (2021-2022) |
Principal Investigator |
田中 惠子 一般財団法人脳神経疾患研究所, 多発性硬化症・視神経脊髄炎センター, 研究員 (30217020)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 自己免疫性脳炎 / 自己抗体 / cell-based assay / くすぶり型脳症 / 神経シナプス関連自己抗体 / セルベースアッセイ / 網羅的抗体検出系 / 治療アルゴリズム |
Outline of Research at the Start |
急性・亜急性発症の認知障害、精神症状、痙攣発作は、自己免疫性脳炎である可能性があり、速やかな診断に基づく早期の免疫治療を要する。症候のみでの診断確定は困難であり、診断マーカーとなる自己抗体を同定する必要がある。わが国では、これらの一連の抗体検出系を保有する施設はないため、申請者はこれらの抗体検出系を構築し、自己免疫性脳炎関連自己抗体の網羅的検出系を作製する。多数例での結果について、抗体種と臨床的特徴の関連を明らかにし、診断アルゴリズムを作製することで、認知症や精神疾患などの診断で免疫治療の機会を逸するなどのことがないよう、診療システムの構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
亜急性に精神病様症状、記銘・意識障害、けいれんなどを生じる自己免疫性脳炎が広く認知されている。しかしながら、初期症状から、統合失調症やうつ病などの精神病、様々な感染症・薬物中毒・膠原病性疾患などを早期に鑑別することは難しい。特に精神病様症状が前景となる自己免疫性辺縁系脳炎は、早期診断・早期治療に至る例が少ないのが現状である。自己免疫性脳炎の診断マーカーとなる各種自己抗体は、新たな発見が相次ぎ、これまで非典型的な精神病・神経変性疾患とされていた例で、新たに自己抗体が検出され、免疫治療により症状の軽快が得られた例の報告が増えている。この中には、慢性経過を呈して従来から知られる神経変性疾患と診断されたことで、免疫治療による症状改善の恩恵を受けていなかった症例が多数含まれる。申請者は、このような非典型的な症例も含めて、広くスクリーニングを行うため、新規抗体を加えた多数の自己抗体を迅速に検出するシステムの構築を継続しており、臨床現場からの抗体診断の要望に応えている。実際には、中枢神経の興奮性・抑制性シナプス受容体を標的とする自己抗体(NMDAR、AMPAR, GABAB/AR, LGI1, CASPR2, GlyR, DPPX, mGluR5), 他にも検出頻度が高いMOG, APQ4抗体に加え、GluK2, GluD に対する自己抗体を安定的に検出するcell-based assay法を確立した。さらに、より感度よく簡便に検出可能なFACSを用いた検出系作成に取り組んでいる。しかしながら、疑わしい症例すべてについて、報告された多数の抗体を検査することは困難で、いまだ自己免疫性脳炎の全体像は把握できておらず、症例の集積が待たれる状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2024年3月末までに、自己免疫性脳炎が疑われ、申請者のもとに抗体検査の依頼があった症例は、計4111例である。このうち、2023年4月から2024年3月までは268例あり、何らかの抗体陽性例は46例(17.2%)にみられた。NMDAR抗体MOG抗体が最も多く、次いでLGI1、AQP4抗体が検出された。AMPAR,GABAbR,GlyRはそれぞれ9%で陽性であった。個々の抗体陽性例の数が少なく、また、個々の例で臨床像が異なることから、抗体毎の臨床的特徴を踏まえたアルゴリズム作成には至っていない。さらに症例の集積をした上で、アルゴリズム作成に着手したい。
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Strategy for Future Research Activity |
自己免疫性脳炎の診断基準は、症状完成までの期間が3ヶ月以内の急性発症と定義されているが、実際の抗体陽性例には数ヶ月以上の経過で緩徐に進行するくすぶり型があり、神経変性疾患との区別が困難である。これらの症例の早期診断は、治療不応となる慢性の神経疾患への進展を防ぐためにも重要である。このような症例を集積することで、より正確な臨床像の広がりを把握できる可能性がある。これらの例を含めての早期診断を可能にするために、臨床スペクトラムの広がりをあらためて総括する。これにより、これまで抗体検査の対象にならず治療の恩恵を受けていなかった非典型的な症例についての認知度を高め、さらに症例を集積することで、自己免疫性脳炎の臨床スペクトラムの広がりを再考する。集積した症例の特徴は、公表・啓蒙し、早期診断・早期治療への道筋を提示する。
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