Project/Area Number |
21K07911
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 53010:Gastroenterology-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小村 仁美 信州大学, 医学部, 特任助教 (30616032)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 胃癌 / 分化型腺癌 / A4gnt欠損マウス / α4GnT / αGlcNAc / MUC6 / TFF2 |
Outline of Research at the Start |
胃癌は分化型腺癌と未分化型腺癌に大別され、分化型腺癌は年齢とともにその罹患率が増加する。当研究室では、胃粘膜液中の糖鎖αGlcNAcを生合成する糖転移酵素α4GnTを単離し、また、その遺伝子欠損マウスであるA4gnt欠損マウスを作製した。このマウスは30週齢で分化型腺癌が自然発生するが、生後早い段階で過形成を引き起こす。このため、分化型腺癌発症のトリガーは胎児期に存在すると考え、その因子を探索することを目的として、発生・分化レベルでの研究を行う。胃癌は日本人における癌の部位別罹患数がトップであり、高齢化社会において、胃癌に対する新しい予防法および治療法の確立は、社会的に重要な課題である。
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Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、胃粘膜液中の糖鎖αGlcNAcを生合成する糖転移酵素α4GnTを単離したが、その遺伝子欠損マウスであるA4gnt欠損マウスを作製したところ、胃の幽門部に分化型腺癌が自然発症した。このことから、αGlcNAcは分化型腺癌の抑制因子と考えられるが、その詳細なメカニズムは不明である。A4gnt欠損マウスは、生後早い段階で胃の幽門部が過形成を引き起こすことから、発癌メカニズム解明のためには、胎児期の解析が必要であると考えた。 TaqManリアルタイムPCR法で、胎児胃におけるmRNAの定量的解析を行った。α4GnT および、αGlcNAcが結合するムコチンコアタンパク質MUC6や、MUC6と結合し、癌との関連が報告されているTFF2のmRNAの発現量の変化を明らかにした。野生型マウスでは、α4GnTは、E13.5から、MUC6、TFF2は、E15.5から発現し始めた。特に、TFF2では、E18.5以降で急激に発現量が上昇した。一方、A4gnt欠損マウスでは、MUC6、TFF2において、E18.5以降の発現上昇は緩やかで、TFF2の発現レベルはほぼ横ばいであった。 αGlcNAcおよびTFF2それぞれの特異抗体による胎児胃の免疫組織蛍光染色を行った。野生型マウスの分子局在は、E15.5以降で観察され、A4gnt欠損マウスでは、TFF2はE17.5以降で局在が見られた。また、作製した抗マウスMuc6特異抗体での染色では、野生型マウスではE16.5以降、A4gnt欠損マウスではE17.5以降で局在が観察された。野生型でみられる胃底腺にのTFF2およびMUC6の局在は消失し、幽門腺付近にのみ局在する様子が観察された。 これらのことから、A4gnt欠損マウスでの分化型腺癌発症の原因となる分子変化がマウス胎児胃のE17.5からE18.5の間に起こる可能性を考え、研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、野生型およびA4gnt欠損マウス胎児胃におけるαGlcNAc 、MUC6、TFF2のmRNAレベルでの発現量の変化を明らかにした。A4gnt欠損マウスでは、野生型マウスと比べ、E17.5まではMUC6、TFF2の発現量は変わらないが、E18.5以降で顕著に減少した。 次に、αGlcNAcおよびTFF2特異抗体を用いて、野生型およびA4gnt欠損マウスの胎児胃における免疫蛍光組織染色を行った。その結果、αGlcNAcおよびTFF2は、野生型マウスのE15.5で幽門部に局在を認め、幽門部のみ見られた局在が胃底部にも広がって行く様子が観察された。しかしながら、A4gnt欠損マウスでは、局在はE17.5以降で観察され、胃底腺におけるTFF2の局在は消失し、幽門腺付近にのみであった。 また、抗マウスMUC6特異抗体をウサギで作製し、この抗体での免疫蛍光組織染色を行った。その結果、MUC6は野生型マウスではE16.5以降で、A4gnt欠損マウスではE17.5以降で局在が観察された。A4gnt欠損マウスでの局在部位はTFF2と同様の変化が見られた。作製した抗体のウエスタンブロットを行い、Muc6分子量の位置にシグナルを確認し、ペプチド吸収試験も行った。 胎児胃の増殖に関して、BrdU取り込み細胞の定量やHE染色の観察から増殖レベルに差はないと考えられた。 以上の知見から、A4gnt欠損マウスでは、E17.5からE18.5の間で分化型腺癌発症の原因となる分子変化が起こると考えた。野生型とA4gnt欠損マウスのE17.5およびE18.5の胃から作製したプローブでのマイクロアレイ実験により、関連分子の網羅的探索を行った結果、いくつかの注目すべき分子が確認さた。今後はそれら分子とαGlcNAcおよびαGlcNAc関連分子であるMUC6 、TFF2の関係に着目して解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、野生型マウス及びA4gnt欠損マウスの胎児胃におけるαGlcNAc 、MUC6、TFF2のmRNAレベルでの経時的な発現量の変化を明らかにし、A4gnt欠損マウスでは、野生型と比較してE18.5以降で顕著に発現量が減少することを確認した。また、MUC6、TFF2の分子局在を蛍光免疫組織染色法により調べたところ、A4gnt欠損マウスでは、MUC6およびTFF2の局在が、胃底腺で消失することを観察した。このことから、A4gnt欠損マウスの胎児胃ではE17.5からE18.5の間で発癌の原因となる変化があると考えらた。これらの実験結果から、野生型マウス及びA4gnt欠損マウスのE17.5とE18.5の胃からそれぞれプローブを作製し、マイクロアレイ実験により発現変化する分子を網羅的に探索したところ、いくつかの興味深い分子が得られた。マイクロアレイ実験の結果に統計的に優位な差があることを確認するために、E13.5からE19.5の胎児期の胃を各6匹以上用いたリアルタイムPCR法により、mRNA発現量の変化を検討中である。再現性が確認された分子に関しては、その遺伝子をノックダウンした時の影響についても培養細胞レベル、または個体レベルで明らかにする。そして、A4gnt欠損マウス胃の過形成および分化型腺癌発症のトリガーとなる分子を同定し、その分子とαGlcNAcの関係から発癌メカニズムの解明を行いたいと考えている。今年度中にA4gnt欠損マウスにおけるMUC6、TFF2のmRNAレベルでの発現量変化、分子局在の変化については、論文にまとめる予定である。 最終的には、ヒト分化型胃癌の病理標本を用いて、A4gnt欠損マウスに見られた発現量や局在の変化がヒトにも観察されるか、また、その同様な変化の見られる標本の割合はどれほどかを明らかにして、医療の進歩に貢献したいと考えている。
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