新規エピゲノム修飾薬のB細胞リンパ腫に対する奏効予測モデルの確立とその治療応用
Project/Area Number |
21K08392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 54010:Hematology and medical oncology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
錦織 桃子 京都大学, 医学研究科, 講師 (60378635)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | B細胞リンパ腫 / EZH2 / EZH2阻害薬 / 悪性リンパ腫 / エピゲノム |
Outline of Research at the Start |
EZH2阻害薬はB細胞リンパ腫に対する新しい薬剤であるが、作用機序や奏効症例を予測する指標はまだ十分明らかにされていない。申請者はこれまでにEZH2阻害薬が免疫細胞との相互作用の増強や抗がん剤の効果を増強させるが、その作用はリンパ腫の種類によって異なることを見出している。本研究では遺伝子異常やエピゲノム修飾からEZH2阻害薬の奏効症例の予測方法と最適な併用療法を明らかにし、マウス実験で検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
EZH2阻害薬は再発難治性濾胞性リンパ腫に用いられる新規のエピゲノム修飾薬であり、EZH2の高発現によって抑制されている様々な標的遺伝子の発現を回復させる作用を持つ。本研究ではEZH2阻害薬の未知の作用機序を解明し、本薬剤の新たな治療対象および最適な使用法を見出すことを目指している。 これまでの研究の中で、EZH2阻害薬はB細胞と周囲の免疫微小環境の関係性を変化させる作用を持つことが示唆されたことから、複数のB細胞リンパ腫において、EZH2阻害薬によって生じる遺伝子発現変化をmRNAシークエンスを用いて網羅的に解析した。EZH2阻害薬により発現が有意に上昇する遺伝子群の中で、免疫修飾作用を持つ特定の分子の発現を上昇させることに着目し、細胞の共培養の実験やサイトカイン産生実験などにより、その分子の発現が上昇する意義を調べた。その分子はT細胞やNK細胞を動員し、活性化を促す作用があることを見出している。 これまでの研究により、EZH2がB細胞リンパ腫の遺伝子発現を大幅に改変し、周囲の免疫細胞との関係性を変化させることが明らかになっている。さらに、ホジキンリンパ腫における腫瘍細胞であるHodgkin/Reed-Sternberg(H/RS)細胞は、多くの場合B細胞に起源を持つことが知られているが、B細胞とは全く遺伝子発現パターンが異なり、免疫細胞の豊富な腫瘍微小環境を持つ。我々は、B細胞リンパ腫におけるEZH2阻害薬処理により誘導される遺伝子群と、H/RS細胞で高発現が報告されている遺伝子群に有意な相関がみられることをGene set enrichment analysis (GSEA)で見出しており、それぞれのエピゲノム修飾のメカニズムを明らかにする実験に現在取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞リンパ腫11細胞株を用いて、EZH2阻害薬によって生じる遺伝子発現変化をマイクロアレイ解析、mRNAシークエンス、定量RT-PCR法を用いて絞り込み、それぞれの遺伝子の機能を調べることにより、EZH2阻害薬のB細胞リンパ腫に対する作用の全体像を明らかにすることができつつある。EZH2阻害薬により発現が有意に上昇する遺伝子群の中で、免疫修飾作用を持つ遺伝子群に着目し、細胞の共培養の実験やサイトカイン産生実験などにより、その分子の発現が上昇する意義を調べ、EZH2阻害薬はB細胞と周囲の免疫微小環境の関係性を変化させる作用を持つことが明らかになった。 現在、B細胞が起源細胞とされながら他のB細胞リンパ腫とは遺伝子発現プロフィルが大幅に異なる、ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞であるH/RS細胞に着目し、その遺伝子発現の特徴にエピゲノム修飾が関与しているのではないかと考え、実験を進めている。H/RS細胞は免疫細胞の豊富な腫瘍微小環境を持つことが特徴であるが、これまでに、B細胞リンパ腫におけるEZH2阻害薬処理により誘導される遺伝子群と、H/RS細胞で高発現が報告されている遺伝子群に有意な相関がみられることをGene set enrichment analysis (GSEA)で見出している。そこで、H/RS細胞側のエピゲノム修飾の機序を明らかにしたいと考え、H/RS細胞に高頻度にみられるEBウィルス感染に着目して実験を進め、新たな知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
濾胞性リンパ腫とホジキンリンパ腫はともに胚中心B細胞が起源のリンパ腫であると推測されているが、遺伝子発現プロフィルが大きく異なる。それらの違いには、エピゲノム修飾の違いが異なるリンパ腫病型の形成に関与している可能性があると推測している。ホジキンリンパ腫においてはEBウィルス感染の頻度が高く、ホジキンリンパ腫のエピゲノム修飾にはEBウィルスが一端を担っているのではないかと考え解析を進めている。ホジキンリンパ腫では2型のEBウィルス潜伏感染様式であることから、LMP1が細胞内の遺伝子発現修飾に大きな役割を果たすことが知られる。そこで、濾胞性リンパ腫細胞株にLMP1遺伝子を導入し、その遺伝子発現変化をmRNAシークエンスで解析し、EZH2阻害薬使用時に生じる遺伝子発現変化の異同について比較を進めている。その結果、EZH2阻害薬使用時に生じる遺伝子と重複する一群と重複しない遺伝子群を見出し、区別することができた。そこで現在、H/RS細胞の遺伝子発現を規定するエピゲノム修飾以外の因子を明らかにする研究に取り組んでいる。本研究では、様々なリンパ腫病型の背景に、細胞起源に加えエピゲノム修飾の違いが関与することが明らかにできる可能性がある。各リンパ腫病型の特異的病態にエピゲノム修飾が関与することが明らかにできれば、EZH2阻害薬以外にも様々なエピゲノム修飾作用を持つ薬剤の治療効果を予測したり、新たな治療開発につなげることができることが期待される。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)