新興リケッチア症・日本紅斑熱における重症化回避のための治療法確立
Project/Area Number |
21K08488
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 54030:Infectious disease medicine-related
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岩崎 博道 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 教授 (10242588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲井 邦博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30313745)
廣田 智哉 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (30742845)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 日本紅斑熱 / つつが虫病 / テトラサイクリン / フルオロキノロン / サイトカイン / リケッチア感染症 / ニューキノロン / TACE |
Outline of Research at the Start |
日本固有のリケッチア症「日本紅斑熱」が発見後30年を経ても未だ治療法が標準化できず死亡例が後を絶たない。研究代表者らはテトラサイクリンに難反応性を示した重症例に、ニューキノロンを併用し救命し得た日本紅斑熱症例を経験し公表後、同様の報告が相次いだ。本研究では、「テトラサイクリンとニューキノロンの併用が重症日本紅斑熱の救命治療法になる」との作業仮説を立て、日本紅斑熱に対するこの2系統の抗菌薬による有効性を示す。日本紅斑熱の治療法確立は極めて緊急性の高い、我が国に課せられた課題であり、本研究を通して標準治療の構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
国内の日本紅斑熱の発生報告数は年々増加し(2020年:422例、2021年:490例)、リケッチア感染症として最大の報告数を示してきたつつが虫病(2020年538例、2021年544例)をしのぐ勢いである。これまで日本紅斑熱はつつが虫病に比較し重症化傾向が強く、つつが虫病の特効薬として認識されるテトラサイクリン(TC)の単独治療では十分ではないことも指摘されていた。2019年には年間13例の死亡例が確認され、経験的にフルオロキノロン(FQ)を追加または初期からTCと併用することにより救命できる症例も報告された。 日本紅斑熱が初めて確認されて30年以上が経過したが、治療の標準化はなされないものの、症例の積み重ねはできてきた。過去の症例において治療とその効果の評価が可能なものを抽出し、TC(MINOまたはDOXY)単独群とTC/FQ(CPFX, LVFX etc.)併用群を比較した。PubMedおよび医中誌をもとに2022年3月までの日本紅斑熱の症例報告を検索した。その中から熱型データを評価できた症例を解析し、TC単独群またはTC/FQ併用群それぞれの体温の時系列評価を行った。初回来院(day 1)から10日以内に熱型データが存在し、初回治療がTC単独またはTC/FQ併用である症例が107例 (TC単独群87例、TC/FQ併用群20例)であった。多変量線形回帰分析により患者背景を均質化した。初回治療開始から治療終了(中止)または変更となるまでの期間を解析した。day 4で体温はTC/FQ併用群で有意に低かった(p<0.05)。TC単独群と比較して、TC/FQ併用群は解熱に関して優位に効果があり、解熱までの期間が短縮した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福井大学病院において日本紅斑熱患者の診療を行う機会がしばしばある。もちろん患者の状態を十分に評価しながら、TC単独治療を行う場合と、TC/FQ併用治療を行う場合とがあるが、TC単独群では最終的には治癒するが、解熱するなど症状が改善するまでには長時間を要する。つつが虫病であれば、概ね翌日には臨床症状が軽快することはしばしば経験されるが、日本紅斑熱ではつつが虫病のような経過をとることはまれである。 直近の学会や研究会等にて報告される症例について、治療薬とその効果や臨床経過を注視してきたが、明らかな差異が少数の症例単位では評価は困難であった。日本紅斑熱の重症化の機序が十分に解明されてはいないが、背景の一部にはつつが虫病と比較してもサイトカイン産生の過剰なサイトカインストームがあることが推定されてきた。TCに加え、FQにもサイトカインやケモカインの産生を抑制することが示され、重症化した日本紅斑熱の救命のための一助となる機序が示唆されていた。 DPC情報を用いた症例解析の方法もあるが、診断や初期治療選択後の治療情報の反映が困難なことも多く、TC単独群とTC/FQ併用群の臨床経過に与える影響を評価することは困難と考えた。正確な診断や、正確な臨床経過の情報を評価するためには既に公表されている症例報告を詳細に評価することが妥当と考え、文献によるメタ解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
未解決である日本紅斑熱の標準治療について、TC/FQ併用治療の有用性を支持するメタ解析が進行していることより、このことを結論付けた論文を纏め出版を目指す。今回の検討により、TC単独群と比較してTC/FQ併用群は症状改善に対し優位に効果があり、解熱までの期間が短縮することが明らかになったことより、さらに詳細な臨床経過の解析を進める。「日本リケッチア症臨床研究会」並びに「リケッチア研究会」を介して、最近の日本紅斑熱症例の詳細な検査値の推移や症状の変化を追跡することにより、重症化要因や早期死亡例の原因も明らかにする。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)