がん転移におよぼす麻酔薬の相違:腫瘍免疫に注目したin vivo転移モデルの解析
Project/Area Number |
21K08918
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55050:Anesthesiology-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松尾 光浩 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (70361954)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 麻酔薬 / プロポフォール / イソフルラン / サイトカイン / がん転移 / 動物モデル |
Outline of Research at the Start |
麻酔薬は外科手術時に用いられる鎮静剤であり、その投与経路によって静脈麻酔と吸入麻酔に大別される。しかし、麻酔方法の違いが手術患者の長期的な予後にどのような影響をおよぼすについてこれまでほとんど議論されてこなかった。近年、複数の観察研究によって、長時間のがん切除手術において静脈麻酔は吸入麻酔と比較して術後の生存期間および無再発期間を有意に延長することが明らかとなってきた。しかしその詳細な機序はほとんど解明されていない。そこで本研究ではプロポフォールなどの静脈麻酔とセボフルランなどの吸入麻酔薬が示すがん転移におよぼす影響の差について、特に腫瘍免疫に焦点をあてたin vivoでの解析を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
様々な後方視的研究から、がん手術における麻酔方法(静脈麻酔 vs 吸入麻酔)でその後の患者予後が影響されるということが明らかとなってきた。そこで本研究では、静脈麻酔または吸入麻酔を暴露させた時に、生体中でどのようなサイトカイン変化が起こっているか検討を行った。 7週齢のC57BL/6マウスにプロポフォール(1.5mg/kg/hr、腹腔内/皮下投与)またはイソフルラン(1.5%、吸入)を投与し、入眠直後または麻酔3時間後にそれぞれ血液を回収した(計4群、各群n=2)。抗体アレイはMouse L308 Array (308サイトカイン, AAM-BLM-1-2, RayBiotech社)を用いた。マイクロアレイの結果はGenePatternを用いて解析を行った。各サイトカイン発現量の対数変換値を目的変数として、麻酔方法および麻酔時間を説明変数として重回帰分析を行った。P<0.05(Bonferroni補正後)を有意とした。 抗体アレイの結果の階層的クラスター分析を行ったところ、麻酔方法と麻酔時間で分離できることが明らかとなった。重回帰分析の結果、麻酔方法で発現量が異なっていたサイトカインはIL-1-R2、IL-17A、TIMP-4およびIL-5の4つがあり、いずれもプロポフォール群で発現が有意に上昇していた。主成分分析の結果、第三主成分までの累積寄与率は70.7%であった。一方で、群間内でのばらつきが大きいことが示唆された。 麻酔方法によって異なる血中サイトカイン変化が起こることが明らかとなった。このサイトカイン発現の違いが麻酔方法による予後の差に寄与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記動物実験から安定的な結果を得ることが非常に難しいが、その理由は以下の三つである。一つ目は、バイタルサインの評価が難しいことである。臨床においては、血圧、脈拍数、酸素飽和度および体温などのバイタルサインを連続的に測定している。さらに補足的なデバイスとして、脳波モニタリングや組織酸素飽和度モニタリングなどを臨床では実施することができる。一方マウスではこれらのバイタルサインを測定することは難しい。呼吸数や体動などを視診にのみ頼らざるを得ない。二つ目は、気道管理できないことである。ヒトに対して麻酔薬のみを使用すると呼吸抑制および舌根沈下による低酸素および無酸素状態が生じるため、それを回避する目的で気道管理が行われる。小動物であるマウスに気道確保を行うことは事実上困難である。三つ目は、手術侵襲を考慮できないことである。上記に起因すると考えられる群間内ばらつきを少なくするためには現在の方法では改善が難しいと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、現在実施している研究方針では交絡因子の影響が大きいために、今後は研究の方向性を変えて行う。具体的には、ロボット支援下前立腺全摘術(RARP)患者の血清を用いて解析を行う。RARPを選択する理由は以下の三点である。一つ目は、RARPの手術侵襲が小さいことである。開腹術と比較して、RARPは出血量および術後合併症が有意に少ない(JAMA Netw Open. 2021;4(8):e2120156)。このことは手術自体がサイトカイン変化におよぼす影響が小さいことを示唆している。二つ目は、術中に多くのバイタルサインが測定されることである。当院の2022年の実績によると、ルーチンの術中バイタルサイン測定に加えて、観血的動脈圧および組織酸素飽和濃度が、それぞれ93%および82%でモニターされている。このことは患者の安全性を高めるだけでなく、様々なバイタルサイン変化を考慮して結果解釈できることを意味する。さらに動脈ラインを留置することで採血に伴う手技的な侵襲をさけることができる。三つ目は、患者背景が比較的均一なことである。前立腺手術であることから患者は全例男性であり、かつ手術適応の観点から75歳以上の高齢者は少ない。さらに、全例に気管挿管と陽圧換気が実施される。このように患者背景が均一であることは交絡因子の数が少ないことを示し、少ない症例数で研究実施が可能であることを意味している。 上記研究を遂行するため、現在当院において倫理申請中である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)