Project/Area Number |
21K09566
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56050:Otorhinolaryngology-related
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
高田 雄介 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60623999)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 中耳真珠腫 / 幹細胞ヘテロジェネイティ / 表皮幹細胞 / 先天性真珠腫 / 錐体部真珠腫 |
Outline of Research at the Start |
中耳真珠腫における幹細胞の分化メカニズムが明らかとし、幹細胞分化を制御する因子を解明することができれば、真珠腫の発症・増悪進展を未然かつ安全に防ぎうる新規治療薬の創出につながると考える。 また、従来は真珠腫進展範囲に応じて耳小骨摘出や骨削開範囲が定められるが、その判断は術者による術中所見に限られていた。いまだ知られざる幹細胞の分化条件究明という基礎と、経験ある術者のみの術中判断に頼らざるをえない中耳真珠腫の臨床との融合により、中耳真珠腫の手術と治療に革新的な変化をもたらしうると考える。今後は真珠腫幹細胞能に応じて、より再発が少なく、より聴力が保たれる術式を選択すべき時代が到来しうると考える。
|
Outline of Annual Research Achievements |
中耳真珠腫は、中耳腔に上皮が陥入することにより上皮落屑が堆積し、感染増悪とともに周囲の骨破壊を来す疾患である。鼓膜弛緩部や緊張部に生じた鼓膜陥凹が徐々に進行して耳小骨破壊を来す後天性真珠腫に加え、何らかの中耳手術によって生じた外耳道骨欠損部位から生じる医原性真珠腫もある。また、胎生期の上皮組織の遺残によるといわれる先天性真珠腫の場合には、鼓膜陥凹などの異常がないことから、後天性真珠腫とは別のサイトカインネットワークが発現していると考えられる。 近年の研究により、真珠腫の構成細胞として、新しく上皮幹細胞/前駆細胞と神経堤由来細胞が同定された。後天性真珠腫では鼓膜陥凹から繰り返す慢性炎症が臨床像であるため、炎症や細菌感染で誘導されるサイトカインネットワークで発現した角化細胞増殖因子(KGF)の過剰発現によるパラクライン作用が原因と考えやすい。 その一方で、鼓膜陥凹などの鼓膜に異常を認めない先天性真珠腫では、神経堤由来細胞がより大きな関与しているのではないかと考えられる。上鼓室粘膜が神経堤由来であることは示されているが、先天性真珠腫が鼓膜張筋腱周囲に発生母地をもつことが多いことが臨床的に明らかであり、上皮陥入を起こしていないことから別のサイトカインネットワークが所見増悪に関与すると考えられる。 今回、後天性真珠腫に加え、先天性真珠腫検体サンプリングを継続している。今後は、KGFや神経堤細胞マーカーであるp75蛋白、中耳陰圧にかかわるメカノセンサーの一つである転写共役因子のYes-associated protein(YAP)の解析を加えることにより、臨床像に即した観点や耳小骨破壊の有無などの手術所見から個々の症例の発現特徴をとらえることにより、真珠腫発生機序の飛躍的な解明に繋がると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
鼓膜陥凹のない先天性真珠腫のサンプリング蓄積に注力している。先天性真珠腫はもともと症例数が多くないこともあり、手術および書面同意を得る症例の蓄積には時間を要しているが、それでも徐々に検証に足るサンプルは集積されている。 また、小児に指摘されることが多い先天性真珠腫は手術も小児期に行われることがほとんどであるが、今回先天性真珠腫として矛盾のない成人の真珠腫手術にてサンプルを採取することが出来た。 現在、各症例の凍結標本を統括的に標本作成し、上述のKGF、P75蛋白、YAPシグナルの上流因子として挙げられるIntegrin-linked protein kinase(ILK)、イムノグロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通型糖タンパク質のL1 cell adhesion molecule(L1CAM)を含めたL1CAM-ILK-YAPシグナル伝達経路の解析を、幹細胞の特徴とされているNestinおよびS100B陽性細胞の発現とともに検証を進める準備を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
臨床像として明らかに異なる先天性真珠腫と後天性真珠腫のサンプルを対比させて研究を進める方針としている。上述の如く、鼓膜陥凹などの異常を認めない先天性真珠腫と鼓膜陥凹や繰り返す炎症、中耳陰圧が関わる力学的刺激(メカニカルストレス)が重要な後天性真珠腫では、全く異なるサイトカインネットワークが働いていると考えるのが臨床家として当然と考えている。 先天性真珠腫と後天性真珠腫の各種の発現を比較することにより、中耳真珠腫の発生機序や増悪機序を解明する研究を推進していく。 また、引き続きサンプル採取も継続して行う方針であり、医原性真珠腫や外傷性変化による真珠腫、鼓膜穿孔からの二次性真珠腫など臨床的に発症機序が異なる症例のサンプリング蓄積も同時進行する。
|