緑内障術後創傷治癒におけるエピゲノム変化とメモリー効果に関する研究
Project/Area Number |
21K09703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56060:Ophthalmology-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井上 俊洋 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (00317025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 みゆき 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 医学教育部研究員 (20631766)
藤本 智和 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50756426)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 緑内障 / 創傷治癒 / エピゲノム / 線維化 / ファイブロサイト |
Outline of Research at the Start |
緑内障手術成績改善にあたって、再手術症例では線維化反応が強く生じ、成績が悪いことが臨床上の課題である。線維化と組織硬化との負のフィードバックループの存在、循環ファイブロサイトの線維化関与、環境変化に伴うエピゲノム変化といった近年の新しい知見を踏まえた上で、眼表面組織において、初回手術に伴う環境変化が細胞に記憶され再手術の成績に影響を与える「メモリー効果」が存在するというオリジナルな仮説の検証を行う。動物モデルと次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析から、術後線維化におけるエピゲノム 変化を規定するターゲット因子を絞り込み、線維性変化に及ぼす影響を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
マイトマイシンCを併用しないウサギ濾過手術モデルと併用したin vivoモデルで遺伝子発現を網羅的に比較する目的でRNAシークエンスを行った。術後3時間のデータでは、17014遺伝子のうち、発現変化に有意差のあった遺伝子は2834個であった。このうちエピゲノム因子では、KDM4C、HDAC5、HDAC6、HDAC8、HDAC11、SMYD3、SIRT5、DNMT1、DNMT3Aの発現低下をみとめた。一方、培養結膜線維芽細胞にマイトマイシンC処理の有無で同様に比較したin vitroモデルでは、3時間後のデータでKDM4B、KDM4C、KMT2C、HDAC3の有意な低下をみとめた。以上から、共通する因子としてKDM4Cを同定し、その基質の一つであるトリメチル化H3K9をターゲットとして解析を進めた。下流因子の候補を検索するために、結膜線維芽細胞を用いたin vitroモデルで、マイトマイシンC処理3日後のRNAシークエンスを行った。この結果に対してKEGGパスウェイ解析を行ったところ、DNA replicationとCell CycleがTop2であった。3日後に変動していたCell Cycleの遺伝子のうち、c-Myc、CCNA1、CCNA2のプロモーター領域にプライマーを設定し、抗メチル化H3K9抗体を用いてChIP-qPCRを行ったところ、マイトマイシンC処理後にシグナルが上昇する傾向を認めた。以上の結果から、マイトマイシンC処理によって、結膜線維芽細胞において細胞周期を正に制御する遺伝子のプロモーター領域においてH3K9のメチル化が亢進し、結果としてその遺伝子発現が低下していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウサギを用いた濾過手術のin vivo動物モデルにおいて、RNAシークエンスデータ解析を行うとともに、培養結膜細胞を用いたin vitroモデルでも同様にRNAシークエンスデータを取得し、ターゲット分子を絞り込むことができた。さらに、マイトマイシンCの有無による網羅的遺伝子発現の比較解析を行った結果、in vivoモデルとin vitroモデルで共通したエピゲノム因子としてKDM4Cを同定し、下流の因子としてChIP-qPCRを用いて細胞周期関連遺伝子の解析に着手できた。よって、2年目として、順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoモデルとin vitroモデルで共通したエピゲノム因子であるKDM4Cについての解析を進める。KDM4Cの基質である抗トリメチルH3K9抗体を用いたChIP-qPCRにおいて、未解析であるCCNB1, CCNE1, CCNF, CDK1, CDK2のプロモーター領域の変化を解析する。また、抗KDM4C抗体を用いたChIP-qPCRも試みる。さらに、siRNAや阻害剤(QC6352など)を用いてKDM4Cを阻害し、下流遺伝子発現、細胞増殖に変化があるか検証する。また、濾過手術の動物モデルにおいて、シングルセルRNAシークエンス解析を行い、各種細胞における遺伝子発現の変動を調べ、臨床においてメモリー効果を担う細胞を線維芽細胞以外も対象に検討し、ファイブロサイトを含めた創傷治癒への関与について、次のステップの検証に繋げる。
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Report
(2 results)
Research Products
(10 results)