Project/Area Number |
21K10321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58010:Medical management and medical sociology-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大原 信 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80194273)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2021: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | クリニカルパス / 代行入力 / 臨床指標 / 保険診療 / 電子カルテ / 医療の質 / 診療録 |
Outline of Research at the Start |
診療録は、保険診療において「当該患者の医療行為に伴う費用を請求する根拠」としての一面を持つ。しかしながら、「電子カルテ」環境では、記録としての、保険診療の根幹である根拠が「病名入力」のみに依存し不十分となっている現状がある。 本研究では、適切な保険診療の実施を適切に記録し、かつ検証可能な「電子カルテ」構築を追求する。具体的には、①診療報酬請求の指摘事項の分析、②既に稼働している「電子カルテ」上のクリニカルパスのDPCの視点よりの見直し、③オーダーと対をなす、医師による患者への指導・指示内容記載の明確化、を行う。以上の取り組みにより、適切な保険診療に資する「電子カルテ」システムの構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
「電子カルテ」システム内に登録しているクリニカルパス(以下パス)について保険診療の視点・DPCの視点より検討を行った。検討は「電子カルテ」内に登録されている約1900のうち、実際の使用頻度の高いパス300について実施した。その結果、大きく逸脱しているパスは存在せず、登録時のパス委員会での審査が適切に行われていることが立証できた。しかしながら、詳細に検討すると、パスに組み込まれている「管理料」・「指導料」のうち、「肺血栓塞栓予防管理料」における医師のリスク評価記載、弾性ストッキング装着の医師の実施指示、看護師の実施記録や、留置ドレーンの抜去時間の記載などに不備が存在し、パス内の指示は適切ながらも、その実施記録までの確認が必要なことが判明した。また、パスの使用率についても診療科によって大きく差があり、本院では、呼吸器外科、眼科、循環器内科、乳腺甲状腺内分泌外科においては入院患者において約90%がパスを使用していた。DA(Doctor's assistant)による代行入力についても、外来診療では医師による承認が遅滞なくなされているのに対し、入院診療では一部遅滞もしくは未承認が存在し、今後の課題と考えられた。 今年度、パスの検証に加えて「電子カルテ」の特性を生かし、医療者への情報公開の一環として「電子カルテ」診療データベースより抽出可能な「臨床指標」の取り纏めも実施し、これまで各部門等で独自に抽出していた指標を一元管理する体制を構築した。現在定期的に公開している指標は以下のとおりである。医用画像レポート未読率、医師・看護師退院要約作成率、DA代行入力承認率、看護師代行入力承認率、平均外来待ち時間、病名部位・詳細不明コード使用率、外来血液生化学検査項目実施数。これらの使用は「電子カルテ」第一面の「掲示板」にその結果を掲載し適切な保険診療への注意喚起となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クリニカルパス(以下パス)の分析については、電子カルテ内に登録されかつ使用頻度の多いパスを対象としたため、分析・評価が順調に進んだ。また、登録時にパス委員会にて内容の妥当性が検証され審査が行われていることも大いに寄与した。初年度において「適切な保険診療検証チーム」の活動が軌道に乗っていたため、実際の診療科への聞き取り調査・診療録の調査と「電子カルテ」診療データベースによる抽出・分析が、同時進行で車輪の両輪のように機能したことも大きい。 ただ、パスの検証は、実際に行ってみると、ある程度事前予測されていたことであるが、パスの使用率の高い診療科においては適切な保険診療の検証方法としては非常に有力であるが、①パスの使用頻度の低い診療科(50%以下)においては有効な手段ではないため、今後低い診療科(精神神経科、心臓血管外科、消化器外科、リウマチ膠原病内科、小児科等)については詳細な診療録の監査が必要、②診療科横断の組織である、光学診療部、リハビリセンター、手術部などについては、パスによる検証自体が困難、③病名パス(入院から退院までがまとめられているパス)については、DPC検証が可能であったが、一部の手技や処置に特化したパスにおいては個々について診療録の監査が必須、④パスに含まれる医療行為、投薬内容等の妥当性の検証は容易であったが、パスに含まれる「指導料」「管理料」が適正に加算されているかの検証は医師の指示記録、看護師の実施記録まで詳細なチェックする必要があり、それらの記録が電子カルテ内で分散しているため作業が非効率であった。などの課題も判明した。特に④については、「電子カルテ」の弱点とも考えられ、保険診療に最適化された電子カルテシステム構築に必要なシステム改善点と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまでの研究で判明した、適切な保険診療実施の視点での「電子カルテ」の機能について必要な要件をまとめる。特にクリニカルパス、「指導料」「管理料」の算定要件、代行入力とその承認機能に絞って実施し、単なる個々の機能追加ではなく、診療現場での業務フローを想定し、医師・看護師・DA(doctor's assistant)、診療情報管理士、医事課職員がシームレスに連携して適切な保険診療を実践できるシステムを目指す。最終的には、稼働したシステムに実装したうえでの検証が必要と考えるが、2024年5月にシステム更新を予定している筑波大学附属病院の「電子カルテ」カルテシステムに可能であれば実装し、本研究の期間は超えるが、継続して検証することを考えている。 また、本研究中に政府から発表された「医療DX」について、今後の病院情報システムや保険診療体制に重要なものであるとの認識の下、病院情報システムを管理運営する立場でその実現性・有効性等を本研究の中で考察を加えたい。特に、①マイナンバーカードによるオンライン資格認証、②電子処方箋の発行、③標準化された「電子カルテ」システムについては、あるべき姿ありきで構想されており、診療現場、特に病院情報システム管理の視点での検討があまり重要視されておらず不十分であると考えている。国民のマイナンバーカード発行率は上昇したが、それに対応した「電子カルテ」側のシステム改修が未だ不十分なこと、電子処方箋発行に必要な医師資格証・薬剤師資格証の発行が不十分なことなど現時点でも問題点が指摘されている。これらの問題点につき、国立大学病院医療情報部長会や日本医療情報学会会員とも意見交換し、保険診療に与える影響等について考察し、「医療DX]が診療現場に与える影響について考察したい。
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