シリコン材料による遺体修復用人工皮膚開発-グリーフケアと剖検率の向上を目指して-
Project/Area Number |
21K10382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58010:Medical management and medical sociology-related
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
吉田 昌記 杏林大学, 医学部, 助教 (80445197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高篠 智 杏林大学, 医学部, 講師 (50365201)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 遺体修復 / 人工皮膚 / シリコン / 遺体衛生保全 / グリーフケア |
Outline of Research at the Start |
法医解剖では、損傷の激しい遺体を取り扱うことが少なくない。遺族の悲嘆を少しでも緩和する目的(以下、グリーフケア)と、遺体からの滲出液や臭いの漏出などを防ぐ遺体衛生保全の観点から、解剖後の遺体に適切な修復処置を施すことは極めて重要である。 本研究では、生前の損傷あるいは法医解剖に伴う処置により損なわれた遺体の皮膚に対し、シリコン素材を主体とした人工皮膚を作成し、これを用いて可及的に遺体の外観を生前の状態に修復することを目指す。汎用性の高い人工皮膚の開発により、遺族および社会の法医解剖に対する抵抗感を軽減し、ひいては剖検率の増加につながり、公衆衛生に寄与することが期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、汎用性の高いシリコン製遺体修復用人工皮膚の開発である。まず第一段階として、解剖後の遺体に対し、分光測色計を用いて皮膚色を測定し、色データの収集と解析を行った。具体的には、遺体修復を行ううえで、遺族の目に触れやすい顔面の前額部および頬部、損傷や解剖時のサンプル採取等で修復範囲が広くなる傾向のある胸部ならびに腹部の計4か所を測定部位に設定した。また、これら4か所について、それぞれ3種類の人工皮膚のテンプレート(色白、標準色、色黒)調整プロトコールを確立するため、各部位ごとに分類し、色調データの解析を行った。 初年度から令和3年度4月までに得られた88検体のデータのうち実際に有効なデータ数は、前額部で57、頬部で74、胸部で83、腹部で86であった。理由としては、頭頸部の皮膚色は死後変化やうっ血の影響を受けやすく、胸部や腹部ではそれほど顕著ではないためと考えられる。データ解析の結果、全ての部位の標準色においては、安定した数値が得られた。また、胸部と腹部については胸腹部として同一の基準色設定が可能と考えられた。ここまでの経緯を令和4年度、第106次日本法医学会学術全国集会に於いて発表した。 これまで遺体の皮膚色の平均値および人工皮膚作成の試みに関する先行研究は皆無である。法医解剖後の遺体に対して適切な修復処置を施すことは、遺体衛生保全のみならず、その尊厳を遵守し遺族の悲嘆を緩和するために極めて重要である。本研究の成果により、遺族および社会の法医解剖に対する抵抗感を軽減し、 ひいては剖検率の向上、公衆衛生への寄与が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺体の皮膚色測定部位により、データとして採択できないものが多く、更なる検体数の追加が必要となった。具体的には、体幹部(胸部、腹部)では皮膚色に死後変化の影響が出にくかったが、顔面部(前額部、頬部)ではうっ血や変色が出やすく、採択可能なデータが体幹部の半数程度に留まっている。 また、それぞれの測定部位から得られた色調データを基に、3種類の人工皮膚テンプレート(色白、標準、色黒)の調整プロトコール確立を目標としているが、いずれの部位においても、色白と色黒のデータが著しく少なかった。 さらには、検討を行った症例は50~70歳代の男性が約半数を占めており、年齢・性別の偏りがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、研究期間を通しての目標検体数は、100~150検体を予定しており、令和4年度末までに約160検体を達成した。しかしながら、【現在までの進捗状況】で述べた理由から、幅広い年齢層の男女の皮膚色に対応可能な人工皮膚のテンプレート確立のため、可能な限り検体数を増やし、データの蓄積を目指す予定である。 また、最終的に人工皮膚試作と塗料の選定にも取り組んでいきたいが、本研究で使用している分光測色計は固体の色は測定可能だが、液体の色を測定することができない。よって人工皮膚試作の際、塗料を混ぜながら色を微調整することができず、乾燥後に色の測定を行わなければならない。さらに同機器は高い精度で物体の色を測定可能であるが、測定した数値を実際の色として肉眼で観察することができない。これらが、今後の一番の課題である。 現在のところ考えられる対応策としては、次の通りである本研究に使用している分光測色計には測定値をいくつかの表色系で表示する機能が備わっている。そのうち本研究では、現在一般的に最もよく用いられ、かつ精度の高いとされている表色系(L*a*b*色空間)の数値を解析に用いている。これを別の表色系(XYZ表色系)に切り替えることが可能である。このXYZ表色系は、光の3原色の加法混色原理に基づいており、L*a*b*色空間と比べ、色の再現性に問題があるものの、RGB表示に変換することが比較的容易である。この特性を利用して、本研究に用いている分光測色計の製造販売元コニカミノルタジャパンが作成したXYZRGB変換用Excelファイルにて、色データの変換を行う。これによりあくまでも疑似色ではあるが、色データをRGBカラーで表示・印刷することが可能である。この機能を活用することにより、目標とする人工皮膚の色調整が行いやすくなるのではないかと考える。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)