Project/Area Number |
21K10425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58020:Hygiene and public health-related: including laboratory approach
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
池田 徹也 北海道立衛生研究所, その他部局等, 主幹 (80414316)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | Escherichia albertii / べん毛 / 浸透圧 |
Outline of Research at the Start |
Escherichia albertiiは腸管出血性大腸菌や赤痢菌と近縁の新興感染症原因菌である。E. albertiiは通常の培養ではべん毛を発現せず、運動性を示さないが、低浸透圧培養ではべん毛を産生し、運動する。べん毛を発現している状態のE. albertiiは腸管上皮細胞に侵入する能力を有し、べん毛が病原因子として機能していると考えられるが、そのメカニズムは明らかになっていない。この細胞侵入機構を解明するとともに、その遺伝子群が、株の由来(患者・家畜・食品・環境など)に影響しているのかを明らかにし、食中毒・感染症対策に役立てることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
Escherichia albertiiは腸管出血性大腸菌や赤痢菌と近縁の新興感染症原因菌である。E. albertiiは出血性大腸炎など重篤な症状を引き起こす可能性が指摘されており、公衆衛生上、重要視されつつある。E. albertiiは一部の株で志賀毒素(Stx2aおよびStx2f)の産生が確認されているが、この菌の病原因子については不明な点が多い。これまでに我々は、べん毛が無く非運動性とされてきた E. albertiiが、低浸透圧(水環境)下ではべん毛を産生し運動性を示すこと、腸管上皮細胞内へ侵入するようになることを明らかにしてきた。本研究ではE. albertiiの細胞侵入機構を解明するとともに、非運動性の腸管出血性大腸菌や運動性がないとされる赤痢菌などにも同じ細胞侵入機構が存在するのか明らかにし、これまで知られていなかったべん毛を介した病原性増強メカニズムの解明を目指す。また、この新しい細胞侵入機構に関連する遺伝子群が、株の由来(患者・家畜・食品・環境など)に影響しているのかを明らかにし、食中毒・感染症対策に役立てることを目指す。 令和4年度は、λRedによる相同遺伝子組換えによる欠損株を作製することにより、細胞侵入へのべん毛繊維(フラゲリン)の重要性や、LPS関連遺伝子やtRNA修飾遺伝子のべん毛形成や浸透圧への関与について調査を行った。さらには、ヒト由来株や野鳥由来株の収集を積極的に行い、保有株数はヒト由来で100株以上、野鳥由来で90株となった。これにより、今後実施を予定している由来による運動性や細胞侵入能の違いをより詳細に解析することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
収集した菌株のゲノム解析により、非運動性株からfliF、flgLなど複数のべん毛関連遺伝子の変異が見つかっていた。べん毛のどの部分が細胞侵入に必要なのか明らかにするために、λRedによる相同遺伝子組換えを用いて運動性株からべん毛全体が形成されないfliF欠損株とフックまでしか形成されないflgL欠損株を作製した。これらの欠損株がCaco-2細胞へ侵入するか調べたところ、どちらも細胞への侵入が著しく低下していた。flgL欠損株の細胞接着は親株と同程度であったが、fliF欠損株の細胞接着はむしろ上昇していた。これらの結果から、べん毛繊維(フラゲリン)の有無が細胞侵入を決める重要なファクターであることが明らかとなった。 EZ-Tn5トランスポゾンとTIS-seqを用いた運動性に関わる遺伝子のスクリーニングからは、リポ多糖類(LPS)産生に関わる遺伝子群やtRNA修飾に関わる遺伝子群がリストアップされた。λRedを用いて遺伝子欠損株を作製し運動性を確認したところ、LPS関連遺伝子欠損株(3株)では運動性が低下し、tRNA修飾遺伝子欠損株(3株)では上昇していた。べん毛を回収してSDS-PAGEをおこなったところ、LPS関連遺伝子欠損株からはFliC(フラゲリン)が検出されず、LPS産生に異常があるとべん毛形成が阻害されることが分かった。tRNA修飾遺伝子欠損株の一つは浸透圧が低下しても運動性やfliC mRNAの発現量に大きな変化が見られず、低浸透圧の感知に関わっている可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
E. albertiiにおける細胞侵入とべん毛の関連性が明らかになってきた。今後は、腸管出血性大腸菌の一部や赤痢菌のようなE. albertiiと同様に非運動性でありながらべん毛関連遺伝子群を有している細菌についても検証していく予定である。当所では、このような非運動性の大腸菌や赤痢菌を多く保有しており、これらの株についてもゲノム解析を実施し、べん毛関連遺伝子について明らかにしていくと同時に、浸透圧や温度等、様々な培養条件を検討して、これらの株でべん毛を産生する条件を探す。これにより運動性が認められた株については、Caco-2細胞と共培養することにより、E. albertiiと同様に細胞侵入が起こるかについて調べる。 E. albertiiについては収集が進み、研究開始当初と比べ、保有する株数は倍以上となった(ヒト由来123株、野鳥由来90株、ウマ由来1株、サル由来1株の計215株)。これらの株のほとんどは、北海道で分離された株である。このように、同一地域でヒト株と野鳥株がこれだけ確保できているのは貴重であり、ヒト株と野鳥株の本質的な違いについて明らかにしやすくなった。これらの株については、順次、ゲノム解析を行い、それぞれの株の関連性を明らかにすると同時に、41種類あるべん毛関連遺伝子、LPS関連遺伝子、tRNA修飾遺伝子それぞれの有無およびその配列を調べていく。これらの結果を運動性試験の結果と比較することにより、それぞれの遺伝子と運動性消失の関連性を野外株でも明らかにする。
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