Project/Area Number |
21K11717
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59040:Nutrition science and health science-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
内田 さえ 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (90270660)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 嗅覚 / 認知機能 / コリン作動性神経 / 血流 / 注意機能 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,高齢者の認知機能低下の早期検出および,認知機能の活性化に最適な嗅覚刺激法を開発し,その機序を基礎研究で解明することを目的とする.高齢者を対象とした臨床研究では,快臭,不快臭などによる嗅覚機能とコリン作動性神経系の関わる認知機能との関連性,嗅覚刺激が認知機能を活性化する可能性を検討する.実験動物を用いた基礎研究では,嗅覚脳領域における血流反応に認知症で脱落するコリン作動性神経系が関与するかを調べる.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高齢者の認知機能低下の早期検出および,認知機能の活性化に最適な嗅覚刺激法の開発を基礎および臨床の双方から目指す.基礎研究では,認知症で脱落する脳内コリン作動性神経系が,嗅覚脳領域の血流反応に与える影響を調べる.臨床研究では嗅覚と認知機能との関連を調べ,嗅覚刺激が認知機能を活性化する可能性を検討する. 2023年度は第一に昨年度までの成果である嗅球のコリン作動性血流調節の加齢変化に関する結果を,新皮質血流と比較しながら英文総説にまとめて,国際誌に発表した.脳内ニコチン性受容体(nAChR)α4β2サブタイプの活性化は,新皮質の血流増加を起こし,嗅球の嗅覚刺激時の血流応答を増大させる.これらのα4β2サブタイプnAChR機能の加齢に伴う低下は,新皮質では約3年齢で,嗅球ではより早期の2年齢で起こることが示された.加齢に伴うnAChRを介する新皮質と嗅球の血流調節の低下は,高齢者の嗅覚低下や認知機能低下に関わる可能性がある. 第二に嗅覚二次中枢である梨状皮質に着目した基礎研究を進めた.梨状皮質は嗅球とともに,前脳基底部(ブローカの対角帯核の水平脚)に由来するコリン作動性神経が入力する.2023年度は梨状皮質の局所血流を測定し,前脳基底部刺激の影響を調べた.前脳基底部の化学刺激が梨状皮質の局所血流を増加させることを見出した.梨状皮質は異なる嗅覚受容器からの情報の統合や嗅覚記憶の固定化に関わる嗅覚脳領域である.本研究で明らかとなった梨状皮質の血流調節は,ニューロンの保護や機能維持に働くことで,嗅覚機能の維持に役立っていることが予想される. コリン作動性神経系に着目して嗅覚刺激法の開発を行う本研究は,認知症の早期発見と予防に嗅覚刺激を実用化するための科学的基盤となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,高齢者の認知機能低下を早期に検出し,認知機能の活性化に最適な嗅覚刺激法を,基礎と臨床研究の双方から開発することである. 2023年度は第一に昨年度までの基礎研究成果を英文総説として発表した.嗅覚一次中枢の嗅球は,認知機能を担う新皮質とともに前脳基底部コリン作動性神経の入力を受ける.ニコチン受容体(nAChR)機能に着目して,嗅球と新皮質の血流反応の加齢変化を比較した.成熟ラットにおいて嗅覚刺激時の嗅球血流増加反応は,脳内nAChRα4β2サブタイプの活性化により増大する.この嗅球のnAChR機能は約2年齢の老齢ラットで減弱する.新皮質の血流は,脳内nAChRα4β2サブタイプの活性化により増加する.この新皮質のnAChR機能は約2年齢の老齢ラットで維持されており,約3年齢で顕著に低下する.嗅覚機能は加齢に伴う低下に加えて,認知症の初期から低下する.脳内nAChRα4β2サブタイプの機能低下が,加齢や認知症における早期の嗅覚低下に関わると考えられる. 第二に嗅覚二次中枢である梨状皮質に着目した基礎研究を進めた.梨状皮質は嗅球とともに,前脳基底部(ブローカの対角帯核の水平脚)に由来するコリン作動性神経が入力する.2023年度は梨状皮質の局所血流を測定する手技を確立させ,さらに前脳基底部刺激による応答を観察した.直径の細いレーザードップラー血流計プローブを用いることにより,梨状皮質の局所血流の安定的な測定を可能とした.前脳基底部の化学刺激が梨状皮質の局所血流を増加させることを見出した.同化学刺激は血圧には殆ど影響を及ぼさないことが分かった.従って梨状皮質血流の増加は,積極的な血管拡張に起因した反応である可能性が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
嗅覚二次中枢の梨状皮質に着目した基礎研究を更に推進させる予定である.具体的には梨状皮質に投射する前脳基底部コリン作動性神経の生理機能を,アセチルコリン放出と血流反応から観察する. 梨状皮質に投射するコリン作動性神経の起始核(ブローカの対角帯核の水平脚)の化学的刺激が,梨状皮質の細胞外アセチルコリン放出量を高めること,さらに局所血流を増加させることを昨年度までに見出した.これらの結果をもとに,今後の研究においては局所血流の増加がコリン作動性神経の活性化に起因する可能性を調べる予定である.第一に梨状皮質の血流増加が,コリン作動性神経の起始核の刺激に特異的であるかを調べる.第二に梨状皮質の血流増加が,アセチルコリン受容体遮断薬により抑制されるかを検討する.アセチルコリンのムスカリン性とニコチン性の両受容体の関与を,各々の受容体遮断薬を用いて調べる予定である.これらの実験から,梨状皮質に投射するコリン作動性神経の生理機能として血流調節の役割を明らかにする.更に,これまでの研究成果を論文発表に向けてまとめる予定である. 嗅覚一次中枢の嗅球,二次中枢の梨状皮質に投射するコリン作動性神経の血流調節機能を解明する本研究成果は,認知症の早期に起こる嗅覚障害のメカニズムの神経基盤の解明につながる重要な研究である.嗅覚と認知機能の関連性をコリン作動性神経に着目して解明することにより,高齢者の認知機能低下の早期発見と,認知機能の活性化に最適な嗅覚刺激法の開発につなげることを目指す.
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