Project/Area Number |
21K12139
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 62020:Web informatics and service informatics-related
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
出口 弘 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (60192655)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 生産会計 / 代数的実物簿記 / 会計システム理論 / 製造工程 / スコープ1、2、3 / 非財務情報 / 排出権取引 / バッズ / 交換代数 / データ伝票 / POEデータ / 摘要 / JSON形式 / 会計公準 / 実物簿記 / リアルタイムエコノミー / 複合データ伝票 / 電子インボイス / X-Road |
Outline of Research at the Start |
本研究では、経済・社会的活動により日々生成されるトランザクションデータの記述を「代数的な実物簿記」という簿記を代数的に定式化して拡張した数理により行う。その上で、様々な組織および組織間でのトランザクションデータの測定に始まり、その代数的定式化、データレジスター上へのリアルタイムの蓄積、検索と計算による利活用までの一貫した、組織及び組織間のデータ処理と利活用のアーキテクチャを提案し実装し評価する。 本研究では、このデータ処理をサプライチェーン上に拡張し、企業相互のトランザクションデータのトレーサブルな記述やその会計処理などのデータ処理、およびそれに基づいた認証や監査のあり方を問い直す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、多元的実物簿記に基づく生産会計概念を用いることで、製造工程の投入産出を実物単位での複式実物簿記により記述でき、その結果非財務データとしての地球温暖化ガスや廃棄物の処理などが複式簿記として統合的に扱えることを示した。従来、環境データなどの非財務データは、会計処理の範囲外として複式の状態記述との統合が行われておらず、そもそも生産工程自体が、複式簿記による状態記述が行われていなかった。 これに対して本年は、財やサービスの製造工程を代数的実物簿記である交換代数で複式化した生産会計と、そこでの投入産出仕訳を用いて、生産管理、製造工程でのエネルギーや廃棄物の会計処理、インボイスなどを通じたサプライチェーンでの財や廃棄物のトレーサビリティまで、代数的実物簿記に基づく複式の状態記述で全体像を統合的に描き出し、それを出口弘著『会計システム理論』白桃書房、2024年2月、として上梓することができた。 本書では、三部構成で、第一部 多元実物簿記と生産会計、第二部 生産会計の応用と非財務情報、第三部 複式システムの数式表現に基づく会計情報処理、及び付録からなる。第一部では従来の複式簿記と代数的多元複式簿記の差を明らかにすると同時に、会計公準を拡張し、ロット単位での投入産出仕訳を基礎として、金銭のみならず財の物理的な実物計測での評価も認める、多元実物簿記による生産会計の概念を導入した。 第二部ではこれを具体的な製造工程の事例に応用し、投入産出仕訳の概念を明確化し、生産管理の体系が多元実物複式簿記を中心に統合できることを示した。また排出権取引や地球温暖化ガスの排出などの非財務情報を扱うことが可能となることを示した。 第三部では、生産会計の情報処理の基礎概念を明確にすると同時に、生産会計に基づく会計概念をサプライチェーン全体へと拡張し、国民経済計算のコモディティフロー概念との接続を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、既存の会計学の会計公準が前提としている、「企業のような永続的主体に対して、企業の実現した損益に関して、金銭単位でこれを計測し、期間単位でこれをステークホルダーに報告する」という原則を、拡張し、ロット単位での投入産出仕訳を基礎として、金銭のみならず財の物理的な実物計測での評価も認める、多元実物簿記による生産会計の概念を導入した。これにより、企業内で扱っている地球温暖化ガスなどの製造工程でのバッズの排出や、人的資本やエネルギーの投入などの非財務情報を扱うことが可能となった。 だが生産会計に基づく会計概念の拡張を、製造工程単位、企業単位で用いるのみならず、さらにこれをサプライチェーン全体へと拡張し、国民経済計算のコモディティフロー概念との接続を図ったことで、これらの概念の全体像を統合するために、多くの時間を費やすこととなった。結果として拙著『会計システム理論』白桃書房、2024年2月刊、を全体概念の統合の成果として上梓することができたが、『会計システム理論』の執筆と校正に多大な時間を要したため、本来開発を進めるべきであった、交換代数の情報処理における、交換代数のJAVAライブラリー化の設計と実装が遅延した。 また多元実物簿記による複式状態記述で企業システムの情報処理を統合的に記述できることを示したことに伴い、人的資本及びインタンジブル・アセットの投資及び、国民経済計算との関係、地球温暖化ガスの排出規制に関する情報処理の設計など新たな課題が生じその対処が必要なことも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
代数的な多元実物簿記では、複式簿記の会計公準を拡張することで、実物単位を含み、生産工程などの非永続的な製造プロジェクトに対して、製造期間単位で、金銭単位(価格)のみならず実物単位(量)での計測を許す複式状態記述が可能となった。これにより製造工程での、原料の投入と製品・仕掛品の産出のみならず、エネルギー・人的資本の投入と廃棄物・地球温暖化ガスの産出の状態記述も可能となった。しかし他方で、財務管理と生産管理、排出物管理、人的資本管理など、企業の情報処理の大部分が、多元実物処理の数式計算でできるようになったことで、その情報処理システムに関する、より統合的理解が必要となった。現在のERPなどで扱われている企業情報処理は、データベースソリューションが中心であり、それをマイクロサービス化して、周辺サービスをAPI接続すると主張しても、コアの情報処理システムは手続き的であり、我々が主張する、代数的実物簿記での関数計算に基づくマイクロサービスの概念とは乖離がある。これらの乖離を埋めたより統合的な企業の情報処理システム像を確立することが今後の研究の一つの重点課題となる。特に交換代数の情報処理における、交換代数のJAVAライブラリー化の設計と実装が課題となる。 さらに多元実物簿記による複式状態記述で企業システムの情報処理を統合的に記述できることを示したことに伴い、人的資本及びインタンジブル・アセットの投資及び、国民経済計算との関係、地球温暖化ガスの排出規制に関する情報処理の設計など新たな課題への対処が必要なことも明らかとなった。これに対処することも重要な課題となる。これらはいずれも現在存在しない状態記述を組織や国のマネジメントのために導入するという提案を含んでいる。未だ在らざる「状態空間という新しい現実」を社会に構築する方法論的な意味と意義についての考察もまた課題となる。
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