湖沼生態系への温暖化対策の影響解明に向けた環境DNAによる新たな評価手法の構築
Project/Area Number |
21K12273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63040:Environmental impact assessment-related
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
槻木 玲美 松山大学, 法学部, 教授 (20423618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鏡味 麻衣子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20449250)
土居 秀幸 京都大学, 情報学研究科, 教授 (80608505)
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 堆積物DNA / 動物プランクトン / カイアシ類 / 琵琶湖 / 植物プランクトン / 古陸水学 / 温暖化 / 水位操作 / 近過去 / 環境DNA / 湖沼 / 寄生者 / 環境変化 / 微生物 |
Outline of Research at the Start |
温暖化の進行で懸念される異常豪雨の頻発化に備え施行された水位操作は湖沼生態系にどのような影響を与えているだろうか。本研究は環境DNAを用いてこれまで復元ができなかった微生物相の変動を再現する手法の高精度化を推進する。そして魚類資源の餌である動物・植物プランクトンとこれらプランクトン動態に影響を及ぼす寄生者(ツボカビ・ウイルス)の過去100年にわたる微生物相の変動を再現することで、温暖化や異常気象に備えた水位調節の対策が琵琶湖生態系に及ぼした波及効果を解明することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
我が国最大の湖である琵琶湖は、温暖化の進行で懸念される豪雨の頻発化に備え、1992年から水位操作が施行されている。この水位操作は湖岸帯や浅瀬を産卵場として利用する魚に深刻なダメージを与え、餌であるプランクトン相にも影響が及んでいる可能性があり、生態系全体への影響が懸念されている。しかし、これまで主要な餌である動物プランクトン相の長期動態は、よく判っていなかった。このような中、生物観測技術として注目される環境DNAの活用が、生物の長期変化を明らかにする古生物分野でも急速に進展しつつある。 そこで本研究は、新たに堆積試料中の環境DNA(堆積物DNA)を駆使して、これまで長期動態を捉えることが難しかった動物プランクトンやプランクトンに大きな影響を与えうる寄生者を含む微生物相の長期変化を再現し、水位調節のような環境変化が琵琶湖生態系にどのような影響を与えてきたのかを解明することを目的としている。これまでに主要な動物プランクトンのEodiaptomus japonicus(ヤマトヒゲナガケンミジンコ)やカブトミジンコ(Daphnia galeata)・プリカリアミジンコ(Daphnia pulicaria)を対象に、定量PCR法により過去100年にわたる各種の堆積物DNA濃度の変化を明らかにした。今年度はカイアシ類の結果を公表し(Nakane et al. 2023)、 ミジンコ類の結果(Tsugeki et al. 2022)と合わせて堆積物DNAによる動物プランクトン動態復元の有効性について先駆的に明らかにしてきた。また大型のプリカリアミジンコに関して、本種の侵入や増加要因についてさらなる解析を進めたところ、1990年代以降の魚類資源低迷が本種の侵入と定着を容易にし、興味深いことに本種の拡大が近年、琵琶湖で問題視されている大型植物プランクトンの大発生に寄与した可能性を見出した(Tsugeki et al. in preparation)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水位操作が生態系へ及ぼす影響を評価する上で欠かせない動物プランクトンの長期動態について、今年度、堆積物DNAによるヤマトヒゲナガケンミジンコの長期動態の復元に関する成果を予定通り発表した(Nakane et al. 2023)。本種は、100年以上前から現在までの全ての試料から、連続的に堆積物DNAが検出され、その濃度が1970年頃より毎月1回程、実施されてきた定期観測サンプルに基づく生産量・現存量・急発卵と有意な正の相関関係を示す一方、休眠卵等と有意な関係を示さないことを見出した。逆にミジンコ類は、堆積物DNA濃度が個体数ではなく、休眠卵数の変動とよく一致していた(Tsugeki et al. 2022)。以上の結果から、主要な動物プランクトンの長期動態は堆積物DNAを分析することで、迅速簡便に復元できる可能性が高いこと、さらに堆積物DNAから捉えられる特性は種によって異なり、カイアシ類では生産量や現存量の変化をミジンコ類は休眠卵量の変化を捉えられる可能性を突き止めた。 また1990年代後半に突然出現したとされる大型のプリカリアミジンコの定着要因について、休眠卵を用いてさらなる解析を進めた所、魚類資源の低迷が本種の侵入定着を可能にし、このミジンコの拡大が現在、琵琶湖で大きな問題となっている大型植物プランクトンの大発生を誘引した可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題で、これまで全く情報が得られなかった過去100年以上前から現在までの主要な動物プランクトン、ヤマトヒゲナガケンミジンコやミジンコ類の変動を、堆積物DNAから明らかに出来ることを示してきた。最終年度の2023年度は、水位操作が実施された1990年代からの魚類資源低迷がカスケード効果により、動・植物プランクトン全体に影響を及ぼしてきた可能性を明確にし、成果として取り纏める予定である。並行して真核生物やプランクトンに寄生する真菌類・感染ウイルスの動態を明らかにするための解析を進める。最終的に水位調節のような、近年の豪雨対策による環境変化が湖沼生態系に及ぼしてきた影響について、複数の栄養段階にある生物を考慮に入れ、生物間相互作用の変化を介して生態系に及ぼした影響を明らかにしていく予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Investigating the effects of anthropogenic stressors on lake biota using sedimentary DNA2023
Author(s)
Barouillet Cecilia、Monchamp Marie‐Eve、Bertilsson Stefan、Brasell Katie、Domaizon Isabelle、Epp Laura S.、Ibrahim Anan、Mejbel Hebah、Nwosu Ebuka Canisius、Pearman John K.、Picard Mailys、Thomson‐Laing Georgia、Tsugeki Narumi、Von Eggers Jordan、Gregory‐Eaves Irene、Pick Frances、Wood Susanna A.、Capo Eric
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Journal Title
Freshwater Biology
Volume: -
Issue: 11
Pages: 1799-1817
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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