大規模森林火災跡地に生成する多環芳香族炭化水素類の挙動と毒性発現機構の解明
Project/Area Number |
21K12276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64010:Environmental load and risk assessment-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐澤 和人 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (80727016)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 森林火災 / 多環芳香族炭化水素 / 土壌有機物質 / 土壌有機成分 |
Outline of Research at the Start |
大規模森林火災発生時に土壌有機層で生成される多環芳香族炭化水素(PAHs)とPAHs誘導体は強い毒性を有していることから、その起源、生成条件、および、生態リスクを明らかにすることは重要な課題である。本研究では土質が異なる国内外の土壌を、実験室内において様々な条件下で加熱・恒温培養することで、森林火災時に土壌有機層内で生成されるPAHs、PAHs誘導体はどのように生成・挙動するのかを評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①森林火災時に土壌有機層内で生成されるPAHsの濃度・組成は表層と下層でどのように異なるのか?②森林火災後の土壌内でPAHsおよびPAHs誘導体はどのように生成・挙動するのか?③PAHs、PAHs誘導体の生体への取り込みと毒性強度は土壌内の共存成分によってどのように変化するのか?という3つの「問い」を設定し、研究を展開する。 本年度は泥炭を昨年度の温度条件(300~600℃)よりも低温で加熱し、PAHsの分析を行った。その結果、標準空気下、窒素雰囲気下において200℃で加熱した場合、ともに同程度の濃度のPAHsが土壌内で生成するということが明らかになった。その濃度は300℃以上で加熱したものと同じであり、組成の特徴にも大きな違いはなかった。 火災時に土壌表層、下層の有機成分がどのように変質するかを、実験室内で酸化的および嫌気的雰囲気下で加熱したインドネシア熱帯泥炭を熱分解GC/MSから評価・比較した。その結果、標準空気下で加熱した試料では400℃以上で、窒素雰囲気下で加熱した試料では500℃以上でリグニン由来のピークが消失し、脂肪酸のみが検出されることが分かった。一方で、加熱土壌のPAHsの濃度、組成と熱分解GC/MSの結果には関係性はみられなかった。 PAH誘導体の一つであるPAHキノンをフミン酸と共存させ、藻類生長阻害試験から毒性を評価した。過去に行った我々の研究成果ではナフタレンの毒性はフミン酸の共存により緩和し、その程度はフミン酸の芳香族性と強く関係していることを報告している。分析の結果、ナフタレンのキノン体である1,4-ナフトキノンの毒性はフミン酸の共存によって変化せず、環境中でフミン酸の共存によって発現するキノンPAHの毒性変化はPAHsとは異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定していた加熱土壌の恒温培養実験が遅れているため。現在、ピートモスを用いた予備実験を行っており実験の系が確立出来次第、熱帯泥炭試料を用いた試験を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱土壌に一定量の水を加え振とう後、得られた残渣に含まれるPAHsを分析することで、それらの溶脱性を明らかにする。また、土壌中の腐植成分とPAHsとの相互作用を評価するため、アルカリ抽出後に得られる残渣中のPAHsを分析する。 加熱実験後の土壌を恒温機内で含水率を一定に保ちながら培養する。酸化的・嫌気性的雰囲気下で恒温培養することで土壌表層、下層内の環境を模した実験を行う。培養中は一定期間ごとに土壌内に含まれるPAHsの濃度・組成変化を明らかにする。また、水抽出、アルカリ抽出を行い得られた残渣についてもPAHsを分析する。培養期間中に得られた結果から、火災跡地表層、下層におけるPAHsの分解、および、水圏への溶脱性、腐植成分との相互作用について明らかにする。 室内実験下において検出されたPAHs、PAHs誘導体の水溶性有機成分共存下における細胞への取り込み機構、および、細胞内における毒性の発現機構を明らかにする。異なる条件で加熱した土壌試料の水溶性有機成分を得る。各PAHs、PAHs誘導体を炭素濃度が一定になるように調製した水溶性有機成分に共存させ、ラット副腎髄質褐色細胞腫(PC-12細胞)、植物プランクトンに対する影響をみる。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)