水中残留化学物質の生態系曝露量を精度高くモニタリングする改良型POCISの開発
Project/Area Number |
21K12278
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64010:Environmental load and risk assessment-related
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
須戸 幹 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50206570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩間 憲治 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (60269727)
中村 卓 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (80344050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | POCIS / 微量化学物質 / モニタリング |
Outline of Research at the Start |
河川や湖沼に残留する農薬や日用医薬品が、中長期的に生態系に与えるリスクを評価するためのモニタリング手法として、近年パッシブサンプラー(POCIS)が着目されている。しかし、POCISの国内での応用例はほとんどなく、流速や水温など様々な環境条件がサンプラーの集積量に与える影響も不明な部分が多い。 本研究では、従来のPOCISを基にして改良型POCISを開発し、化学物質の集積理論式を構築する。また、新たに作成する室内実験装置を用いて、さまざまな環境条件が改良型POCISの化学物質集積量に与える影響を検討する。さらに実際の河川や湖沼のモニタリングに改良型POCIS用い、その有用性を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
パッシブサンプラー(POCIS)は、河川や湖沼に残留する農薬や日用医薬品の中長期間の平均濃度を明らかにするツールとして着目されている。本研究では改良型POCISの創出、フィールドの環境がPOCIS集積量に与える影響の定量的評価、および実際のフィールドにおける改良型POCISの有用性の検証を目的としている。 初年度に作成した2つの改良型POCISのうち、2022年度の実験には操作性、利便性を高めたタイプB(吸着樹脂のHLB樹脂とPESフィルターの間にシリコンリングで1.0mmのスペースを設け、吸着樹脂をネジを切ったステンレス製外枠と雄ボルトを差しこむ外枠で挟み込む構造)を用いた。 POCISの集積量に河川流速が及ぼす影響について、小型プール(2x3x1m)内で農薬を添加した水を循環させ、途中にパッシブサンプラー(縦列方向に3連)を入れたホースを通過させる実験装置で検証を行った。農薬濃度は2021年の50μg/L前後に対して2022年は1~2μg/Lの低濃度条件で行い、流速が0~0.12m/sの範囲では流速の低下により集積量が30~50%減少することを確認した。 POCISの設置方向(河床に対して横置きまたは縦置き)が集積量に及ぼす影響を止水条件で検討し、横置きの場合は下面側のPESフィルターからの浸透が抑制されるため、POCISと河床との間にはある程度の空間が必要であることを明らかにした。 環境水中に残留する医薬品へのPOCISの適用性を検討するために、生産量が多い、あるいは使用頻度が高い抗菌剤、および大腸菌の耐性率が高い医薬品をピックアップし、種々の固相樹脂からの回収率とLCMSMSによる定量分析の可否を検討した。回収率が高い抗菌薬が多かったHLB樹脂は汎用性が高いと考えられたが、一部の化合物では他の樹脂を用いることがより適切と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、1)改良型POCISの創出と理論式の構築を行う、2)改良型POCISの集積性に影響するさまざまな環境要因の検証を行う、3)フィールドでの検証実験を行うことである。このうち2023年度は、より利便性の高い改良型POCIS(タイプB)を用いて低い農薬濃度条件下で農薬集積量を検証し、環境要因のうち流速が与える影響はタイプAと同様であることを明らかにした。さらに、POCISの設置方向が集積量に及ぼす検討と、いくつかの抗菌剤においてPOCISに用いる樹脂への適合性を検討したことから、課題1および課題2の一部を達成できたと考えている。 一方、1)の課題に関連して、改良型POCISの物質移動を速度論的に解析するモデルの構築も目標の一つであるが、現在のところ予備実験の段階にとどまっている。従来のPOCISはHLB樹脂をPES膜で直接挟み込む構造であるが、改良型POCISで樹脂とフィルターの間にシリコンリングで1.0mmのスペースを設けた影響の解析を行う必要がある。また3)については、グラブサンプリングとパッシブサンプリングを同時に行うフィールド調査による検証はまだ実施できていない。 以上のことから、2022年度までに目標としていた内容のうちPOCIS内でのモデル式の構築に関する追加実験が必要であるが、改良型POCISを実際のフィールドで中長期的な平均濃度を精度高くモニタリングするツールとして開発する目標に対しては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的を達成するための今後の研究の推進方策は以下の通りである。 ・止水や低流速時にPOCISへの集積量が減少することは、これまで水膜境界層の形成と乱流による境界層の破壊で説明されている。本研究における小型プール実験では3連のPOCISをそのまま直列に繋げる方法で行ってきたが、実際のフィールドではPESフィルターの破損を防止するために保護籠に入れることが想定される。そこで、保護籠に入れた状態で実験できる装置を作成し、よりフィールドに近い状態で流速が集積量に及ぼす影響の検証実験を行う。 ・POCISのPESフィルター内にできる水層から直接採水できる装置を組み立て、POCIS内に浸透した農薬成分の動態を解析することで物質移動モデルを構築する。 ・改良型POCISを農薬成分や抗菌剤、医薬品など広汎な化学物質に適用させるために、さまざまな吸着樹脂を用いた実証実験を行う。 ・農地河川および市街地河川において、実際のフィールドで改良型POCISの有効性を確認する実証調査を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)