Project/Area Number |
21K12442
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
藤永 康政 日本女子大学, 文学部, 教授 (20314784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 黒人 / 人種 / アメリカ合衆国 / ジェンダー / 社会運動 / 公民権運動 / ブラックパワー運動 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、ブラック・ライブズ・マター運動(以下、BLMM)をブラックパワー運動との関連から実証的に検証し、ポスト公民権時代のアメリカ合衆国で「人種」が果たす役割を明らかにすることにある。BLMMを歴史的文脈に置く本研究が明らかにすることは、ブラックパワー運動の歴史的な意義、遺産と課題でもある。したがって、本研究は、公民権運動・ブラックパワー運動史研究にBLMMを統合することで、〈黒人自由闘争〉の最新の展開たるBLMMを黒人運動史のなかで文脈化しながら、この分野における研究の新領域を切り開くことを目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度で3年度目に入った本研究は、研究着手当初には新型コロナウィルス感染症の影響を直接受け、海外でのリサーチが進まないままで国内での研究に集中せざるを得なかったが、本年度末にニューヨーク市、およびノースカロライナ州グリーンズボロでのリサーチを実施することができるなど、本格的に軌道に乗ってきた。具体的な進行状況、ならびに研究実績は以下のとおりである。 過去2年間の国内での調査で判明したもっとも重要なポイントは、ブラック・ライヴズ・マター運動勃興の契機となった警官暴力(police brutality)の問題は歴史的に形成されてきた米国での人種関係を色濃く反映したものであるということである。かかる点は、主題が異なるゆえに間接的ではあるが、早速、中野聡・木畑洋一編『岩波講座・世界歴史23巻―冷戦と脱植民地化Ⅱ』所収の拙稿「「ブラック・パワーとリベラリズムの相剋―デトロイトの黒人自由闘争」に活かして議論を展開した。また、本年度は、2024年度に発表を予定している本格的な実証研究論文の序論にあたるものとして、ブラック・ライヴズ・マター運動、ならびに刑罰国家論に関する日本における議論を整理し、その成果を『日本女子大学文学研究科紀要』第30号に発表した。 また先伸びしていたアメリカ合衆国でのリサーチも本年度その第一弾を実施し、刑罰国家の歴史的側面に集中して史料収集・現地調査を行った。まずニューヨーク市立図書館ショーンバーグセンターでは60年代のラディカルな運動に関わる文書史料を調査した。また、ブラック・ライヴズ・マター運動は激しい直接鼓動を特徴としている。そこで、1960年に同様のスタイルでの抗議行動が開始されたノースカロライナ州グリーンズボロに赴き、現在当時の模様がどのように記憶・記念されているのかを確かめるために、International Civil Rights Center & Museumで調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の本研究は、学術的な研究と大学教員としての日々の教育上の気づきが好循環を取り戻し、本研究もおおむね順調に進展した。わけても『日本女子大学文学研究科紀要』に発表した論文は、国内での研究に集中して従事せざるを得なかった過去2年間の研究成果をまとめ、本研究における中間報告的なものとなり、学術的な議論を精査するだけでなく、藤永康政が行っている授業への学生の反応も踏まえた総合的なものとなった。また本論文において、刑罰国家の成り立ちを米国の警察機構構築の歴史から論じて、今後の研究発表の土台を整理することができた。 他方、先延ばしにされていたアメリカ合衆国でのリサーチも良好な結果になった。ニューヨークでのリサーチでは、南部におけるジム・クロウ制度が最大の懸案となっていた1960年代において、北部都市ではすでに警官暴力の問題が最大の懸念であったことを確認できたし、グリーンズボロでの調査では、ブラック・ライヴズ・マター運動の中心である今日の「Z世代」と、冷戦の産物でもある公民権運動の世代との差異を改めて認識することができた(後者の運動には愛国心が大きな役割を果たしているが、前者はそうではない)。 以上の二つの進展の結果、2024年度以後の研究の堅い基礎を築くことができ、今後の研究の展望が大きく開けることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画に関わることであるがゆえに、ここで報告することになるが、2023年度の研究は、アメリカ合衆国でのリサーチを中心にする予定であった計画を少しばかり変更して、教育に関わる時間が大幅に少なくなった研修期間であることを有効に利用し、過去2年間の研究成果をまとめることに集中した。というのも、新型コロナウィルス感染症の影響を直接受けて当初計画を大幅に変更せざるを得なかったため、本研究最終年度を計画的に推し進めるには、その前にある種の総括が必要であると判断したからである。その成果の詳細は「現在までの進捗状況」で記したとおりであるし、当初予定していた書籍公刊用の原稿もおおむね執筆を終えている。 この進捗状況と成果を踏まえて、本研究最終年度である2024年度での研究計画は、当初予定から変更なく、引き続きアメリカ合衆国でのリサーチとともに、研究成果の発表に向けての原稿執筆に従事することとする。
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