別荘地からリゾートへ:冷涼地の観光開発とイメージ形成に関する社会学的研究
Project/Area Number |
21K12449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80020:Tourism studies-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
多田 治 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80318740)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 観光 / 開発 / 鉄道 / コンテンツ / 冷涼地 / イメージ / 歴史 / 移動 / 文化 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、北海道・東北・北陸など日本の冷涼地域において観光・スポーツ・イベント・テーマパーク・映画ロケ等の文化コンテンツがいかに導入され、地域開発やイメージに影響を与えてきたかを明らかにする。観光開発の歴史を戦前と戦後に分け、両時代の連続性や影響を見てゆく。バブル崩壊以降の挫折や衰退、その後の展開や対応も明らかにする。開発主体では、旧国鉄や電鉄会社が不動産・交通・レジャー・まちづくりで果たした役割に重点を置く。研究代表者が沖縄を中心に見てきた「南・温暖・海」と、「北・冷涼・山」を相関させ、観光リゾートの研究を深めることをねらいとする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の「冷涼地」として新潟、草津~富岡製糸場、北海道の稚内~小樽~ニセコ、京都北部の天橋立~舞鶴、下呂~白川郷~高山、山形~秋田角館~村上~新津、青森を訪問し、視察調査を行った。主に各地の鉄道を使って移動し、博物館や資料館、歴史施設を見学し、関係者に話を聞くなどして、歴史・産業・メディアコンテンツ・地形・温泉・食・鉄道などと結びついた観光の歴史と現状について資料を収集し、認識を深めた。毎回、実施後すぐに報告書を作成し、関連づけや比較が可能な知識のストックを蓄積した。具体的には、稚内・小樽・舞鶴では鉄道と海運(駅と港)の接続が、山形・村上では近世城下町が、新津では鉄道のまちが、草津・下呂では温泉が、新潟・白川郷・高山・角館では伝統的な町並みが、地域のまちづくりや観光を方向づけてきた歴史を把握できた。これら冷涼地に加え、京都・福岡・奈良・韓国釜山・嬉野・長崎・愛知・静岡・新宿・枚方・埼玉・千葉・長浜~彦根~関ケ原・南九州・茨城といった非冷涼地についても、同様の視察を行った。そこから冷涼地の観光開発やイメージ形成の特徴も、比較や重なりの観点からより明確になった。 他方で8~9月、これまでの観光や知識社会、歴史、理論など一連の研究を単著にまとめる作業に集中し、10月末に『旅と理論の社会学講義』を刊行した。本研究課題の成果も盛り込み、長期の仕事の集大成の中に適切に位置づけた。刊行後も繰り返し発表や議論の場を持ち、多くの読者からフィードバックを得て、さらに研究に生かしている。 また9月下旬には韓国釜山の釜慶大学人文韓国プラス事業団から研究発表の依頼・招聘を受け、国際シンポジウムにて本研究課題の研究成果発表を行った。国際比較の見地から活発な議論と有益な知見が得られ、収穫大であった。その後、シンポジウムの成果は単行本にまとめられ、研究代表者の論文も収録され、2024年3月に公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
冷涼地の観光開発とイメージ形成に関し、対象地を絞りすぎず広く関係づけていくため、幅広いエリアを訪問視察して各地の実態を把握し、基礎資料を収集・蓄積できており、研究の順調な進展を実感している。北海道・東北・甲信越・北陸・山陰といった冷涼地を視察し、エリア横断的につながる多くの知見を積み重ねた。特に、鉄道を切り口にして地域・観光開発の知見を集積している点は意義深い。 2024年1月からは埼玉の鉄道と観光を掘り下げて調べるなかで、近代以降の埼玉では鉄道が産業の基盤となり、かつ地域の基盤産業として役割を果たしてきた側面を明らかにしている。東京と北関東・東北・信越地方をつなぐ埼玉のタテのライン、国鉄~JR東北線や東武線は、近世までの街道や舟運を継承しながら発展し、沿線には住宅地や商業施設の開発が進んできた。また1980年代以降は大宮をハブ的な拠点としながら、東北・上越・北陸新幹線が開業・延伸するとともに、埼玉県内も新幹線を活用した埼京線や大宮駅内外など、並行した発展をとげてきた。鉄道・新幹線を切り口に使うことで、遠隔の冷涼地と近隣の東京郊外を同時に見ることができた。また鉄道・新幹線への視座は、『旅と理論の社会学講義』に収録した、人間と非人間の関係に着目するラトゥールらのアクター・ネットワーク理論や、アーリのモビリティーズ研究の潮流とも符合する。この本にまとめた観光・知識・歴史の諸研究を、今後一層生かし発展させることが見込める。 大宮・青森・新津・長浜・門司など、鉄道にゆかりの深い地の博物館・資料館を訪ねる経験を積む中で、鉄道から地域・歴史・技術・開発・文化などを見る視座やスキルを高めてきた。鉄道は単なる客観的な移動の手段にとどまらず、今や主観的に見せる展示対象でもあり、歴史遺産と同時に多様なコンテンツと結びつき、それらを運ぶ媒体でもある。今後の本研究への実りある適用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はまず、本研究課題の知見を盛り込んだ埼玉の鉄道と観光に関する調査と原稿執筆の作業が中心となる。おおよその内容や方向性はすでに定まり出そろっているので、執筆に集中する時間を充分に確保して取り組む。6月には東北、夏には北海道への視察調査を実施し、各地の鉄道と観光の歴史と現況を把握して、関係づけや比較が可能な知識の蓄積を継続し、いっそう充実させる。東京での資料調査、研究成果の執筆・報告と、現地調査との時間配分や切りかえ、デスクワークとフィールドワークのバランスをうまくとっていく。また近年、地理情報システムGISの発展が目覚ましいので、GISによるマクロデータを活用した地理・空間分析も取り入れ、有効に活用していく。 2024年度も後半には、フィールド調査の比重・頻度を上げられるので、現地から得られる情報の密度を高めながら、エリア横断・時代横断的な認識・検討をいっそう充実させていく。フィールド調査は北海道・東北など遠方の地域に目が向き偏りがちになるが、北関東や首都圏、東海などの近隣地域も重要な面を多くもつので、意識的に足を運んでいく。 また、近年は『多田ゼミ同人誌・研究紀要』を刊行し、自前の媒体として位置づけ、数か月ごとに研究成果を文章化して、豊富な写真とともに寄稿し共有する生産態勢をととのえている。発表した文章は、ゼミ生や同人誌参加者に読んでもらい、感想・フィードバックを受けとって参考にしてゆく仕組みを作り上げている。書きためた原稿を加筆修正のうえ、最終的には単行本に仕上げていく方向で作業を進めている。単行本の刊行後には、授業やゼミなどでまた使用し、そのフィードバックを受けるなどして、有効に活用する態勢をととのえていく。必要に応じて、学会やシンポジウム等で成果発表を行うことも検討する。
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Report
(3 results)
Research Products
(64 results)