Project/Area Number |
21K12604
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90030:Cognitive science-related
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
熊野 弘紀 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (40568325)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 意思決定 |
Outline of Research at the Start |
環境の変化に応じて柔軟に判断を切り替え適応的に行動するには、その時々で不要な情報を廃棄し、有用な情報を収集して判断に用いる必要がある。不要な情報を廃棄するメカニズムとしては、その入力を遮断するゲート機構がこれまで提唱されてきた。一方、研究代表者の先行研究から、不要な情報を一旦収集したのち時間をかけて廃棄するリーク機構仮説を示唆する知見を得た。本研究では、このリーク仮説を実証し、リーク機構を制御する神経ネットワークを明らかにすることで柔軟な判断の神経機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
絶え間なく変化する環境の中で、現在の状況を素早く知り、適切に判断を切り替え適応的に行動する能力は、ヒトを含む霊長類で特に発達した認知機能である。本研究では、脳は環境の変化によって不要になった情報もいったん取り込んだ後、徐々に廃棄することで柔軟に判断を切り替えるというリーク仮説を検証することを目的とする。 そのために、ルール(環境に相当する)に応じて2つの判断を切り替えなければならないタスクスイッチ課題をサルに行わせる。このタスクスイッチ課題では、注視点の色によって視覚刺激の運動方向か奥行きのどちらについて判断しなければならないかを教示する。注視点の色は試行ごとにランダムに変化するので、サルは試行ごとにどちらを判断するかを柔軟に切り替える必要がある。リーク仮説を検証するために、課題の視覚刺激に短時間の外乱(パルス)を導入し、どのタイミングで与えたパルスがサルの行動に影響を与えたかを検討した。リーク仮説では、視覚刺激呈示初期に与えられた不要情報は廃棄されるので、行動への影響が小さくなると予測される。 2023年度では、2頭分のデータを取りまとめ解析を行った。その結果、リーク機構が柔軟な意思決定に関与しているという結果を得た。この結果を論文に発表した。 さらに、化学遺伝学的手法(DREADD法)を適用するための予備実験を大脳皮質視覚野MT野において行った。抑制性の人工受容体であるhM4Diを1頭のサルのMT野の神経細胞に発現させた。hM4DiのリガンドであるDCZをサルに全身投与し、神経活動および単純な意思決定課題(運動方向弁別課題)の成績への影響を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、サルにタスクスイッチ課題をおこなわせ、視覚刺激に短時間の外乱を与えてその効果を測定し、柔軟な意思決定にリーク機構が関わっているかを検証する予定であった。2頭分の行動データを解析したところ、リーク説が関与しているという結果を得ることができ、その成果を論文にまとめることができた。 また、化学遺伝学的手法(DREADD法)をこの実験系に適用するための予備実験を大脳皮質MT野においておこなった。MT野を抑制すると運動方向弁別ができなくなることが知られているので、DREADD法を用いたMT野の抑制によって同様な効果が得られるかを調べた。しかし、DCZの投与によって、MT野の神経活動の減弱やサルの運動方向弁別の成績低下は顕著には見られなかった。 予備実験で、予測通りの結果が現時点で出ていないことは、その条件は不適切であるということであり、実験条件の最適化に向けての知見が得られたと考えている。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた2頭のサルの行動データを説明できるような理論モデルの構築を行う予定である。本研究のような意思決定課題においては、課題遂行に必要な情報を蓄積していき、それがある閾値に達すると判断が決まるという理論モデルが提唱され、多くの研究により支持されている。この情報蓄積過程において、リーク機構やゲート機構(不要な情報を最初から遮断する)という機構を組み込むことで、サルの行動データを説明できるような、柔軟な判断の神経機構の理論モデルを構築する。 また、DREADDの予備実験で、想定されるようなデータが得られていないので、DCZの投与量や濃度など、条件の最適化を試みる予定である。
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