Project/Area Number |
21K12871
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Tokushima Bunri University Junior College (2023) Nagoya University (2021-2022) |
Principal Investigator |
釘宮 貴子 徳島文理大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00896409)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | ドイツ・オーストリア音楽におけるジャポニスム / ジャポニスムのオペラ / ドイツ・オーストリア音楽 / ジャポニスムの歌曲 / ジャポニスムのオペラ・オペレッタ / ジャポニスム |
Outline of Research at the Start |
本研究では、これまでほとんど研究されてこなかった1890年代から1930年代のドイツ・オーストリア音楽における日本文化受容の全貌を明らかにし、ドイツ・オーストリア音楽史に「音楽のジャポニスム」を位置付ける。この時期の日本側のドイツ・オーストリア音楽受容については多く研究されているが、逆方向の受容についてはまだ全容が解明されていない。本研究では、F・ワインガルトナーの音楽活動を中心に取り上げ、第二次世界大戦勃発までのドイツ・オーストリア音楽において日本文化は新しい音楽発想と音楽素材を提供する存在であったことを証明し、「音楽のジャポニスム」概念の発展を段階的に整理する。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ドレスデン国立歌劇場、ドイツ国立図書館、ウィーン劇場博物館、オーストリア国立図書館へ赴き、研究資料を入手した。また、ジャポニスム学会国際シンポジウム2023のテーマ提案者としてシンポジウムの組織運営に携わり、黄禍論を盛り込んだジャポニスムのオペラについて研究成果を発表した。和歌や日本の物語の翻訳が西洋音楽に与えた影響に着目し、研究成果を国内学会、国内研究会で発表した。研究成果の一部を論文にまとめた。 (1)ドレスデン国立歌劇場資料室でオペラ《リリ・ツェー》について初演時の資料を入手。ドイツ国立図書館でオペラ《犠牲》の楽譜資料とAV資料を閲覧し、オペラ《タイフーン》の新聞批評記事を入手。ウィーン劇場博物館でキュレーターのフランケ氏からジャポニスムのオペラに関する資料を入手。オーストリア国立図書館で音楽劇《日本の王女》の台本を入手。これらの資料は今後新たな研究を展開するための重要な文献である。(2)ジャポニスム学会国際シンポジウムで黄禍論に基づくオペラ《タイフーン》について発表し、このオペラの本質が日本への警戒心ではなく日本と西洋の精神的支柱の相違にあることを解明した。(3)カール・フローレンツの和歌の翻訳『東の国からの詩の挨拶』に創造力を得て作曲された2つのドイツ歌曲集について、元の和歌の世界観は失われてはいないものの、音楽的には日本の影響は見られないことを研究発表とデモンストレーション演奏により立証した。(4)平家物語を土台にしたオペラ《聖女》について成立の経緯と内容について発表し、オペラの主軸が栄枯盛衰の精神に据えられていることを解明した。(5)カール・フローレンツの和歌の翻訳『東の国からの詩の挨拶』に創造力を得て作曲された5人の作曲家の歌曲について詩と音楽の関係性を論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では「ドイツ・オーストリア音楽のジャポニスムの概念を段階的に整理することはできるのか?」という問いを立て、(1)「音楽のジャポニスム」を位置付けるに十分な音楽作品を見出すこと、(2)フェリックス・ワインガルトナーの作品を中心に楽曲構成や音楽手法を考察すること、(3)それらの楽曲から読み取ったジャポニスムの概念を簡潔な言葉で示し、「音楽のジャポニスム」の指標を構築すること、この3つを研究目的としていた。 研究目的(1)についてはすでに75作品を見出し楽譜を入手済であるが、その他にも新たな作品を発見し楽譜資料を入手した。現在G.v.ツィーリッツの歌曲集《日本の歌》(1919)について研究を進めている。 研究目的(2)については、F.ワインガルトナーのジャポニスムの音楽作品のうちオペラ《村の学校》(1919)と、歌曲集《日本の歌》(1908)は研究の成果を国内学会で発表した。さらに歌曲集《日本の細密画》(1929)について研究成果を学会で発表し、これらの3つの作品の研究成果を論文にまとめる予定であったが、当初の計画より研究が遅れている。現在、歌曲集《日本の細密画》について研究を進めている。研究目的(3)については、すでに分析を終えた①R.ディットリヒ、G.カペレンの日本旋律の編曲版5作品、②W.キーンツル、G.グルーベ、H.モルベ、E.ヴェレス、F.ワインガルトナーの日本詩歌の翻訳を歌詞とした歌曲集6作品、③F.ワインガルトナー、B.ラズキー、R.ベナッキー、F.クルティ、T.サーントーの日本を題材としたオペラ・オペレッタ5作品、についてジャポニスム概念を簡潔な言葉で示し 「音楽のジャポニスム」の指標を構築している。さらに新たに見出したジャポニスムの歌曲集、ジャポニスムのオペラについて研究成果をまとめ、「音楽のジャポニスム」の指標を明確にしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については以下の5つを進める予定である。 ①令和3~5年度に学会,シンポジウムで発表した内容を論文にまとめ学会誌に投稿する。②新たに発見した和歌の翻訳を歌詞としたドイツ歌曲の分析考察を行う。③これまでに行ったドイツ・オーストリアのジャポニスム音楽の研究成果をレクチャーコンサート形式で発表する。④3年間の研究の総まとめとしてドイツ・オーストリアにおける音楽のジャポニスムの概念を簡潔な言葉で示し、「音楽のジャポニスム」の指標を構築する。⑤研究成果を元に解説付きの楽譜を出版する。 ①令和4年度に国内学会で発表したウィーンで上演されたジャポニスムのオペラ・オペレッタについて論文にまとめ学会誌『音楽学』に投稿する。令和5年度にジャポニスム学会国際シンポジウム2023で発表した黄禍論に基づくオペラ《タイフーン》について論文にまとめ学会誌『ジャポニスム研究』に投稿する。②については,新たに発見したグレーテ・フォン・ツィーリッツの歌曲集《日本の歌》(1919)について、当時の社会的状況ふまえながら分析考察を行い、国内学会で発表する。③ については,これまでに2回開催したレクチャーコンサートを継続して行う。和歌を土台にドイツ歌曲が生まれていたことはまだほとんど知られていない。一般に広く研究成果を公表し、日本文化が西洋音楽に影響を及ぼしていたことを明示する。④については3年間の研究の総まとめとして、これまで研究が進んでいなかったドイツ・オーストリアにおける音楽のジャポニスムの概念を簡潔な言葉で示し、指標を構築する。⑤については、W.キーンツルの《4つの日本の歌》(1895)、F.ワインガルトナーの《日本の歌》(1908)、E.ヴェレスの《桜の花の歌》(1912)の楽譜を解説付きで出版する。
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