明治後期から大正初期の少女雑誌におけるフランス文学・フランス文化の受容
Project/Area Number |
21K12971
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 貴規子 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (50829075)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 少女小説 / 少女雑誌 / フランス文学 / フランス文化 / 児童文学 / 翻訳 / 伝記 / ジャンヌ・ダルク / エクトール・マロ |
Outline of Research at the Start |
「少女」という概念が生まれた明治後期から大正初期の、少女雑誌におけるフランス文学・フランス文化の受容の様相を、次の二点に留意しつつ明らかにする。第一に、少年雑誌におけるフランス文学・フランス文化の受容との比較の視点を持つ。第二に、「少女」に関する規範や教育的配慮と、フランス文学・フランス文化の翻訳・表象との関係に着目する。具体的には『少女界』(1902年創刊)をはじめとする八誌の少女雑誌に1902年から1918年に掲載されたフランス関係の記事の調査、フランス文学作品を原典とする大正初期の二つの少女小説「シベリアの少女」(1916年)、「雛燕」(1917年)の翻訳分析を柱とし研究を遂行する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、『少女世界』、『新少女』、『少女の友』等の少女雑誌に掲載されたフランス関係の記事について、大正初期のものを中心に調査・収集・分析を進めた。その中で、1915年4月に婦人之友社から創刊された『新少女』において、他誌と比較して積極的に西洋文化が受容・紹介されたことが判明し、中心的に研究を進めた。同時にこれまでの研究成果を積極的に公表した。まずジャンヌ・ダルクの少女向け伝記研究に関し、少年雑誌での伝記の様相とも比較しつつ1本のポスター発表を行った。次に大正期の二つの翻訳少女小説『雛燕』(1917年)、『シベリアの少女』(1916年)について論文を2本公表した。最後に少女雑誌『新少女』におけるフランス文化および西洋文化の受容に関し、国内で1本の研究発表を行い、1本の論文の作成を準備した。 『新少女』は1919年終刊と推定される短命の雑誌であるが、少女読者の主体的な判断・行動を促す点、西洋文化を積極的に紹介した点において、同時代の少女雑誌に対する先進的な性格が指摘できる。従来の少女雑誌を「不健全」かつ「不注意な読物に満たされている」と非難したこの雑誌が、西洋各国の小説や文化を積極的に紹介した背景について、三点が指摘できる。まず『新少女』の積極的な西洋文化受容は、『赤い鳥』(1918年創刊)に代表される芸術的児童文学運動、そしてそこでの翻訳児童文学の隆盛へと続く過渡期の現象として位置づけられる可能性がある。次に、婦人之友社にプロテスタント信仰者の社員が多数在籍し、明治期から続くキリスト教文学受容の影響があったと考えられる点である。最後に、記事の多くが女性の自立的な生き方を促す内容であり、少女読者たちの可能性を広くとらえ、自立的な女性の育成を視野に入れた、創刊者羽仁もと子の教育観が反映されたと考えられる点である。以上について日本児童文学学会第62回研究大会で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は、昨年度の報告書で目標に掲げた四点の内、「『雛燕』(1917年)の翻訳の様相について論文を公表する」、「『シベリアの少女』(1916年)の翻訳の様相について、研究成果を取りまとめ論文を作成する」、という二点については十分に達成することができた。そして、明治期・大正期の少女雑誌におけるフランス関係の記事の調査・収集・分析についても、『少女世界』、『新少女』、『少女の友』等、複数の少女雑誌を比較検討のうえで、1915年4月に婦人之友社から創刊された『新少女』に焦点を定め、研究を進めることができた。そしてその研究成果についても、年度内に国内学会での研究発表も行い、令和6年度公表予定の論文も準備できた。 しかしながら、令和5年度の研究では『新少女』以外の雑誌、具体的には『少女の友』、『少女』、『少女画報』などの少女雑誌については、大正初期の一部の巻号に関し、フランス関係の記事の調査・収集・分析をまだ遂行することができていない。また、ジャンヌ・ダルク以外のフランスの女性の伝記の様相に関しても、『新少女』への掲載記事を中心に、その一端を明らかにすることはできたものの、その他の研究対象とする少女雑誌については充分に調査が進められたとは言い難い。以上のような令和5年度に達成しえなかった点について、令和6年度に取り組み、これまでの研究を補完していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は次の三点を具体的な課題・目標とする。 第一に、令和5年度までの少女雑誌に関する調査を補完していく。具体的には、『少女の友』、『少女』、『少女画報』の1918年までに出版された巻号の中で、まだ調査できていないものを中心に、大正初期の少女雑誌におけるフランス関係の記事の調査・収集・分析を行う。第二に、少女雑誌『新少女』におけるフランス文化および西洋文化受容に関し、論文を作成し、公表する。第三に、ジャンヌ・ダルク以外のフランスの女性の伝記について、少女雑誌に掲載された記事の収集と読解を進め、女性被伝者の表象の特徴、変容について考察する。第一または第三の課題の研究成果について、2024年秋に開催予定の日本児童文学学会第63回研究大会において研究発表を行うことを目標とする。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)