思想集団としての東亜同文会とその社会的支持基盤に関する地域史的・メディア史的研究
Project/Area Number |
21K13098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中川 未来 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60757631)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 東亜同文会 / 東亜同文書院 / ナショナリズム / アジア主義 / 国粋主義 / 対外硬 / 中国認識 / 田舎青年 / 野﨑武吉郎 / 近衛篤麿 / 白岩龍平 |
Outline of Research at the Start |
近代日本で「アジア主義」と呼ばれる思想は、政治家や思想家、ジャーナリストのみならず、地域社会に活動基盤を置く実業家・生産者層や青年層の支持を受けることで再生産されてきた。本研究は「アジア主義」の思想集団として著名な東亜同文会の社会的支持基盤を新出史料を含む一次史料に即して解明すべく、以下の具体的課題のもと実施する。 (1)東亜同文会の始祖たる荒尾精の経済構想における「地方実業家」の位置づけを解明する。 (2)東亜同文会の言論機関である『東亜時論』『東亜同文会報告』の読者層や読者組織を分析する。 (3)東亜同文会地方支部(国内)を網羅的に調査し、その成立事情と活動実態を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の3点である。①荒尾精の経済構想における「地方実業家」の位置づけを分析することで「アジア主義」における「地方」の役割を理論的に解明すること、②東亜同文会の言論機関『東亜時論』『東亜同文会報告』の紙面を分析し両紙の読者層や読者組織を明らかにすることで「アジア主義」の受容者・需要者を特定すること、③東亜同文会の地方支部(国内)を網羅的に調査し、特定の支部についてその成立の政治経済的背景を検討することで、「アジア主義」の支持基盤を明らかにすること。 今年度における実績の概要は次の通りである。
【1880年代から90年代における対外硬言説の流通に関する理論的研究】 東亜同文会が展開した諸活動を地域社会が受容する際の基盤を検討した。具体的には、1880年から1900代において対外硬言説の流通を促した社会経済的諸構造について、「ナショナリズム」「国粋主義」という思想課題が地域の実業家・生産者層、また青年層に捉え返されていく諸相を、分担執筆に加わった研究書において通史的に記述し、また下記論文においても言及した。その際には、近衛篤麿の機関雑誌の全国的な流通網の解明など、メディア史的視点に特に留意した。
【東亜同文会の青年会員の意識をめぐる研究】 昨年度に引きつづき、荒尾精の影響を受け、東亜同文会の運動主体となった青年層=「田舎青年」の意識形態を検討すべく、野﨑武吉郎ら「地方実業家」 の経済的支援を受け東亜同文書院(南京同文書院)に入学した神津助太郎、大原信、稲葉岩吉の中国認識形成過程を史料具体的に解明し、論文として公刊した。今年度の研究により、本研究課題の達成には、1900年代前後における「田舎青年」の対外認識形成過程の検討が不可欠であることが判明したため、次年度はこの点の解明に注力したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引きつづき新型コロナウイルス感染症の流行を受け、所属機関では県外出張が強く規制され、当初予定していた史料調査の実施が不可能となった。その代替措置として、本基金を活用し本研究の遂行において基本史料の一つとなる新聞『日本』のデジタル化を行った。 マイクロフィルムで販売されている同紙を版元の協力によりデジタル化することで、史料アクセスを飛躍的に向上させることができた。 その結果、史料調査の実施と同等の効果を上げることができ、当初の計画を順調に進展させることができた。 一方で、今後の研究計画では各地での史料調査が不可欠となるため、感染症の流行状況を見極めつつ、機動的に調査を実施することが必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる次年度は、以下の方針のもとに研究を実施する。 1)研究の進展に伴い新たな論点として浮上した、東亜同文会の活動を担い1900年代以降の中国進出の主体となった「地方青年」の中国認識形成過程を重点的に検証する。 2)そのため、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めつつ、各地での史料調査を機動的に実施する。少なくとも東亜同文書院関連史料を収蔵する愛知大学東亜同文書院記念センターでの史料調査、また近衛篤麿が関与した雑誌を所蔵する同志社大学図書館での史料調査を実施する。 3)本研究課題による研究成果を学界と社会に還元すべく、今年度に引きつづき論文の公刊と学会等における成果報告に努める。
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Report
(2 results)
Research Products
(13 results)