Project/Area Number |
21K13118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Toyo University (2022) Kyoto University (2021) |
Principal Investigator |
北澤 直宏 東洋大学, 国際観光学部, 助教 (00844630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ベトナム / 伝統文化 / 文化政策 / 演劇 / 近現代史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ベトナムの伝統劇に着目し、その伝播と受容の歴史を明らかにするものである。分析対象とするのは、20世紀初頭に同国南部で誕生した、カイルオンと呼ばれる歌舞劇である。これは「改良」を意味する漢語由来の言葉であり、ベトナムと歴史的関係が深い中国の戯曲に、宗主国であるフランスの話劇を取り入れた、当時最先端の娯楽であった。今日、伝統文化の1つに数えられるカイルオンは、いかに形作られ、どのような変化を余儀なくされて来たのか。カイルオンの実態と、それを取り巻く政策の変遷を明らかにすることで、文化面からベトナム近現代史を捉え直す。
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Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア大陸部に位置するベトナムは、20世紀、植民地・戦争・社会主義と、社会変動が続いた国である。それ故に20世紀のベトナム史は、1930年に結成されたベトナム共産党の歴史として描かれて来た。しかし、多宗教・多民族国家である同国の歴史を、党史と同一視することには疑念も残る。本研究は、同国の伝統劇カイルオンの変容を通し、公定史観とは異なる立場から同国史を捉え直すものである。 研究初年度である2021年度は、新型コロナウイルスの影響により海外渡航が叶わなかったため、日本国内で研究活動を行った。劇団・作曲家・俳優など基礎情報の整理を行うことで基本的理解を深めつつ、複数の演目を翻訳・分析することで、その歴史観や宗教観の把握に努めた。 研究2年目である2022年度に取り組んだのは、初年度の成果を基にした現状分析である。具体的には、社会主義体制下(1975年~)における文化政策の実態解明に取り組んだ。本研究課題が扱う伝統劇カイルオンは、その娯楽性の高さから半世紀近く人々に親しまれて来たが、ベトナム全土が社会主義化したことで伝統文化であろうとも大幅な改革を余儀なくされ、多くの劇が上演される一方で、間もなく娯楽性が失われていった様子が浮かび上がってきた。 計画では、20世紀前半の文化政策に関しても考察する予定であったが、まだ十分な資料を入手できておらず、取り掛かれていない。当初の計画とは異なるが、次年度に現地調査を行うことで、この遅れを取り戻すことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年夏季には、これまで叶わなかったベトナムへの渡航が実現し、公立図書館において社会主義期(1975~)に発行された専門誌を閲覧、複写することが出来た。これらは、文化政策ならびにカイルオンを含む舞台・芸能事情を伝える同時代資料であり、政府による検閲と改革が、伝統劇から娯楽性を奪っていく様子を示していた。調査時期が遅くなったことから、当初予定していた年度内の学会発表こそ実現しなかったが、収集資料の読解作業は既に終え研究論文執筆に取り掛かっていることから、これの早期完成を目指すこととしたい。 上記の夏季調査後半には、現地研究者や舞台関係者との接触を予定していたが、依然として残る新型コロナウイルスの影響から実現せず、次回以降の渡航を期すこととなった。SNSでの連絡こそ可能ではあるものの、研究深化のためにも早期の接触を図る必要がある。 また、研究初年度に日本国内で行った調査を基に、紀要論文を執筆した。これはカイルオンを対象としたものではないが、2010年以降のベトナムが推進している文化外交を分析したものであり、文化政策の新たな展開を捉える上で有益な成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず優先させるのは、2022年度に入手した資料を活用した研究論文の執筆である。加えて、資料の中には政治劇に関する情報も含まれているため、これの分析も別途行い、学会や紀要論文等の形で発表する。 しかしながら、初年度である2021年度に海外調査が実現しなかったことから、旧宗主国であるフランスでの資料調査が実現できていない。20世紀前半の文化状況を把握するためには、同時期の文献を多数所有・公開している同国での調査は必須であるため、夏季にはこれを行うことにしたい。また、同様の理由によりベトナムでの現地調査にも遅れが生じているため、補足調査を行うことも考えている。 このように、一部の収集資料に偏りは生じているものの、社会主義期に関しては十分な資料を入手しているため、こちらの分析に注力することで成果を出すことにしたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)